レニングラード交響楽<Leningrad Symphony> (57年ソ) |
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<スタッフ> 監督・脚本 撮影 美術 音楽 演奏 指揮 <キャスト> ニコライ・ロギノウィッチ オルローワ オルローフ |
ザハール・アグラネンコ E・グリドフ D・ヴィニッキ― ヴェニアミン・バスネル レニングラード交響楽団 イフゲニー・ムラビンスキー ヴァスィリー・ソロヴィヨフ O・マルコ S・クリロフ |
ソビエトの代表的な撮影所「モスフイルム」で撮影されたレフ・アルシュタム・
プロの作品「レニングラード交響楽」は、ソビエト人民の愛国主義と、不屈の精神
を描いた感動的な大作である。 この映画に描かれたテーマは、1942年ドイツ軍包囲下のレニングラードにおいて、 実際に行われたソビエト国民の、愛国心と、人間性の勝利に外ならない。 いんいんたる砲撃の下、困苦と欠乏に堪え、敵に対する烈しい憎悪と、祖国の勝 利に対する確信と、そして人類の平和を希う悲厩をこめて演奏されたショスタコー ヴイッチの「第7交響楽」は、文字通り烈々たる祖国愛に燃える一大シソフォニーである。 事実この交響楽は、ソビエトが誇る世界的な大作曲家ショスタコーヴイッチが、 レニングラード防衛に挺身する同胞の、英雄的な行動に感激して、その偉大な精神 を讃え、愛国の情熱をこめて作曲し、レニングラードの人々に捧げられたものである。 この映画の演出に当っているのは、かつて劇作家であり、舞台監督であった ザハール・アグラネンコであるが、彼はさき頃我が国でも公開された「不滅の守備隊」を処女作として、 ソビエト映画界に登場した俊鋭で、彼は叉この作品のシナリオを担当しているが、 事実アグラネンコは、今次の大戦に従軍、パルチック艦隊に属して、レニングラードの壮絶な防衛戦に参加、 つぶさに辛酸を砥めており、言語を絶する苦難にもめげず、真のカを発揮した同胞の非凡な人々については、 目の辺りその苦斗の姿に接しているので、シナリオ自身も凄まじいまでの、迫真力をもった傑作として、 高い評価を与えられている。 撮影は、既に「春の冷気」で将来を嘱望されている新鋭のグリドフ。 美術は、国立映画専門学校出身の天才的芸術家、ヴィニッキーが夫々担当している。音楽は、 レニングラード交響団の指揮者の一人X・バスネル。 尚特筆すべきことは、この映画に於ける「第七交響樂」の演奏を、今回来朝する レニングラード交響楽団が行っていることであり、そのタクトも、実際の指揮者 イフゲニー・ムラビンスキーがとっている事実である。 映画の最終場面の演奏会場レニングラード・シンホニー・ホールは、レニングラード陥落を信じた ヒットラーが、その祝賀会を行うに当って会場として定めた場所だと云われ、その為に爆撃を免かれたのであった。 |
<物語>
1942年―レニングラードはドイツ軍に包囲されていた。
建物は破壊され、記念碑や銅像には木製の覆いがかけられていた。 ショー・ウインドはすべて板で補強されており、建物には "砲撃中、道路の此方側は危険!" の掲示が貼りつけられていた。 憂鬱な、半ば崩れ落ちた家々の窓は、大きな穴と化し、以前ならば活き活きとしていた通りも全く交通が途絶え、人影一つなかった。 レニングラードは今や完全に死の街と化したかにみえた。しかし、事実はそうではなかった。 街の中では、工場や製作所は沈黙のうちに絶えず動き続けていたし、幼推園も病院も開かれており、新聞社は新聞を発行していた。 数ヶ月にわたる包囲の圧力や、間断ない砲撃、猛烈な爆撃、それに食料、水、医療品などの欠乏も、 こうした逞しい人々の動きを止めることは出来なかった。 敵絵司令部は、1942年8月9日を期し、レニングラード総攻撃を行い、ヒットラーの意図はこの都市を降伏させる事にあった。 こうした最中のことである。レニングラードにはソビエトの誇る偉大な作曲家ショスタ・コーヴィッチの「第七交響楽」の演奏会を開こうとしている人たちがいた。 この曲は完成したばかりであり、勇敢な防衛軍や、来るべき勝利や、人々の愛するレニングラードに捧げられた作品である。 或る日、戦線の上空を突破した一台の飛行機が飛行場に到着し、中から陸軍の操縦士であるポリヤーコフが降りたった。 彼はその手に、一ツの紙包みを携えていた。それはほかならぬ、第七交響樂の総分譜だった。 彼は放送局に待機する指揮者ドブゼールスキーに、それを手渡すべき任務を帯びていたのである。 絶えずいんいんたる砲撃の轟くレニングラードの大通りを、彼を乗せた市電は走り出した。 男はすべて、尤も危険な防衛任務についており、運転手も車掌も女であった。 市電はしかし、間もなく始まった烈しい爆撃をうけて、架線を切られ立往生した。 畠の中に避難したポリヤーコフの隣には、まだうら若い女車掌が、同じように身を伏せていた。 端麗な横顔をした美しい娘だった。 ・・・ (96分) |