愛する

<Att alska>   (64年典)

  To Love
<スタッフ>
監督・脚本
撮影
美術
音楽

<キャスト>
ルイズ
フレデリック

ヨルン・ドンナー
スベン・ニータイスト
ヤン・ボレスラウ
ポー・ニルソン


ハリエット・アンデルソン
ズピグニエフ・チブルスキー
 愛……それは、私たち人間にとって切実な問題である。しかも、その本質をとらえて理解することはむずかしい。 愛とは何か?愛するとはどういうことなのか?そして結婚とは?夫婦とは?…… 「愛する」は、このような愛の問題に正面から取組んで、その真のあリ方を見極めようと試みた作品である。
 監督のヨルン・ドンナーは、31才の新進気鋭。本来は作家だが、映画の批評家としてもすでに一流で、 イングマル・ベルイマン論などを著している。映画監督としては、「九月の日曜日」で 63年ベネチア映画祭の新人監督賞を獲得した。 この「愛する」がそれに次ぐ長編第二作目。ベルイマンに傾倒しているというだけあって 緻密な論理と新鮮な感覚の持主であり、本当の愛≠ノ目覚めて行く女の姿をあざやかに描き出している。
 主役のルイズに扮するのは、ハリエット・アンデルソン。個性的な魅力と堅実な演技を誇る、 スエーデン映画界の代表スターである。ベルイマン監督のお気に入りで、「不良少女モニカ」 「夏の夜は三たび微笑む」「鏡の中にある如く」など多くのベルイマン作品に出演している。
 相手役フレデリックを演じるのは、ポーランド出身の異色スター、ズピグニュフ・チブルスキー。 「灰とダイヤモンド」「二十歳の恋」などで日本でもすでにおなじみだが、ここではまた適役を得て、 味わいのある名演技を見せている。
 撮影を担当しているスベン・ニークイストは、スエーデンのみならず世界の各回で活躍中の国際的なカメラマン。 「沈黙」でのカメラワークのすばらしさはまだ記憶に新しい。音楽のボー・ニルソンも、 現代音楽の一人者として広く知られている。
 <梗概>  墓地には、雪がしんしんと降っていた。真新しい十字架の前に今しがた捧げられたばかりの花輪が、 早くもなかば雪に埋れている。
「愛するグスタフへ――ルイズより」
 でも私は本当にグスタフを愛していたのだろうか……ルイズはそう考えないではいられない。 結婚して10年、ヤコブという9つになる息子があるし、世間も「円満な良い家庭」と認めてくれていた。 だが、ルイズとグスタフは夫婦であるというだけのことで、毎日何の感動もなくただ一緒に暮して来たのである。 突然の交通事故で夫を失くしてみると、ルイズには、 自分たちの結婚生活が妥協と忍従とあきらめの生活でしかなかったように思えて来るのだ。 人を愛するというのはあんなことではないはず……ルイズは今さらのように寒々とした思いで町の冬景色を眺めやるのだった。
 そんなルイズがフレデリックにひかれたのは、当然の成行きだったろう。旅行案内所に勤めるこの男は、 前に一度結婚したが3週間で別れてしまい、あとは気の向くままに愛の遍歴を重ねて来たという男である。 誰にも縛られず、何ものにもこだわらない。ある時は無邪気に、ある時はふてぶてしく、自分の欲望を満してはばからないのだ。 ルイズは、グスタフとの惰性のような生活では想像もつかなかった自由で新鮮な愛の姿に、目をみはるばかりだった。
 毎晩のように、ルイズはフレデリックと夜をともにするようになった。母のマルタも、 はじめのうちこそ世間体を気にしていたが、やがて黙認の形から、ついにはむしろ積極的に応援するようになった。
 実際、ルイズは見ちがえるほど明るく元気になった。はじめて愛することの歓びを知って、 ・・・  (91分)

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