北北西に進路を取れ

<North by Northwest> (59年)

<スタッフ>
製作・監督
脚本
  撮影
美術

音楽

<キャスト>
ロジャー・ソーンヒル
   イーブ・ケンドル
   フィリップ・バンダム
   クララ・ソーンヒル
  

アルフレッド・ヒッチコック
アーネスト・レーマン
ロバート・バークス
ウィリアム・A・ホーニング
メリル・パイ
バーナード・ハーマン


ケイリー・グラント
エヴァ・マリー・セイント
ジェイムス・メイスン
ジェシー・ロイス・ランディス
断崖、疑惑の影、汚名、裏窓、めまい等々数多くの傑作を世に送った スリラー映画の巨匠、アルフレッド・ヒッチコックが製作監督に当った 1959年度の最新作で、善良なビジネスマンの日常茶飯事にふりかかる 味気ない事件の発端から息詰るクライマックスまで、アメリカという大陸的風土と、 最高の文明の中に、全く息つくひまもないくらいに突走る意外な事件の発展と、 スリルは正に巨匠の独壇上といえよう。
 事件ほニューヨークからシカゴとうもろこし地帯の大平原から、 南ダコダ州ラシュモア岩峰へと移動するが、そのドキュメンタリイ的な描写独得の コメディ・タッチ連綿たる恋愛描写など全篇に溢れるスリルやサスペンスと共に、 ヒッチコック作品の醍醐味を満喫せしめずにはおかない。
 脚本は、アーネス・トレーマンが書き、「知りすぎていた男」「ハリーの災難」の バーナード・ハーマンが音楽を担当、ヒッチコックの近作の殆んどを手がけている、 お気に入りのカメラマン、ロバート・バークスがここでも撮影監督に当った。 美術監督は、「恋の手ほどき」「緑の館」などのウィリアム・ホーニソグと メリル・パイの2人、同じく「恋の手ほどき」「緑の館」等のヘンリイ・グレースが フランク・マクケルビイと装置を受持った。
 特殊効果には、「電撃命令」のアーノルド・ギレスピー、リー・レプランクが 協力した。
 主演は「断崖」「汚名」「泥棒成金」「無分別」等のケイリー・グラント、 「波止場」「愛情の花咲く樹」等のエヴァ・マリー・セイント、「邪魔者は殺せ」 「ゼンダ城の虜」等のジェイムス・メイスンの3人。彼等をめぐって「泥棒成金」 「白鳥」のジェシー・ロイス・ランディス、「白い恐怖」「見知らぬ乗客」の レオ・キャロル、「渡るべき多くの河」のジョセフィン・ハッチンスン、 「ロンリーマン」のアダム・ウィリアムズ等が顔を合せている。
 ここはニューヨークのあるホテルのレストラン。「ジョージ・キャプランさんお呼び出しです」と、 給仕が立て込んで客の間を呼び歩いていた。広告代理業のロジャー・ソーンヒルが、 電話の所用を思い出したのは丁度その時だった。マルティニのグラスを置いて中座した彼は、 電話室の傍で2人のの男につかまり、有無を言わせず自動車で海岸に近い タウンゼソト氏の大邸宅に運ばれ、一室に閉じ込められた。
 やがて立派な紳士が現われた。ロジャーは当主タウンゼソト氏と直感したが、 氏は頭から彼をジョージ・キャプランと思いこんでいるらしく、いくら人違いだと抗議しても 全くきき入れず自分の仕事に協力せよ迫り、彼が承知しないと見るや強い酒を強要した。
 夜更けてロジャーは泥酔のまま自動車で送り出されたが、 衝突車放で警察に留置された。
 翌日、酔からさめたロジャーは、タウンゼソド家の乗用車盗用の疑いもあって、 警官に伴われ同家に出向いたところ、応待に出た夫人に見覚えがなく、 「主人は国際連合の総会に出席中です。」との意外な答えだった。
 ロジャーはその足で国際連合本部に行き、ジョージ・キャブランと名乗って タウンゼソド氏に面会を求めた。休憩室に現われた氏は、昨夜彼が氏の邸宅で会った人とは 似ても似つかぬ温厚な老紳士で、人違いではないといぶかるロジャーに、 妻は既に数年前世を去り、グレン・コープの家は先月来締め切ってこちらへ来ていると、 思いがけない話をした。
 「で、あなたはどなたでしょう、キャプランさん」と氏が質問しかけたまま よろよろとロジャーの腕の中に倒れかかった。驚いて氏を抱きかかえると、 その背中に突き刺さっているナイフ、思わずそれを引抜いた彼は、外交官タウンゼソド氏殺害犯人として追求される身となった。
 慌ててその場を逃げ出したロジャーは、・・・(137分)

 「北北西に進路を取れ」は、邦題であるが、原題は「NORTH BY NORTHWEST」で 単に「北北西」である。 しかし、この題名はどこから来たのだろう。

 スーパーインポーズでは終わりの方で 「北北西に行くことは知っている」というようなことをケイリー・グラントが ジェイムス・メイスンに言っているが、他には「北北西」とはどこにも出てこない。

 ある人は「事件が北北西に進んでいくのではないか」とも言う。地図を見れば一目瞭然、事件は ニューヨーク、シカゴ、南ダコダ州ラピット・シティと、ほぼ西へ西へと進んでいる。
 また「ノースウエスト機で北へ」という意味だろうという人もいる。これも教授と会う飛行場で、 ノースウエスト・エア・ラインの建物が出てくるが、飛行機はノースウエストのものではないし、 北へも行かない。

 ある人は「あっちこっち」という意味だろうとも言う。
しかし、邦題もどうして「進路を取れ」となったのだろう。

 これらに対して当のヒッチコック監督はフランスで、記者たちの質問に答えて 「いや別に意味はないんだよ」と、全く人を喰ったようなことを言ったという。
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