海の壁<This Angry Age> (57年) |
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<スタッフ> 製作 監督 原作 脚色 撮影 音楽監督 作曲 <キャスト> スザンヌ マイケル ジョセフ クラウデ デュフレスン夫人 アルバート |
ディノ・デ・ラウレンティス ルネ・クレマン マルグリット・デュラス アーウィン・ショー ルネ・クレマン オテロ・マルテリ フランコ・フェルラーラ ニーノ・ロータ シルヴァーナ・マンガーノ リチャード・コンテ アンソニー・パーキンス アリダ・ヴァリ ジョー・ヴァン・フリート ネーミア・パーソフ |
「禁じられた遊び」「居酒屋」等のフランスの巨匠ルネ・クレマン監督が、
「戦争と平和」等の大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスと組んで製作した最新作である。
マルグリット・デュラのベストセラー小説の映画化で、舞台は仏領印度支那、血と汗で豊沃な 水田地帯を築きあげた未亡人、そしてその美しき娘と逞しき息子、この3人の一家をめぐって物語は展開され、 水田地帯をあらゆる災害から守る防波堤を破壊し猛威をふるった大暴風雨の一夜を境にして、 この3人にふりかかってきた波乱の人生がくりひろけられるが、2人の子どもにそれぞれ訪れきた炎の恋、 専制的な母に対する子の反抗、しかしその底に流れる母子の愛情などか、クレマン独得の逞しいタッチで 描かれる。 クレマンとしては、はじめて暴風雨という大スペクタクル・シーンた力を注ぐ作品であり、 今まで手を染めなかった大衆性をも多大にもる映画をつくりあげようと意図している点で、 彼の一つの転換を示すものとして注目に価いしよう。 脚色はクレマンと「海の荒くれ」のアーウイン・ショウが共同で当り、 撮影は「道」「河の女」の名手オテッロ・マルテッリ、音楽は「戦争と平和」のニーノ・ロータがそれぞれ 担当している。 主演は「人間と狼」のシルヴァーナ・マンガーノ、「明日泣く」のリチャード・コンテ、 「ロンリー・マン」のアンソニー・バーキンス、「夏の鼠」のアリダ・ヴァリ、 「エデンの東」のジョウ・ヴァン・フリートと、米伊5大スタア競演という妻華顔ぶれ。 クレマンか製作開始まで6年間あたため、脚本執筆より完成まで2ケ年を要し、 タイ国に大規模な長期ロケを敢行して製作した超大作である。 |
<物語>
仏領印度支那の海岸ぞいに果てしなく広がった水田地帯。このあたり一帯は、未亡人な
がら男まさりのデュフレスン夫人の所有する土地である。 彼女は、娘のスザンヌ、息子のジョセフ、そして土着の40家族の力をかりて、 広大な不毛の土地を豊沃な稲田に変えたのだ。 海岸には、海水が耕地に浸入してくるのを防ぐため、防波堤が築かれていたが、コンクリートでつくる 費用はなかったので、土や椰子の丸太で築かれており、非常の場合には崩壊する危険を擁していた。 デュフレスン夫人は、女の身ひとつで、荒くれた男どもを相手に今日迄の地位を築き 保ち続けて来なければならなかった生活のためか、その物腰態度はきわめて専制的で、 水田に対する愛着もまた、執念に近い様相があった。だから、或る日、アルバート・レグロスという 金持の息子がおとずれ、彼女の土地を5千弗で買い取りたいと申しこんできた時などは、 その無法な値段に烈火の如く怒り、彼を家から追い立てた。このアルバートという 我儘でいやらしい青年は、土地買収と同時にスサンヌの愛を得ようと熱い想いを寄せていた。 たしかに、スザンヌは、アルバートがそうした野心を抱くのも当然だと思えるほど美しかったし、 またジョセフも逞しい青年であった。この2人の子供にかこまれた母親は、すくなてとも表面的には 幸福そうにみえた。しかし当の子供たちは、厳格で専制的む母親に強い反感を持っていた。 或る夜、ちょつとしたスザンヌの言葉に腹を立てたデュフレスンが娘に平手打をくわした時、 ジョセフは家を出て行くといって母親をおどかしたが、デュフレスン夫人はとりあおうとはしなかった。 その日の真夜中、ジョセフは家から出て行く決心をかためた。これを知ったスザンヌも とめようとはしなかった。・・・ (110分) |