郷愁のボルガ

<His Vocation>   (56年露)

<スタッフ>
製作・監督
脚本
撮影
音楽

<キャスト>
アリョーシャ少年
ポーリャ・ドウプルイニン
ドウプルイニン指揮者
イリーナ・リュホハナ(妻)
ニコリスキー教授

マリーナ・フョドロブナ
ワレンチーナ・スピーリナ
アレクセイ・ポルカノフ
レオニード・アハナーシェフ


アンドリュシャ・デミヤノフ
ミーシャ・チャグレーフ
レオニード・ガリス
マリーヤ・クズネッツォフ
ガヴリイル・ベロフ
 戦後、我が国で公開されたソ連音楽映画はその好評さに反して極めて少ない。 「モスクワの音楽娘」(47)、「大音楽会」(53)、「レニングラード交響楽」(58)、 「音楽とバレエの巨匠たち」(58)、がそのすべてである。従ってこの「郷愁のボルガ」は 戦後5本目のソ連映画であり、人々に渇望され.ていた音楽映画である。
 事実この映画は公開に先立ち、文部省選定をはじめ、東京都教育委員会特選等 多数団体の推選を受け、また各界の人々からも、流された音楽の素晴らしさ、人間愛の美しさに 感動したと絶讃を博している。
 物語は一人の戦災孤児が音楽のオ能を認められて、モスクワの音楽学校で天才教育を受ける過程を 厳しくも美しく描いたものである。学校と家庭の協力で一人の孤児が音楽の天分を発揮するストーリーは、 現在我が国でも天才教育が盛んな時であり、公開と同時に人々に大きな反響を呼ぶ事だろう。 そしてまた、見事にとらえた雄大なボルガ河や豪荘を誇るモスクワ音楽学校などは 目新しいものとして人々に話題を提供するだろう。
 この映画に使用された主なる音楽はグリンカ、チャイコフスキー、バッハ、ベートーベン、 モーツァルト、グリーク等である。

 <梗概>  アリョーシャ少年はヴォルガ河河畔にある戦災孤児院「子供の家」で育てられた。 少年は生まれながらに音楽が好きであり、町にオーケストラが来ると必ず村を抜け出して聴きに出かけていた。
 或る日、アリョーシャは音楽を聴くため、雲ゆきの悪いボルガ河をポートで渡って野外演奏場へと 駈けつけ
た。少年はそこでひたすらピアノだけをじっと注視していた。そして少年は家に帰っても オーケストラの演奏に感激し、寝る事も忘れてピアノを弾き、マリーヤ院長を心配させる始末であった。
 次の日少年はいつものように友達を集めてアコーディオンを聴かせていた。 その時河畔を通りかゝったドウプルイニン指揮者はこれを聴いて少年に音楽の才能を認めた。 指揮者はマリーヤ院長に少年に音楽の勉強をさせてはどうかとすゝめる。
 やがてアリョーシャ少年はモスクワの指揮者の家に預けられ音楽学校に入学の厳重なテストを受けて 入学が許された。
 指揮者の家にはアリョーシャと同じ年頃のポーリャがいた。彼は学校で一番ピアノは上手だったが、 一人息子でとてもわがまゝなところがあった。彼は父が指揮者であることから母親に甘やかされており、 友達からもよく思われていなかった。学校ではコンチェルト≠弾くためのオーケストラの練習が始まり ピアノはポーリャが弾くことになっていた。だがニコリスキー教授は彼のピアノに満足でなかった。
 そこで教授は日頃から音楽の才能を認めているアリョーシャに正式にコンチェルト≠フ練習をさせ、 学校の発表会にアリョーシャを出すことに決めた。ポーリャと母親は怒って教授に抗議したが、 父はアリョーシャがコンチェルト″を弾けることを知っており、妻と子に「いくらピアノが上手でも 心の美しい、厳格な態度が欠けていては立派な芸術家にはなれない」と説き、納得させた。 ・・・  (93分)

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