広場の天使

<Mi tio Jacinto> (57年)

<スタッフ>
製作
監督
脚色




原作
撮影
音楽

<キャスト>
ペポーテ
ハシント
刑事
古着屋

ヴィセンテ・センペレ
ラディスラオ・バホダ
アンドレス・ラスロ
ホセ・サントウヒニ
マックス・コルナー
ヒアン・ルイヒ・ロンディ
ラディスラオ・バホダ
アンドレス・ラスロ
エンリケ・ゲルネル
ロマン・ブラド


パプリート・カルボ
アントニオ・ビコ
ホセ・マルコ・ダボ
ファン・カルボ
 戦前戦後を通じて作品の数も多くなく、内容的にも見るべきものの少なかったスペイン映画界にあって、 ラディスラオ・バホダ監督の55年作品、「汚れなき悪戯」は、その優れた内容と主演のパブリート・カルポ少年の 可憐な子役ぶりによって見る人々に感動を与え、カンヌ映画祭、ベルリン映画祭で受賞するなど、 全世界の絶讃を浴びた画期的な作品であったが、この「広場の天使」は前作で一躍世界のマスコットとなった カルポ少年の第2回作品。
 原作はハンガリア生れながらスペインで作家活動を続けているアンドレス・ラスロの "Mi Tio Jacinto" (僕のハシント叔父さん)で、さしえ入りの美しい本として出版されて、ベストセラーになったもの。 またこの作品は各国に紹介され、特にフランスでは "Le Muchacho" (少年)というタイトルで大好評を博した。
 この原作を作者のアンドレス・ラスロと、監督のバホダとを加えた5人で脚色、カルポ少年の いわば生みの親というべきバホダが詩情あふれる一篇の映画につくり上げた。
 技術陣も前作「汚れなき悪戯」及びその後の「鮮血の午後」と同じコンビで、撮影はエンリケ・ゲルネル、 美術はアントニオ・シモントとスペイン第一級のベテランが起用されている。ただ、音楽だけが違つて、 「悪魔の美しさ」「しのび逢い」「ロメオとジュリエット」などの音楽を担当していたハンガリア出身のイタリア作曲家 ロマン・ヴラドが腕をふるっている。
 出演者はカルポ少年の他は「汚れなき悪戯」で "門番さん" の役をやったアントニオ・ビコ "お粥さん" の 役をやったフアン・カルポ、村長の役だったホセ・マルコ・ダボ、「鮮血の午後」のマリアノ・アサーニャ、 ホセ・イスペルトなどいずれもなじみの俳優たち。それにイタリアから名優パオロ・ストッパが特別参加しているのが注目される。
 <物語>  ペボーテ少年は、マドリッド郊外の空地の、物置にも劣るようなボロ小屋に、叔父さんのハシントとともに暮らしていた。
 かつては闘牛師として鳴らしたハシントも、今はすっかり落ちぶれて、1本の牛乳をペポーテとともに飲み合うのが せい一杯という惨めな日々を送っつていた。
 そんなハシントのもとへ、ある日、1通の手紙が舞い込んで来た。何年ぶりかの闘牛への出場依頼で謝礼は1万5千円。 居所不明で、手紙は回送に回送を重ねて来たため、出場日はもうその晩に迫っていた。 しかしこの降つて湧いたような幸運も、乞食同然に落ちぶれたハシントには到底まともに信じる気になれなかった。 これはてっきり誰かの手のこんだ悪戯に違いないと考えて、その手紙を破り棄ててしまったが、 市中へペボーテと一緒にモク拾いに出かけてみて、ポスターに自分を見出したとき初めて手紙が悪戯でも冗談でもないことを知った。
 だが、それは闘牛といっても名ばかりの、道化師が子牛相手にさんざんふざけまわる低級な見世物にすぎなかった。そんなものに、 そんなんものに、いわば道化師の引立役として出ることは、かりにもその前半生を本格的な闘牛に捧げて来た彼としては 耐えがたいことだった。だが、1万5千円は、今の彼には勿論、大きな魅力である。おまけに、傍には、 愛する叔父の晴れの闘牛士ぶりを見ようと願うペポーテ少年の期待にあふれた眼差しがある。 どんなイカサマ闘牛でもここで見事な腕前を見せれば、昔の華やかさを取戻すきっかけとなるかもしれない。 彼はとうとう出場することに決めて、話をまとめると、その足で先ず古着屋に向った。何はともあれ、 あの金銀の縫いのある衣裳だけは、自前で調えなければならなかった。古着屋で見つけた衣裳は、 一夜借りるだけでも3千円、主人はそれも前金でといってきかなかった。 ・・・  (90分)

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