夏の夜の10時30分<10:30 P.M. Summer> (67年) |
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<スタッフ> 製作 製作・監督・脚色 原作小説・脚色 撮影 音楽 <キャスト> マリア クレア ポール |
アナトール・リトバク ジュールス・ダッシン マルグリット・デュラ ガボル・ポガニー クリストバル・ハルフター メリナ・メルクーリ ロミー・シュナイター ピーター・フィンチ |
「二十四時間の情事」「かくも長き不在」のオリジナル脚本で有名なマルグリツト・デュラは、
現代フランス文学界を代表する女流作家として不動の地位をしめている。
彼女の小説で映画化されたものには「海の壁」「雨のしのび逢い」があり、
トニー・リチャードソン監督がジャンヌ・モロー主演で撮影中の「ジブラルタルの追想」も
彼女の原作であり、この「夏の夜の十時三十分」は、デュラの代表的な名作の一つである。
従来の小説作法に反抗して "アンチ・ロマン派" といわれるデュラであるが、 この小説は難解ではなく、愛の不在を追求して強烈な感銘を与える。 物語は、倦怠期の夫婦が、夫の愛人らしき女を同行してスペインの旅へ出るという危険な関係を描き、 人妻が旅先で目撃した情痴による殺人事件の犯人に、 微妙な心理的反応を見せることから起こる愛の機微を描いている。 「男の争い」や「トプカピ」などの推理映画で独壇場の巨匠ジュールス・ダッシン監督が、 恋愛映画では名作「死んでもいい」以来、久方ぶりに華麗なムードを見せた一作で、 製作、脚本も彼が担当している。 愛に倦怠し、パッショネイトな激情から殺人犯をかばう女を、ダッシン夫人で、 すでに数々の名作で名コンビを組んだメリナ・メルクーリが演じている。 すでに恋愛心理を演じては「死んでもいい」の名演技が強烈なメルクーリであるだけに、 いっそうの期待をそそる。 中年の夫に「女が愛情に渇くとき」「みどりの瞳」で、渋さを加えているピーター・フィンチ。 彼をまどわす謎のような魅力をたたえた女性には、アラン・ドロンとのロマンス解消以来、 一段と成長めざましい「何かいいことないか子猫チャン」のロミー・シュナイダーが抜てきされている。 そのほかスペインの新進俳優ジュリアン・マテオスが始めて国際的な舞台で脚光を浴びているのも話題の一つである。 撮影はマドリードで行われ、マドリードのパレス・ホテル、フラメンコ・クラブなど現地で撮影された。 またロケーションは、マドリードから100マイルはなれたマドリガ |
ルアレバロなどの町で撮影され、
風光明媚なスペインがくまなく収められている。
撮影は「ふたりの女」「太陽が目にしみる」「宿命」のガボル・ポガ二−があたり、 「追想」や「さよならをもう一度」のアナトール・リトパク監督が、ダッシンと共同プロデューサーとして名前をつらねている。 <梗概> 激しい雷鳴が轟き、雨が降りしきった。落雷の閃光のなかを拳銃が火を吹いた。 観光客のまばらなあるスペインの小さな町の出来事だった。 若い土地の百姓ロドリゴ・パレストラが、不貞を犯した若妻と、その愛人を拳銃で射殺した。 雨はなおも降りしきった。 その頃、雨のなかを一台の車が4人の旅行者を乗せて、その町へ近づいていた。 中年の渋い魅力をたたえた英国人のポール。その妻でギリシャ人のマリア。 2人の子供でジュディスという女の子。そして若く美しい謎のような魅力をもった女クレアが乗っていた。 車の後部ではマリアが娘を抱きかかえ、運転台にはポールとクレアがいた。ポールとクレアは、 マリアの眼を盗んで、ひそかな愛撫を交わしていた。車の後部で空になった酒の瓶が、 震動につれてカチカチ鳴っていた。 やがて車は、パレストラの殺人事件で興奮した町のあるホテルの前で止った。 しかし、ホテルは宿泊用の部屋が満員で、彼等は仕方なしに廊下で一晩あかすことになった。 4人の旅行者は、土砂降りの街道から、雷雨を避けて一夜の安眠さえできる場所があればよかったのだ。 あてどない旅であったけど、夏の夜の野宿にも等しい一夜の宿はクレアには不快だった。 マリアとポールは微笑をかわした。 2人は数年前、ベロナで知りあって激しい恋に落ちた。ベロナでも、 2人は部屋がなくホテルの廊下で一諸に寝たことがあった。ベロナでの激しい恋の想い出も、 ポールにとっては、いまでは恋のもえがらであった。マリアは妻という重い圧力であり、ポールは、 若いクレアの魅力にまいっていたのだ。・・・ (85分) |