チコと鮫

<Ti-Koyo e suo Pescecane>   (62年伊)

  Tiko and the Shark
<スタッフ>
監督
原作
脚色
撮影
音楽

<キャスト>
チコ
ディアーナ

フォルコ・クイリチ
グレメント・リシュール
イタロ・カルビーノ
バボーニ
フランコ・デ・マージ


アル・カウエ
マルレーヌ・アマング
 ハワイ・ブームが過ぎ去り津波のように我が国に押し寄せて来たのがハワイをぐっと南に下ったタヒチ。
 この「チコと鮫」も同じく、かつて天才画家ゴーガンの魂を奪い去った魅惑の島、 タヒチにオール・ロケした映画である。
 「チコと鮫」は、「青い大陸」「最後の楽園」で記録的な大当りをとったフォルコ・グイリチ監督の最新作で、 得意の美しい水中撮影を駆使して、南海の夢の楽園タヒチを舞台に、チコという原住民の少年と人喰い鮫の間に、 ごく自然に芽ばえた友情を描いた物語である。
 少年時代の夢と、未開の楽園への郷愁がドラマを流れ、島民の素朴な生活をおり込んで、 詩情ゆたかな作品にしあげている。
 撮影は、2年間かかって鮫を飼いならすことからはじまり、その後、撮影隊は太平洋諸島に1年にわたって滞在し、 監督夫人ラウラ・グイリチも撮影隊に加わって仕事を手伝った。
 「最後の楽園」ですぐれた効果を示した水中撮影の大家マジーノ・マヌンツァや、 特殊撮影技師のナンニ・スカルベリーニらが、前作をしのぐ成果をあげ、豊かな色彩と美観に満ちた南海の大自然や、 珊瑚礁を次々に写し出している。
 主演者チコには、ハワイ・ワイキキの浜辺で見つけた、ポリネシアの金持の子孫であるアル・カウエを抜擢。
 グイリチ監督は、私が今まで出会った南洋の男の中でそれらの最も完全な典型である″と彼は絶賛している。
 ディアーナ役のマルレーヌ・アマングもやはりズブの素人で、彼女はタヒチと中国の混血児である。 その他の漁夫、住民もすべて、監督自から、ツワモツ諸島の土着民の中からえらんで起用した。
 <梗概>  神秘的で、童話的であり、時には夢のように非現実的でさえある南海の楽園タヒチ。 人々は細長い珊瑚礁の上に小屋をつくって、潮入湖の海底深く潜って魚を探す。 しかし、常に大洋とのきびしい闘争を課せられているために、現実はとても苛酷だ。
 彼等は、珊瑚にひっかかると破れてしまうので網も持たずに、また鮫が出てきてすぐ餌を食べてしまうので 釣針も持たずに、かけ釘だけをもって水に潜rなければらなかった。そのようにして、一年中、 毎日3度の食事を得るのである。
 人喰い鮫は、昔からここの漁夫たちにとって、最大の仇敵とされていた。ところがある日、少年チコは、 海岸に迷い込んできた人喰い鮫の子供を見つけた。チコは、彼のおませな女友達ディアーナといっしょに、 浜辺に水たまりをつくり、餌を与えて小さな鮫をひそかに育てる。餃は日増しに成長し、 空腹になると、グルグルと喉をならして、餌を催促するまでに飼いならされた。
 チコは、おじいさんに手伝わされる漁の仕事のあいまを抜け出しては鮫のところへかよい、 やがてごく自然にチコと人喰い鮫の間に友情が生れた。
 ある時、犬の遠声にあわてて駆けつけたチコは、そこで数匹の野良犬に噛まれて、いまにも殺されそうになっている鮫を発見した。 彼は必死で犬を追っ払い、砂の上で苦しんでいる餃を、紺碧の広い海に放してやった。
 元気を取りもどした鮫は、チコのとこへもどってきて、彼とディアーナを豊かな色彩と美観に満ちた大洋の海底深く、 あるいは珊瑚礁のあいだを次々と案内し、すばらしい風景の海辺へ彼らを連れ出すのだった。
 浜辺で木にかかっていた凧を見つけたチコとディアーナは、鮫のしっぽに凧を結びつけて、鮫を泳がせることを考えつく。 ・・・     (107分)

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