怒りの葡萄

<The Grapesof Wrath>   (40年)

<スタッフ>
製作
監督
原作
製作補・脚色
撮影
美術

音楽

<キャスト>
トム・ジョード
母ジェーン・ダーウエル
ケーシイジョン・キャラダイン
祖父チャーリイ・グレープウイン
警官

グリル・F・ザナック
ジョン・フォード
ジョン・スタインベック
ナナリイ・ジョンソン
グレツグ・トーランド
リチャード・デュイ
マークリイ・カーク
アルフレッド・ニュウマン


ヘンリイ・フォンダ
ジェーン・ダーウエル
ジョン・キャラダイン
チャーリイ・グレープウイン
ワード・ポンド
 ジョン・フォードがこの作品を映画化した時期は彼のもっとも製作意欲の旺んなときで 「わが谷は緑なりき」「果てなき航路」「タバコロード」(未輸入)を発表している頃で、 この「怒りの葡萄」はこれらの作品の中でもきわだった名作といわれている。海外の批評のなかに 「どのカットもすぐれている」とさえ最高の評を加えている。
 ジョン・フォードの作品のなかで日本での公開を切に待たれた映画であり、アメリカ映画の未輸入作品のなかで 一番待だれたのはこの作品であろう。終戦後の米軍の占領下にあった日本にこの映画の上映は何故か禁止されていた。 アメリカ農民の暗い面が捕えられていたからか、それがフォードという作家の描写力による 日本へのある影響を考えてのことか、その点はいまだに明らかにされていない。
 だがこの映画の登場する人物の背景と置かれた生活環境は暗いものではあるが、最悪の事態にあるアメリカ人の 不屈の生活力と、それをはねのけて行く天性の明るさはこの映画を通してあきらかである。 このスタインベックの原作に肉付けしたフォードの演出力はたくましくヒューマンな態度に一貫されたものである。 政治の貧困、農民政策の不備に当然メスを当てた結果にはなっているが、彼のアメリカ人に対する信頼は深くあたゝかい、 ユーモアをさえたゝえたフォードの人間性がこの映画から、たゞちにくみとることがでる。
 尚、この映画でフォードはアカデミー監督賞(40年)を得ている。
 スタインベックの原作からナナリイ・ジョンソンが脚色(脚本家の後、プロデューサー、 監督となるこの映画ではアソシエート・プロデューサーも兼ねている)、撮影は「嵐ケ丘」他、 ウイリアム・ワイラー作品などでわが国でもなじみ深いアメリカ第一のキャメラマン、グレッグ・トーランドが担当。
 キャストは「十二人の怒れる男」「女優志願」「荒野の
決闘」「ミスター・ロバーツ」のヘンリイ・フォンダがフォー ドの信頼どおり、すばらしいトム・ジョードを創造する。他にアカデミー女優助演賞(1940年)を得た ジェーン・ダーウエル 「駅馬車」のジョン・キャラダイン、チャーリイ・グレープウイン他、 ジョン・フォードの映画に出てくる面々が活躍、これもたのしみの一つである。製作はグリル・F・ザナック。

 <梗概>  オクラホマ国道を、一見直ぐ刑務所帰りと判る、身なりの男が歩いてくる。 暑い日射しにも無関心なのか、その顔は堅く無表情だ。男はトム・ジョードである。 彼は道路の食堂から出てきた運転手に頼んで大型トラックに便乗させてもらう。 運転手は遠回しにトムの素性にさぐりを入れる。
 「俺は4年間刑務所にいたんだ。俺は人殺しだ」トムは捨てぜりふを残してトラックを込降りた。
 トムは女のことでダンスホールで喧嘩をし、7年の刑を受け、4年目で仮出所したのである。
 家の近くで先輩であり尊敬しているケーシーに逢った。トムに洗礼をさずけたのも彼である。 教会の説教師であったケーシーは彼の説教に夢中になる娘に手を出して教会を追われた。
 2人はすさまじい砂塵に追われジョードの家についた。誰もいない空家になっていた。
 奥をのぞくと隣の家のミューリーがうずくまっていた。トムはジョード一家が2週間前に ジョン伯父の家に移ったことを知る。ミューリーの家族も他の土地に移った。 ミューリーは生れた土地に愛着をもっていてこゝで死ぬ覚悟だ。
 ここ数年続いた猛烈な砂嵐のため小作人たちは畑の収穫がなく、土地は「土地家畜会社」の所有となった。
 ジョード一家は70年間、祖父から3代も小作をつづけたが会社から立ち退きを迫られていた。・・・  (128分)

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