廿日鼠と人間

<Of Mice and Men> (39年)

<スタッフ>
製作
監督
原作
脚色
撮影
音楽

<キャスト>
ジョージ・ミルトン
メイ(カーリーの妻)
レニー・スモール
スリム

ルイス・マイルストン
ルイス・マイルストン
ジョン・スタインベック
ユージン・ソウロー
ノバート・ブローディン
アーロン・コープランド


バージェス・メレディス
ベティ・フィールド
ロン・チャーニイ・ジュニア
チャールズ・ビックフォード
 「廿日鼠と人間」と「怒りの葡萄」は共にジョン・スタインベックのベスト・セラーとなった小説で、前者は中篇小説であるが、 カリフォルニアの農場から農場へと流れ歩く2人の農場労働者を主人公にしたものである。 この2人のなかの1人は、純真そのもののような人間でありながら、そのあまりの無智と野性のために、 殺意などないのに1人の女を殺してしまう男で、いま1人は、その男の幼友達で、一緒に暮しているうちに、 相手の無智無能が哀れまれて離れられなくなり、遂に彼が我人を犯すと、彼が補えられてひどい目に 逢わぬ先にこれを射ち殺してしまってやるのである。
 原作は、出版されるど同時に異常な反響を呼び、多くの国の人々に読まれた。 (邦訳もある。)そして、これが戯曲に書き直されて紐育の舞台で上演されると、更にまた好評をもって 迎えられ、紐育劇評家サークル賞を受与されたのであった。
 映画は、劇作家として、叉舞台演出家として知られたジョォジ・S・カウフマンが原作から 舞台劇に書き直したものから、シナリオ・ライターのユウジン・ソウロウが映画台本に書き直したものである。 カウフマンは、「晩餐八時」「ステージ・ドア」「我が家の楽園」などの評判をとった舞台劇を映画化するに当って そのシナリオを書いているし、ソウロウはその昔「男性の王者」「雷雨の殺人」「快速突破隊」なとの脚色をしている。
 この映画の製作者であり、監督であるルイス・マイルストウンは、既に無声映画時代に、 アカデミイ賞受賞作品の「美人国二人行脚」があり、トオキイになってからは、「西部戦線異状なし」 (1930年度アカデミイ賞受賞)「犯罪都市」「雨」「風来坊」「海を嫌う船長」「将軍暁に死す」などの 数々の名作、佳作を発表して、アメリカ映画の巨匠陣の一人である。
 「廿日鼠と人間たち」は、マイルストウンとしても油ののりきった1939年度の作品で、 常に異色のある題材をとりあげて、独特の雰囲気の描写に優れたものを見せてきた同監督が、 この作品の主人公たちの特異な人間性を見事に描きつくしているところが見どころである。
 出演する人々は、戦前では名作「目撃者」に、戦後で
は「アメリカの恋人」に出演したバァジェス・メレディス。 無声映画時代の性格俳優として知られたロン・チャニイの息子・ロン・チャニイ・ジュニア。 「肉体と幻想」「嵐の青春」「南部の人」で堅実な芸風を示したベテイ・フィールト。 「ミネソタの娘」の好助演者チャルス・ビックフォードなどである。

 <物語>  カリフォルニアの南部サリナス河に近い街道を2人の男が歩いていた。 小柄の男をジョオジといい、連れの大男はレニーといった。2人はウィ−ドの農場を出て、 新しい就職先の農場に向かう途中であった。街道を走るバスに乗ってきたのだが、 運転手にだまされて目的の農場へはまだ10マイルもある道端で降ろされてしまったので、 仕方なく歩いていたのだった。
 レニーは、ふと河の流れをみつけると、走って行って河の水を飲んだ。ジョオジは、むやみに 河の水なとを飲むものじゃないとレニーをたしなめながら、自分も渇きをいやした。そして河岸に寝ころぴながら、 今晩のうちにあわて農場へ行くのはめようといい出した。今夜一晩だけは賃金で縛られる雇傭人でない 自由を味おうというのである。
 幸い、煮豆の鑵詰を持っている。枯枝を集めて火をおこし、鑵をあたためて夕食をすましたジョオジと レニイは寝ころんで夜の空を見上げた。農場から農場へと渡り歩く日傭い農夫。
 しかしこの2人にも 夢がないわけではなかった。小さな小屋と僅かな自分の土地とを持つ夢。その夢もジョオジ1人であったら、 案外早くに実現するかも知れない。
 しかし荷厄介なレニイというものがいては、いつ実現されることやら。 レニイは体躯は人並みはずれて大きい。そして非常な力を盛っているが、頭は空っぽなのである。 子供のとき馬に蹴られてから、そのまま頭脳の働きがとまってしまったのか、まるで幼い子供のような頭と心を その大きな体躯のなかにおさめている。
 しかし、ジョオジは幼友達のこのレイニイをどうしても見棄てることが出来なかった。 自分がいなかったら、レイニイはどうして生きて行くだろう。 ・・・  (111分)

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