深く静かに潜航せよ

<Run Silent, Run Deep>  (58年)

<スタッフ>
製作
 監督
原作
 脚本
音楽
撮影
編集

<キャスト>
リチャードソン艦長
ジム・ブレッドソー副長
ミューラー下士官
カートライト大尉
リチャードソンの妻


ハロルド・ヘクト
ロバート・ワイズ
エドワード・L・ビーチ
ジョン・ゲイ
フランツ・ワックスマン
ラッセル・ハーラン
ジョージ・ボームラー


クラーク・ゲーブル
バート・ランカスター
ジャック・ワーデン
ブラッド・デクスター
メリー・ラローシュ


 ハリウッドで最も人気が高く、最も男性的な2人の巨人スター、クラーク・ゲーブルとバート・ランカスターが、 ともに気性の強さで相譲らぬ潜水艦将校として顔を合わせた、文句のない娯楽巨編である。
 原作は、今次大戦が生んだ戦記小説の傑作といわれ、ハーシの「ヒロシマ」などとともに、 文学者以外の人間が、体験をもとゝしてに書いた作品として、欧米で大きな反響を巻き起こした 「RUN SILENT, RUN DEEP」で、さき頃、我が国でも翻訳発行されている。
 作者のエドワード・L・ビーチは海軍中佐。潜水艦長として太平洋作戦に参加、多くの犠牲を 伴うことによって、アメリカ海軍から魔の水域" 或いは還らざる海" と怖れられていた 第七海域(豊後水道を中心とした海域)に進出、日本艦隊と死斗の限りを尽くした経験に基いで、 筆を執ったものである。
 クラーク・ゲープルが、この映面の出演交渉をうけたときは、丁度1957年度の予定作品を2本撮り終え 休暇旅行に出発しようとしていたときだった。 しかし、台本を読むや否や、彼の頭から休暇のプランは、煙の如く消えさって行った。 映画歴40年になろうとするゲープルにとっで、気に人った台本の魅力は、何ものにも代え難かつたのである。
 映画俳優というより、むしろアメリカ人の典型――エネルギーと楕神力と 企業精神の塊りともいうべきバート・ランカスターは、プロデューサーとしても、数多くの非凡な実績をもっているが、 この映画でもその腕前は遺憾なく発揮された。
 キャストは、この2大俳優の他、TVやブロードウェイの人気者で、映画は「独身者のパーティ」 「十二人の怒った男」など、ほとんどユナイト映画のみに出演しで、ユニイクな持味をみせでいる ジャック・ワーデン。「アスファルト・ジャングル」「竹の家」「オラホマ」のブラッド・テクスター。 それに、この映画では唯一人の女優出演者であるTVショーの人気スター新人メリー・ラロッシュ、 というきわめて異色的な顔ぶれが出演している。
 監督は、1949年に異色作「罠」の公開で、そのリアリスティックな手法を認められ、 我が国でも多くの話題を集めた俊鋭ロバート・ワイズが担当している。 脚色はTVライターとし活躍しているジョン・ゲイ。
 撮影は「暴力教室」「八月十五夜の茶屋」等で知られている名手ラッセル・ハーランで、 緊迫した潜水艦内部の
描写は、とくにすばらしい画調をみせでこの映画の成功に大きく貢献している。

 <物語>  魔の海域と呼ばれる豊後水道作戦で、日本海軍に潜水艦をやられ、米国海軍の慣例により、 艦長としての責任をとっで待命しでいた「リッチ」ことリチャードソン海軍中佐は、 真珠湾警備地区の戦果の上らないのに業を煮やしていた。
 彼の現在の関心事は、現役に戻って艦と部下との仇を討ちたいと云うことばかりであったが、 こう云った彼の思いも、また彼の眼前で部下を殺した日本人を「プンゴ、ピート」 (爆雷男)と名づけて、秘かに復讐の折を狙つているここも、 服心の下士官オットー・ミューラーにだけは打明けていた。
 同じ頃、真珠湾基地には潜水艦ナーカ号が激戦を物語る姿で帰投して来た。 乗組員達は、重傷を負った艦長に代って次の就航の指揮をとるのは、人望の高い副長のジム・ブレッドソーと 思い込んでおり、ジム自身もそれを予期していた。
 が、基地に帰投するなりジムが聴かされたのは、ナーカ号の次の艦長はリチャードソンに決つたと云うことであった。 第七海域、即ち豊後水道方面での打続く敗退に手を焼いた軍上層部は、慣例を破ってもリチャードソンの経験を生かし、 再びこの方面の潜水艦指揮に当らせるべきだとの結論に達したのである。
 リッチが策を弄して艦長の職を横どりしたとばかり思い込んだジムは、上陸するなりリッチの家へどなり込んだ。 が、リッチの妻ローラの、夫を危険な任務に送り出す前の落ついた態度に打たれ、指揮をリッチに譲る決心をして他艦に転勤を願い出た。 にも拘らず、あくまでも副長として残つて呉れと要請するリッチの態度は、 自信がないために自分をあてにしているように、ジムには見えた。
 船体を修理し積込みを終って、ナーカ号は再び就航した。船室では兵達が今度の目的地は何処かと評定をしていた。 誰もが、「帰らざる海」第七海域へは行きたくない心であった。 その行く先が実は当の第七海域であると聴かされた時、兵達の間には蔽いようのない動揺の色が動いた。 が、豊後水道内は避けることになっていると云うリッチの言葉に、ようやく幾分の落着きを取戻した。・・・    (93分)

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