生きていた男

<Chase a Crooked Shadow> (58年)

<スタッフ>
製作
監督
脚本

撮影
美術
音楽

<キャスト>
ワード
キム・プレスコット
ヴァルガス
チャンドラー・ブッリドソン

ダグラス・フェアバンクス・ジュニア
マイケル・アンダーソン
デイヴィス・オスボーン
チャールズ・シンクレア
アーウィン・ヒリヤー
ポール・シェリフ
マチアス・セイバー


リチャード・トッド
アン・バクスター
ハーバート・ロム
アレクサンダー・ノックス
 巧妙な手ロで描かれたサスベンス・ドラマ。終始一貫緊張の連続で最後の5分間で話は急転直下解決するが、 精巧に組立てられた事件の内容とデリケートな人間心理に、アルフレッド・ヒッチコック監督の「レべッカ」を 彷彿させる感がある。
 製作は剣豪スタアであり、ハリウッドを動かす巨人の1人であるダグラス・フェアバンクス・ジュニア。 脚本を書いたデビッド・オスボーンとチャールス・シンクレアの両才匠は、この原案の思索に数ヶ月を費やしたほどで、 その敏腕は作品の随所に躍如として輝いている。
 主演は「十戒」のアン・バクスターと、「揚子江死の脱出」のリチャード・トッドの2人。 アン・バクスターは既に善女悪女いずれの役でも幅のあることで定評があり、 その点この様な作品にはうってつけの役どころで、彼女の出演は、 興味の向上に一層拍車をかける結果となっており、又相手役のリチャード・トッドも適役で鍵を握る謎の男を巧みに好演、 その他「戦争と平和」のナポレオンの役で堂々たる威厳を示したハーバート・ロムが警察署長に、 「ヨーロッパ一九五一」でイングリッド・バーグマンの相手役を務めたアレキサンダー・ノックスが、 アン・バクスターの叔父に扮して好枝を残している。

 <物語>  スペインのコスタ・プラバに住むキム・プレスコットといえば、富豪でそして美貌の主として知られていた。 ある夜の晩餐会で叔父のチャンドラー・ブリッドソン等が帰った後、彼女は何時闖入したのか カウンターで勝手にウィスキーを飲んでいる青年を発見した。その男は1年前に自動車事故で死んだキムの弟だと名乗った。 弟は確かに死んでいるのに――キムは自分の眼を疑い乍ら、新ためて動かせぬ現実に気味の悪さを感じざるにはいられなかった。 驚愕の後の戦慄に不敵にグラスを傾ける因の男を前におびえる手で受話器をとっ
た。
 富豪に警察署長のバルガスが署員を帯同して、このキムの別邸ヘやって来た。 男は悪びれもせずに旧知の如くにバルガスに話かけ、運転免許証から身分証明書、 そして旅券にいたるまで一切の証書を見せて、自分は正真正銘のワード・プレスコットであると 再度名乗るのだった。
 証明書のいずれもはキムの弟ワードを格付けするに申し分なかった。亡霊か、さもなくば 巨万の財産を狙う詐欺師か――彼女は弟が手首に錨の刺青をしていたことを想い出だし、 瞬間鋭く問い質すと、男は皮肉な微笑をもらし乍ら袖口をまくってみせ、まぎれもない刺青を披露して 彼女の質問に答えるのだった。バルガスはこの様を見て怒りをおぼえ、二度とこんな冗談はせぬようにと 彼女にきつく言い残して去った。
 青ざめたキムをよそめに、その日から男は富豪プレスコット家のワードとして行動を起した。 新たに家政婦や下僕が雇い入れられたが、そのどちらもが、キムの身辺を探索するかのように たちはばかる不思議なそして氷の如くに冷血な人達だった。
 キムは幾度か叔父に身のおののきを説明しようとした。叔父ならば必らずこの男の化の皮をはがせることが出来る―― だが肝心なこんな時に彼女を救える只一人の親族は何処へ姿を消したのか、 キムの顔前には全然現われて来なかった。
 男は弟が国際自動車競走に優勝した折、彼女が贈った名前入りのシガレットケースを 持っていた。キムの恐怖は只つのるばかり。煙草ケースを見せつけられて彼女は弟が嘗て4マイルのドライブ・ウェイを3分間で走ったことを想い出し、 この青年にその難題が出来るかとふっかけた。偽者のこの男に死んだ弟の間似が出来る筈はない――  だが、男は・・・   (87分)

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