断 罪

<Yngsju mordet>   (66年典)

<スタッフ>
製作
監督
原作
脚本
撮影

<キャスト>
アンナ
ハンナ
ペル

ローレンス・マルシュテット
アルネ・マットソン
ユングベ・リットケンス
エバー・ダールベルク
ラッセ・ビヨルネ


グンネル・リンドブロム
クリスチーナ・ショーリン
ヨスタ・エクマン
 この作品は、わが国で昨今開催されたスエーデン映画祭で始めて上映されるや、 好評を博し多大の反響を呼ぶに至った問題の作品である。
 1889年3月28日、スエーデン南部スコーネ地方の避村で或る若い人妻が殺害きれるという事件が起きるが、 当局の調べも進むうちに加害者が夫とその実母の2人だったということが判明したばかりでなく、 さらに驚いたことに2の間には常日頃から<相姦>を行なっていたという極めて異常な事実が浮び出てくる…… 最後には、実母のみがスエーデン最後の女子死刑囚として断頭刑に処せられるが、単的に言って、 この物語全体は以上の如く、真に、ショッキングなものである。
 日本・アメリカの例では<相姦>の映画はその製作を禁じられているが、比較的倫理コードのゆるい フランス及びイタリアですらこの様な<実母子相姦>の映画は過去に、例類がなく、言わばこの映画のテーマは 世界映画史上初めてのケースである。
 監督は「沈黙の歓び」のアルネ・マットソン、主演は「処女の泉」「沈黙」のグンネル・リンドブロム、 「歓び」「禁断」のクリスチーナ・ショーリンとわが国に初登場の新人ヨスタ・エクマン、の3人が 特に堅実な演技を競っている。
 なお、この作品は実際にあった有名な実話犯罪を映画化したものであるが、 単にセックスを表面的なセンセイションリズムの興味から描いたものでなく、従来のベルイマン映画を始め、 例えば四九一≠フ如く、スエーデン映画の特質ともいうべき<人間のもつ原罪の意識>という問題をも、 とりあげている点は、やはり注目すべきである。
 ともかく北欧の美しい田園のムードを滲ませつつ 凄じい迫力と高い格調で全篇を寸分の隙もなく押しきったドラマチックな手法は近来のスエーデン映画の中で出色のものである。
 <梗概>  ハンナは、まるで不運にめぐりあうためにこの世に生れてきたような薄幸な乙女で、気の毒にも22才の若さで、 かたくなな人付き合いの悪い姑アンナと、その息子ベルの手にかかり、はかない生命を絶った。
 アンナは、年頃になる一人息子のペルに、なんとかして嫁をとらせようと日夜心をくだき、 八方手を尽して探し廻ってみたが、近所の評判もパットせず、しかもアンナととかくの噂が絶えないベルに、 そう簡単に結婚を承諾する娘が現われるはずもなく、アンナはあたかも自分に適齢期が刻一刻と迫ってくるような思いで でやるせない日々を送っていた。
 そうこうしているうちに、どうやら念願が叶い、近くの地方判事で金持ちのオルソンの娘ハンナを ペルの嫁に迎える話合いがついたが、これというのも実はオルソンからたんまり金を出させ、 ペルのために新らしい立派な家を建ててやろうとするアンナの念の入った計画で、 しかもアンナはこともあろうにペルとの不倫な関係をどうしたらずっと続けていけるか頭を悩ませていた。
 ペルはもうとっくに一人前に成長した男性であるにもかかわらず、アンナの溺愛がこうじた異常な愛情にかくれて育ったのが災したのか、 どこか陰気臭く、色白い顔立ちはひょっとすると女性的とさえ見えるほどだったが、案のじょうアンナの嫁いじめは、 結婚後3日と経たないうちに、執念深く、しかも皮肉たっぶりに始まった。
 もっともさすがにアンナも最初は気がひけたとみえ、住居も別のところへ移し、 時折ペルとの密会を楽しんでいる程度だったが、やがてなんとしても生来の欲情をおさえることが出来ず、 遂に再びベットを共にするという破廉恥な行為に進んだ。
 ふとしたことからこれを目撃したハンナは、あまりの恐ろしさに一時は気も転倒せんばかりに驚いた。 それでも何時かはペルも自分のところに戻り自分だけを愛 してくれるに違いないと信じ、・・・  (113分)

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