最后の接吻

<Kings Go Forth>  (58年)

<スタッフ>
製作
 監督
原作
 脚色
撮影
音楽
美術
編集

<キャスト>
サム・ロギンス中尉
ブリット・ハリス伍長
混血娘モニク・ブレア
モニクの母
大佐
ブリュー夫人

フランク・ロス
デルマー・デイヴス
デイヴィッド・ブラウン
マール・ミラー
ダニエル・L・ファップ
エルマー・バーンスタイン
フェルナンド・キャリー
ウィリアム・B・マーフィー


フランク・シナトラ
トニー・カーティス
ナタリー・ウッド
レオラ・ダナ
カール・スウェンソン
アン・コディ
 「最后の接吻」はスターのフランク・シナトラの独立イートン・プロ第一作で、シナトラを始め、 「成功の甘き香り」のトニー・カーチス、「理由なき反抗」「初恋」のナタリー・ウッドの 魅力キャストに、ジャッキー・バース、レオラ・ダナ、エディ・ライダー等が助演している。
 原作はデヴィッド・ブラウンのベストセラー小説「King Go F0rth 王たちは前進する」で、 「雨のランチプール」のマール・ミラーが脚色し、「カウボーイ」「決断の3時10分」の デルマー・ディヴスが監督した。撮影は「ふんだりげったり」のダニエル・ファップ、音楽 は「十戒」のエルマー・バーンスタインがそれぞれ担当している。
 物語は第二次大戦のノルマンディ上陸直後の南フランス戦線に於ける、 アメリカ軍将校と下士官の一人とニグロ混血娘をめぐる愛欲と葛藤に、 戦場に於ける男の憎悪と友情を織り込んだもので、シナトラは「地上より永遠に」以来の 最も内容に富んだ、やり甲斐のある作品と云っている。
 撮影は原作物語の背景であり、「世界で最も美しい場所」と云われている、 フランスの有名なコート・ダジュール(南欧地中海々岸)でロケ撮影され、 屋内撮影はハリウッドで行われた。
 スターは全員ロケ地へ行ったが、忙しいスケジュールのために何時でも同時にいると云うわけには行かず、 このため奇妙な撮影方法がとられて話題になった。
 と云うのは、急にシナトラとウッドのラヴ・シーンを撮る必要に迫られたが、 不幸なことに、ナタリーがハリウッドに帰った後だった。監督のディヴスは少しもひるまず、 ナタリーに似た少女を雇いカメラを彼女の肩ごしに、背後から撮影するように置き、 シナトラが腕にナタリー本人を抱いて接吻しているように見せた。数ヶ月後今度はハリウッドで全然逆の角度から撮影が行われた。 今度はシナトラのスタンド・インの肩ごしに、ナタリー本人がキッスを受けているように。
 大低の撮影方法には慣れっ子になっているハリウッド人種も、このコートダジュール=ハリウッド間のキッスには興味を示し、 「大陸間接吻」と云って話題にしている。
 更に、昔の無声映画時代の撮影に使われた、所謂「ムード音楽」の方法が採用された。 これは弦楽トリオがセット内で劇の内容に合った音楽を演奏し、俳優のムードを助勢するためのもので、 今度の撮影でも、微妙な感情の影を含んだ物語であり、しかも、スターが揃わない場合が多く、 ムードを持続し難いので、そのムードを作り上げるために監督の意見でこの「ムード音楽」が採用された。 勿論セット内で音楽家が演奏することは出来ないから、リハーサルでだけ行った。 シナトラがナタリーを泣かせるシーンもその一つで、シナトラ一人が演技し、 数日後、ナタリーは「ムード音楽」で気分を出し、
一人で泣きじゃくった。
 またハリウッドの撮影では、今まで映画には公開されなかった偉大なるコメディアン、 ハロルド・ロイドの豪華邸宅が使用され、美しいイタリー式建築の粋、水仙に蔽われた池、 滝、泉、英国式庭園40からの華美な部屋、高価な美術品などがふんだんに紹介されている。
 カーチスが、トラムペットでジャズを演奏する酒場のシーンにはビクター・ヤング、 べニー・グッドマン楽団などに参加した、木琴ビブラフォンの名手レッド・ノーヴォが特別出演している。

 <物語>  1944年の夏の末。フランス北部戦線では連合軍が優位を占め、既にパリを奪回していた。 が、南部を受持ったメリカ第七軍の進路は、南アルブス要害の地にたて籠って砲撃を加えて来る ナチ軍に阻れて、損害ばかりがいたずらに大きくなって行った。
 シシリー、サレルノ、アンジオ、フランスと半歳に亘って転戦して来たサム・ロギンス 小隊は、その最前線にいた。隊長のサム・ロギンスは、頑丈なからだと公正な心をもった 狙立独行の男だった。
 ある日、本国から、待ちに待った援兵が到着した。その中にブリット・ハリスと呼ぶ 若い伍長がいた。ブリットは豊かな旧豪に生れ、持ちまえの美貌とはったりで、初めての 土地へ行っても30分もたてば卵やら葡萄酒やらを両手一杯にかかえ、土地の娘を六七人も 後に従えて帰って来ると云う男だった。サムはそう云ったブリットを信用しなかった。 それはブリットが召集を逃れるため、徴兵委員を買収しようとしたと聞いたせいもあり、 また、サム自身の云うように、あいつは金持で男前なのに、俺は貧乏で風釆もあがらないから" もあったろう。
 ある日、小隊の無電係が戦死した。ほかに無電を操作できるのはブリットだけだった。 サムは彼を使うことにしたが、先ず一本釘をさした。「君がまともに任務を尽くすなら、 ずっとやって貰おう。だが、変な真似をしたら擲り飛ばしてやる。分ったな?」 「分っております!」と馬鹿丁寧に云う返事の早すぎるのさえ、サムには気に喰わなかった。
 何週間か経って中隊全員に休暇が出、サムの小隊もリヴィエラへ行った。シャンペン、 コニャック、女達……うつつを抜かす仲間を後に散歩に出たサムは、小さな漁村で モニク・ブレアに逢った。変った娘だった。アメリカ人だがフランスで生れたと云い、 馬鹿にかしこまった英語を話し、アメリカへは行ったこともないし行くつもりもないと云う。  午後から宵へかけて一緒に過した別れ際に、サムは次の休暇の約束をしようとしたが、 モニタは駄目だと云い残して帰ってしまった。・・・
 (109分)

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