戦艦ポチョムキン

<Броненосец ≪Потёмкин≫> (Battleship Popemkin)
(25年ソ)

<スタッフ>
製作
 シナリオ
監督
撮影
音楽
美術

<キャスト>
水兵ワクリンチュク
先任士官ギリヤロフスキー
艦長ゴリコフ

ゴスキノ第1製作所
ニーナ・アガジャノワ
エス・エム・エイゼンシュテイン
エ・ティッセ
エヌ・クリューコフ
ヴェ・ラハリス


ア・アントーノフ
ゲー・アレクサンドロフ
ウラジミール・バルスキー
   

1905年の革命とポチョムキンの反乱

 映画「戦艦ポチョムキン」(1950年に作られた新版)は、次のようなコメンタリイ(解説)ではじまっている。
 「1925年、ソビエトはこの映画を世に出した。ロシア艦隊における英雄的な水兵の 反乱を描いたこの映画は、革命運動のもっともいさましいぺージをかざるものである。… 映画の主題に革命運動が取り上げられたのはこれが最初であるし、映画の主人公に民衆 が登場したのもはじめてである」
 この映画が世界をおどろかしたのは、何よりも映画の歴史上はじめて民衆の革命運動が 主題となったことである。ではここで取りあげられたロシア艦隊における英雄的な水兵 の反乱″とはどういう歴史的な事件をさしているのであろうか? もちろん、この反乱は 作者セルゲイ・M・エイゼンシュテインの空想の産物ではなく、レッキとした歴史的事実である。
 1905年6月14日、帝政ロシアの黒海艦隊に属していた戦艦ポチョムキン・タヴリチェスキー公号は、 黒海沿岸のオデッサ港の沖合に碇泊していた。オデッサではドックの労働者を中心として全市のゼネストが行われ ており、荷全体が革命前夜のようなきんちょうした空気に包まれていた。この時、すでに第一次ロシア革命とよばれる 1905年の革命の波が、ほとんどロシア全土にひろがつていたのである。
 戦艦ポチョムキン号のなかでは、社会民主党(のちの共産党)の地下組織がオデッサの 労働者に呼応してたちあがる準備をすすめていた。水兵ヴァクリンチュクとマチュシェンコがその中心であつた。 6月14日の朝、水兵たちは自分たちの食事に使用される牛肉にぅじ虫がわいているのを発見した。軍医のス ミルノフは平然と水兵たちの抗議をはねつけたので、水兵たちはくさった肉のスープを拒否した。 艦長ゴリコフは水兵全員を後甲板にあつめ、「文句のあるものは絞首刑にする」とおどかした。 水兵たちのあいだには、ヴァリンチュクらの「砲塔の下にあつまれ」というよびかけが次々と口づたえでつたえられてい た。水兵たちは動きだしたが、にげおくれた一群の水兵たちは帆布をかぶせられ、衛兵がよばれて
銃殺されようとした。その時、「兄弟たち!一体だれを射つのだ!」という声がひびいた。 衛兵の銃は下にさがった。水兵たちはたちあがり、逆に士官たちを海に投げこんで艦を占領した。
 しかしヴァクリンチュクは先任士官ギリヤロフスキーの1弾をうけて最初の犠牲者となった。ポチョムキンは水 兵の手でオデッサ港にまわされ、ヴァクリンチュクの死体が波止場に安置された。翌朝からオデッサの労働者や市民たちの哀悼の列が 波止場につづき、ポチョムキン号には食糧や水がおくられた。皇帝の軍隊による弾圧がはじめられ、 多くの労働者・市民が殺された。
 ポチョムキン号は砲撃でこれにこたえたが、海軍省が鎮圧に派遣した艦隊を迎えうつため赤旗をかかげて出港しなければならなかっ た。近づくだ艦隊にポチョムキン号は「われに合流せよ」と信号を送った。
 いままさに砲戦が開始されるかと見えた瞬間、戦艦ポベドノーセツ号をはじめとする鎮圧艦隊から水兵のウラー≠フ声がひびきわたった。 彼らはポチョムキンにたいする発砲を拒否し、ポチョムキンは無事艦隊のなかをとおりすぎた…

   事実をそのまま映画化
 映画「戦艦ポチョムキン」は、このような歴史的事実をほとんどそのまま映画化したも のである。監督のエイゼンシュテインは「私たちほ歴史的事件を、まったく事実がそうで あったように取りあげ、実際の経過をそのままたどり、これ曲げたり、他のどのような 形態にはめこむこともないよう努力した」(1935年1月、全ソ映画作家会議における演説)といっている。
 ポチョムキン号の歴史的な記録はもちろんこのようなものにとどまっていなかった。 ポチョムキン号に発砲を拒否した艦隊の水兵たちは、ポチョムキン号につづいて反乱にまでたちあがる 勇気に欠けていた。しかし、このポチョムキン号の反乱が1917年の10月革命の偉大な前奏曲と いえるものであり、だからこそ1905年革命の20周年記念としてソビエト映画が総力をあつめてこの反乱を 映画化したのである。                 
   (66分―1925年版は字幕による無声映画。50年版で音楽が挿入された)

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