敵中突破せよ!

<Hold Back The Night>  (56年)

<スタッフ>
製作
 監督
原作
 脚色

撮影
音楽
編曲
編集

<キャスト>
サム・マッケンジー大尉
ア ン
カズンズ中尉
エックランド軍曹
キティ

ヘイス・ゴーツ
アラン・ドワン
パット・フランク
ジョン・C・ヒギンス
ウォルター・ドニガー
エルスワース・フレデリックス
ハンス・ソルター
ハリス・アイゼン
ロバート・S・アイゼン


ジョン・ペイン
モナ・フリーマン
ピーター・グレイヴス
チャック・コナーズ
オードリイ・ダルトン
 我が国と海一つ距てた朝鮮の動乱は、未だ我々の耳に新しい戦後最大の事件である。 東西両陣営のツバ競り合から生れたこの戦争は、勿論朝鮮人にとって不幸な事件であったが、 それに参加して異郷の地で散ったアメリカの兵隊達にも同じことがいえよう。
 これら朝鮮戦争に取材した映画は、「零下の地獄」「鬼軍曹ザック」「トコリの橋」 「零号作戦」等々多く数えられるが、それらの殆んどが米軍の圧倒的勝利を描いているのに 反して、この「敵中突破せよ!」ほど、朝鮮における米軍の実態をありのままに鋭く ついた映画はない。
 初期の戦闘で着々と勝利を収め鴨緑江附近まで進撃した米軍が、中共軍の侵入によって 段々と後退を余儀なくされ、終局では釜山の北方わずか30キロの地点まで中共軍に 追撃された間を、米第7海兵隊を例にとって映画の物語は展開してゆく。
 一昨年アメリカで異常なるセンセ−ションを拍した、パット・フランクの 戦記ベストセラーを、アライド・アーチスツ秘蔵の脚色家ジョン・C・ヒギンスと ウォルター・ドニガーが脚色。「女の戦場」「硫黄島の砂」と戦争物に 特異な腕をふるうアラン・ドワンが監督に当った。 戦争映画にありがちの堅さを持たずに、又ヒロイズム礼讃に走らず、 軍隊特有のユーモアとヒューマニズムを維持することの出来たのは巨匠ドワンの手腕あってこそである。
 米第七海兵隊の側面守備隊を指揮する主演のサム・マッケンジー大尉には 「センチメンタル・ジャーニー」「アリバイなき男」「銃弾都市」の人気俳優 ジョン・ペインが扮しているが、戦争映画に初めて出演するのに大乗気の彼は、 従来に見られなかった熱演をしてハリウッドに大きな話題を投げたといわれている。 好漢ペインの相手役には、エンジェル(天使)のあだ名を持つ「底抜落下傘部隊」「烙印」 「愛欲と戦場」の明峰モナ・フリーマンが選ばれ、また「太鼓の響」でお目見得の アイルランド生れの美貌スタア、オードリイ・ダルトンも登場する。
 製作は「第三暗黒街」をプロデュースしたヘイス・ゴーツ。 撮影監督はリアルなカメラワークの得意なアライド専属のエルスワース・フレデリックス。 音楽監督は「成吉思汗」「怒りの河」のヴュテラン、ハンス・J・ソルターが 戦争物にふさわしいリズミカルなメロディーを全篇にみなぎらせており、その他、 美術監督にヒリアード・ブラウン、録音にはチャールズ・シェリング等のヴュテラン陣が 動員されている。
 又技術顧問として、米海丘隊のハロルド・ロイズ中佐を招致、 物語の展開に一層の信憑性を加えている。
 執拗な攻撃を加えて来る共産軍の包囲を突破して敗退する 米海兵隊の将兵の焦燥と不安の中に生れた鬼隊長と兵隊の美しい親情を描く、 ショッキングな戦斗と共に温い人間味に満ちた戦争映画の大傑作である。

 <物語>  砲火の飛び交う冬の朝鮮戦線。米第7海兵隊の側面守備隊を指揮するサム・ マッケンジー大尉は、一日の激しい戦闘を終えて疲れた体をテントで休めていた。 彼は、やおら体を起して道具箱からさも大切そうに一瓶のウイスキーをとり出して愛撫した。 今日も幸運に死者が出なかったのを、神とこのウイスキーに感謝した。
 マッケンジー大尉は第二次世界大戦で太平洋戦域へ出征の間も、 このスコッチ・ウイスキーを宝もののように大切にしていた。それ程このウイスキーは 彼にとって想い出深い大切な品であった。それは当時彼のフィアンセであり、 現在は彼の妻であるアンの贈ってくれたもので、一生に一度、まさかの際に栓を抜く約束で あった。この隊長の大切なシンボルは、同時に部隊のシンボルでもあった。 ウイスキーが安全な間は我々も安全だと兵隊は信じていた。
 マッケンジー大尉の指揮下、第七海兵隊の精鋭は、封鎖された鴨緑江への道を 切断するため死力を尽してハゲ山を登り谷間を突き進んだ。 然し、戦場に強力な中共軍が侵入して来たため、退却命令が下された。 この師団司令部の命令は意気盛んな海兵隊を驚かせたが、命令とあれば仕方がない、 後退準備に入った。後退する主動部隊を西方側面から援護すかのがマッケンジーの部隊の 作戦計画である。
 戦いながらの後退が始まった。そして不幸にも彼らの部隊は共産軍の矢面てにさらされた。 大部隊を容する共産軍の人命を無視した執拗な攻撃に、米軍兵士はバタバタと傷つき 倒れた。後退に必要なトラックやジープの殆んどが破壊され、将兵は負傷兵の運搬に 忙殺される悲惨な有様だった。
 生残った兵士33名。マッケンジー大尉は、あの貴重な想い出をこめた スコッチ・ウイスキーの栓を抜いて、隊員の士気を高めようと考ええた。 しかし、・・・
     (82分)

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