ハリーの災難

<The Trouble with Harry>  (55年)

<スタッフ>
製作監督
  原作
  脚色
  撮影
  音楽
 

<キャスト>
アルバート・ワイルス船長
   サム・マーロー
   アーニー・ロジャース
ジェニファー・ロジャース
  

アルフレッド・ヒッチコック
ジャック・トレヴァー・ストーリー
ジョン・マイケル・ヘイズ
ロバート・バークス
バーナード・ハーマン



エドマンド・グェン
ジョン・フォーサイス
ジェリー・マシューズ
シャーリー・マクレーン
 「ハリーの災難」はアルフレッド・ヒッチコックが「裏窓」「泥棒成金」についでパラマウントで 製作した作品である。
 ヒッチコックはこの作品をみずから「死休をめぐる喜劇」と称し、 「自分の映画経歴のなかでもっとも重要な野心的作品」と云つている。すなわち、 いままでのサスペンス・スリラーの形式からぬけ出して、 奇想天外な事件の展開と登場人物の性格描写に喜劇的なタッチを加え、 いわゆるヒッチコック・スタイルの新境地をひらいたところに大きな特色がある。
 原作はアメリカの新進作家で異色の題材を扱うことで知られているジャック・トレヴァー・ストーリー。 シナリオは「裏窓」「泥棒成金」でヒッチコックとの名コンビをうたわれたジョン・マイケル・ヘイス。 撮影監督はこれもヒッチコック作品でおなじみの「裏窓」「私は告白する」のロバート・バークス。
 配役は作品の野心的意図にしたがって慎重にえらばれ、ブロードウェイのミュージカルスの舞台で ダンサーとしてのオ能をうたわれているシャーリー・マクレーンを抜擢して主役の一人にあてたのをはじめ、 「ブラヴォー砦の脱出」のジョン・フォーサイス、「三十四丁目の奇蹟」「北京超特急」のエドマンド・グェン、 「ダニー・ケイの黒いキツネ」「静かなる男」のミルドレッド・ナットウィック、「革命児サパタ」 「セールスマンの死」のミルドレッド・ダノックなど、異色の俳優ばかりをあつめている。
 なお、色彩ビスタビジョンのカメラでとらえられたヴァーモント州の有名な紅葉風景が すばらしい美しさを見せていることもこの作品の魅力の一つである。

 <物語>  もみじの美しいヴァーモント州の森のなかでふしぎな事件がおこった。
 4つになった男の子アーニー・ロジャースが森に遊びに行って、男の死体を見つけた。 この死体が附近の小
さな村にさまざまの事件をまきおこした。村の人々のなかにこの男を殺す 動機を持っていると疑われてもしかたがないものがいて、そのなかのすくなくとも2人は 自分が殺したものと思いこんだからだった。
 死体はハリーという男だった。映画の主役はこのハリーの死体なのだが、 ストリーがすすむにつれて、なんども埋められたり、掘りおこされたりする。 ハリーについてのさまざまなことが明かになるにしたがって、死体をそのままにしておくことがある人間にとって 有利であったり隠さなければならなくなったりするのだった。
 たとえば、死体が発見されたとき、もと船長であったアルバート・ワイルスという中年の男は うさぎを射っていてあやまって殺人を犯したものと信じてしまった。
 ミス・グレイヴリーという中年女は森のなかでハリーにおそわれ、 ハイ・ヒールのかかとで頭をなぐりつけたので、それが死因であると思いこんでしまった。
 ジェニファー・ロジャースという若い美しい後家も疑われるだけの理由を持っていた。 ジェニファーは死体を見つけたアーニー少年の母親で、ハリーはジェニファーの2度目の良人だった。 アーニーの父親である最初の良人ロバートが死んだとき、ロバートの兄のハリーがむりにジェニファーと 結婚、ジェニプァーはハリーに愛情がないことを知って、ヴァージニアの田舎に身を隠したのだが、 死体が発見された朝、ハリーが突然訪れてきて家に入り込もうとしたので、牛乳のビンでなぐりつけたのだった。 ハリーは眼がくらんで、ふらふらと森のなかに姿をかくし、その後死体になって発見されたのだった。
 もう一人、疑われる理由を持っていたのはサム・マーローという青年画家だった。 サムはジーニファーを愛していて、ジェニファーもサムに想いをよせていたので、 名目だけの良人であるとはいえ、ハリーの存在が邪魔であるのは当然のことだった。
 こうして4人のものがそれぞれの立場を・・・ (99分)
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