沈 黙

<Tystnaden>   (62年典)

<スタッフ>
製作
監督・脚本
撮影
美術
編集

<キャスト>
エステル
アナ

アラン・エーケルンド
イングマル・ベルイマン
スベン・ニクイスト
P・A・ルンドグレン
ウーラ・リューゲ


イングリッド・チューリン
クンネル・リンドブロム
 「処女の泉」「第七の封印」「野いちご」など、一作ごとにせ界映画界の注目を集めている スウェーデンの名匠イングマル・ベルイマン監督の最新作。
 物語の主人公は外国のある街に滞在する姉と妹。言葉のまったく通じないこの街で、 欲望のおもむくまま、奔放に行動する妹、重病にあえぎながら、欲望と理性との相剋に悩む姉。 その対立のうちに、人間存在の本質を鋭く描き出したもの。つねに、神と人間の問題を凝視し、 現代人の生き方を追求するベルイマンの思想を解く重要なカギということができよう。
 この映画はスウェーデン本国、及び、ヨーロッパ、アメリカ各国で公開されると同時に、 いまゝで映画の歴史になかったような大胆な性描写によって、はげしい論議をまきおこし、検閲当局から、 さらに議会にまでもちこまれるという空前の騒ぎが記録されている。
 主演のイングリッド・チューリンは「野いちご」「黙示録の四騎士」(米)などの名女優。 演技者としていままでかつてないショッキングなシーンを完全に演じ切っている。 チューリンの妹役のグンネル・リンドブロムは、「第七の封印」に出演していた新人。 この大胆な演技で世界から一躍注目を浴びるにいたった。2人ともに、ベルイマン監督のお気に入り女優である。
 撮影のスベン・ニクイスト、美術のP・A・ルンドグレンなどは、つねにべルイマンに協力している ベテラン技術者たち。また、既成の音楽を用いているほかは、すべて自然音のみを使って効果を上げている。
 <梗概>  暑かった。じつとしていても肌が汗ばんでくるのがわかった。
 夜通し走りつづけた列車の窓から光がさしこんでくる。朝である。姉のエステル、妹のアナ、 そして妹の子供である10才の少年ヨハン。3人は休暇を利用したヨーロッパ旅行から帰るところなのだ。
 もともと病弱なエステルの体は、夏のさなかの旅ですっかり悪化している。 もう旅をつづけることはできない状態だった。たまたま列車が停まった町ティモカのホテルに 宿をとらねばならなかったのも、そのためである。  ティモカといっても、それが、どんなところなのか、この姉と妹はまったく知らなかった。 第一、ことばがまるで通じないのである。字も読めぬ、人々の会話も分からぬ。ホテルの老給仕とも、 手まねで意志を通じ合うしかなかった。
 広いホテルだった。相客もあまりないくらい。一組の滞在客は、この町の劇場に出演している 不気味な小人たちであった。しんかんとした廊下を、孤独な少年はひとりで歩きまわる。 老人の給仕は何やらわからぬことばで語りかけ、小人たちは彼を自分たちの部屋に迎える。 不思議な絵も壁にかかっていた。ヨハンは魔法使いの宮殿にまよいこんだようなスリルを楽しんでいるのかもしれない。
 だが、2人の女にとって、この滞在は何と空虚で、何と不毛なことだろう。エステルはベッドに横たわり やりかけの翻訳の仕事をつづけながら、・・・  (94分)

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