明日泣く<I'll Cry Tomorrow> (55年) |
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<スタッフ> 製作 監督 原作 脚色 撮影 美術 音楽 <キャスト> リリアン・ロス トミイ・バードマソ バート・マクガイア カテイ・ロス ウォーリイ ディディツド・トレッドマソ |
ローレンス・ワインガルテン ダニエル・マン リリアン・ロス マイク・コノリィ ジェロルド・フランク ヘレン・ドゥイッチ ジェイ・リチャード・ケネデイ アーサー・E・アーリング セドリック・ギボンス マルコム・ブラウン アレック・ノース スーザソ・へイウォード リチャード・コンテ エデイ・アルバート ジョー・ヴァン・フリート ドン・テイラー レイ・ダントン |
リリアン・ロスの名を知る人には、胸迫る懐かしさと、胸搏つ
悲しさを覚えられるであろう。トーキー初期にミュージカル花形として
可憐な魅力を銀幕に発散させて人気のあった彼女の半生を描いたメトロスコープの最新作で
ある。
不幸な衝撃から口をつけたウイスキイから中毒患者になり、ようやく再起する16年間の悪夢 の様な過去を、ロスは自ら病みつけるかの様に記した日記の映画化である。 この云わば酒中日記とも云える著書はマイク・コノリー、ジェロルド・フラソクの共著で出版さ れベストセラーになつたもので、「リリイ」「ガラスの靴」のへレン・ドゥイッチとジェイ・リチャ ード・ケネディが脚色している。 監督は「愛しのシバよ帰れ」「バラの刺青」と問題作を世に贈っている 舞台演出家出身のダニエル・マンの第3番目の作品である。 主演は「野性の女」 のスーザン・ヘイウォードで、汚れきった、疲れきったロスを体当りで演じている。然もこの 作品で「我が心に歌えば」でも吹き替えを使い歌わなかったへイウォードが初めて歌っており、 その肺腑をえぐるような沈痛な演技は今年度のアカデミイ主演女優賞にノミネイトされている。 共演は「激戦地」「暴力団」のリチャード・コンテ。「ローマの休日」のエデイ・アルバート。 「第十七捕虜収容所」のドン・テイラー。「慕情」のヴァージニア・クレッグで 「エデンの東」の舞台出身の名優ジョー・ヴァン・フリートが、ロスの母親に扮し、 娘を食いものにするステイジ・ママを演じて、ロスと複雑な関係を綴りだしている。 | <物語>
リリアン・ロス (スーザソ・ヘイウォード)の育ったニューヨ−ク
は下町のごみごみした物売りの声が始終聞えてくる趣だつた。リリ
アンはその市場を通り抜けて街の子達と遊んだ。友達の中には、
あの利口な、気のきかぬ子のディヴィッドも居た。リサアンはその頃
から母親のカテイ(ジョー・ヴァン・フリ−ト)に連れられて そ
こいらの安っぽい劇場で子供のテストがある毎に連れてゆかれた。
一世の大スタアに娘を仕立てる事それが極度の俳優熱に浮かされて
いる母親のカテイの唯−の希みであった。
小さいリリアンには決して自信がある訳ではなく、毎日が不安と 怖れと緊張の連続でしかなかった。 テストが失敗に終ると、母親のカテイほ幼いリリアソを叱るのだ った。それでもリリアンが泣き出すと、カテイは優しく慰めて呉れ た。カテイはその度にいつもいった。さあ、もう泣かないで。さ、 今日は泣かないの、明日泣きましょう。明日は一日中泣けるから。 然しながらリリアンは天性の恵まれた才能を持っていた。8歳のとき シカゴで初舞台を踏む事を得、15歳でアール・キャロル・バニテイに 出演する機会に恵まれ、16歳のとき、ジーク・フィールド・フォリイズの スターになる事が出来た。そして18歳のとき聖林に招かれ、映画出演のチャンスを得た。 リリアンは、トランクの間に寝起きする生活が続き、表面は華やかな 生活を送りながらも、決して満足している訳ではなく、母親のいう通りに 動く、意志の弱い素直な子供だった。・・・ (117分) |