「地下水道」は、1957年度カンヌ国際映画祭で、審査員特別賞
を受けたポーランド映画が誇る31才の若手監督アンドルゼイ・
ワイダ(モスクワ世界青年学生平和友好映画祭青年監督金賞を獲得)の力作である。
ポーランドは第二次大戦中ドイツ軍によつて徹底的に破壊きれ、首都ワルシャワは殆んど全市街が
廃墟と化した。したがって、街を焼き、肉親を殺したドイツ軍に対するポーランド人の抵抗も猛
烈なものでった。ソヴエト軍が反撃を開始した1944年においてさえも、ワルシャワは孤立無援の
ままゲリラ戦がつづけられていた。「地下水道」はこの頃の一挿話である。
アンドルゼイ・ワイダはポーランド国立映画アカデミーの卒業生で、記録映画、編集、
舞台の経験を積んで、1955年に処女作「若い世代」を発表し、この「地下水道」が第2作である。出演者は
一部を除いてポーランド国立映画アカデミーの学生たちで、コラブという役を演じている
タデウシュ・ヤンチャールはポーランドの代表的なスターである。
彼と行動を共にするデイジーのテレサ・イゼウスカは「地下水道」の好演が認められて
二十世紀フォックス社に抜擢された新人である。
| <物語>
物語は1944年の9月末、爆撃と戦火で廃墟と化したポーランドの首都ワルシャワに始る。開戦
以来5年間にわたって続けられて来たドイツ軍に対する地下運動もソヴェト軍の進攻を目前にしながら
悲惨な終末が近づいていた。正規軍の中尉ザドラが率いる女をまじえた一隊も、8月の最後の抵
抗を始めた頃は70人いたのが、現在では43人になっていた。
隊員の中には無邪気に祖国の勝利を信じて疑わない12、3才の少年兵も、武器弾薬や食糧の給与の
仕事をしている明るい顔のハリンカという乙女もいた。太ッちよの曹長クーラは美しい字を書くのが得意だ
ったし、男前の准尉コラブは、毎朝入浴出来ない不平をこぼすほどの洒落者だった。
また、ミハエルという特殊な男がいた。昨日この部隊へ参加した彼は作曲家で、まだ銃を持ったことが
なかった。
それにデイジーという美しい金髪の少女――彼女は地下水道を伝って本体と連絡をとる重大な任務についていた。
彼らの武器は僅かばかりの小銃、機関銃と手榴弾、それで急降下爆撃機、中型戦車と戦うのだ。・・・
(85分)
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