絹の靴下<Silk Stockings> (57年) |
||
<スタッフ> |
|
往年の名匠エルンスト・ルビッチが1939年にグレタ・ガルボの主演で作った「ニノチカ」は、
艶笑諷刺喜劇の傑作として映画ファンたちを熱狂させたものだが、資本主義と共産主義の対立を痛烈
に茶化したこの物語は、さきごろニューヨークのブロードウェイの舞台でミュージカル・プレイとし
て上演されて大ヒットとなり、更にこれがシネマスコープで再映画化されたのがこの「絹の靴下」で
ある。
この映画は、長い間MGMにあって、「イースター・パレード」「巴里のアメリカ人」「雨に唄え ば」など、数多くの傑作をプロデュースしたアーサー・フリードの独立第1回作品で、主演は「足な がおじさん」「パリの恋人」など、最近ますます好調のフレッド・アステアと、「バンド・ワゴン」「ラ ス・ベガスで逢いましょう」などMGMがエレガント女優として大いに売り出しているシド・シャリ ッシ。それに、1940年代に鉄火アネゴとしてハリウッドに旋風を捲きおこし、その後は舞台で活 躍していたジャニス・ペイジが共演し、ピーター・ローレ、ジュールス・マンシンなどの腕達者が顔 をそろえている。 監督はハリウッド屈指の名匠でミュージカルでは「サマー・ホリディ」を作ったルーペン・マム ウリアン。 千万ドルの曲線美といわれるシド・シャリッシが、その艶めかしい肢態を惜しげもなく見せ、 コール・ポーターの絢繚たる主題曲が全篇に流れて、歌と踊りとお色気とが映画ファンをこの上もなく 楽しませてくれる豪撃な天然色シネマスコープ作品。 | <物語>
ソビエトのすぐれた作曲家ピーター・ポロフは、ソ連芸術を示す演奏会のためパリに派遣きれていたが、
いつか花の都パリの情緒におぼれ、崇高な革命思想を忘れてしまった。
折しも生き馬の目でも抜きか ねないアメリカの映画プロデューサー、スティーブ・キヤンフィールドがボロフの作曲した音楽に目をつけ、 それを使つてハリウッドの踊るスター、ペギー・デイトン主演の映画をパリのスタジオで撮影する計画を立て、 ポロフに5万ドルの権利金を払おうと申出た。ボロフは帰国期限が来ていたが、キヤンフィールドは 彼を引留めるため、ボロフの父がフランス人のセールスマンであったというニセの証明書を見せ、彼 がフランス滞在の権利があると安心させていた。 いつまでたっても帰らないボロフを呼びもどすため、ソビエト政府は3人の至って実直な共産党員 をパリに派遣することになった。ブランコフ、ピピンスキー、イワノフの3人である。 パリにやつて来た3人はポロフの説得にとりかかったが、間もなく彼等もパリの情緒に浮かれるよ うになって、与えられた使命もそっちのけで、キャンフィールドと下町を飲んで歩いたり、ガラにも ないおシャレを始めたり、パリ美人にウツツを抜かしたりというあんばい。完全にミイラ取りがミイ ラになつてしまった。 この3人も帰ってこないので、ソビエト本国では調査のために、厳格にして忠実なる模範的共産党 員であるニノチカという女丈夫をパリに派遣・・・ (117分) |