ふたりの女

<Two Women>   (60年伊)

<スタッフ>
製作
監督
原作
脚色
撮影
美術
作曲
編集

<キャスト>
チェシラ
ミケーレ
ジョバンニ
ロゼッタ
フロリント

カルロ・ポンティ
ビットリオ・デ・シーカ
アルベルト・モラビア
チェザレ・ザバティーニ
ガポル・ポガ二ー
ガストン・メディン
アルマンド・トロヴァイオリ
アドリアナ・ノベリ


ソフィア・ローレン
ジャン・ポール・ベルモンド
ラフ・バローネ
エレオノラ・ブラウン
レナート・サルバトーリ
 「靴みがき」「自転車泥棒」などイタリアン・リアリズムの代表作を生んだ巨匠ビットリオ・デ・シーカが、 「屋根」以来6年間の沈黙を破って世に問う監督作品で、本年(61年5月)の第60回カンウ映画祭に出品されて 多大のセンセイションを呼んだ。
 映画は第二次大戦末期のイタリーの、渾沌たる社会世相の中を生き抜く母と娘を主人公に、 女の宿命的な弱さや逞しさを描いて、戦争に対する女の烈しい怒りや抗議を画面いっぱいに投げつけるが、 さすがに名匠デ・シーカの名にはじないリアリスティックな格調ある快作になっている。
 「ローマの女」の原作者で映画シナリオなども書いているアルベルト・モラビアの小説「ラ・チョチャーラ (チョチャリアの女)」から、デ・シーカの監督作品に協力しているチェザレ・ザバティーニが脚色している。 なおチョチャリアというのは、地中海の薫風を受けてローマからナポリへひろがる丘陵地帯で、 「オリーヴの下に平和はない」「恋愛時代」などの舞台にもなっていた。 撮影は例によってロケーションばかりで、「ヨーロッパの夜」「十七オよさようなら」のガポル・ポガ二ーが担当、 美術は「屋根」のガストン・メディンが受け持った。
 主演はジーナ・ロロブリジダと共に戦後のイタリー映画界を代表する国際女優ソフィア・ローレンだが、 この映画によりカンヌ映画祭の女優演技賞はじめ、イタリヤのアカデミー賞ともいうべき「銀リボン賞」 (最優秀女優演技賞)や、ローマ国際シネクラブの最優秀イタリヤ女優賞を獲得しなだけあって、 魚が水に帰ったような素晴らしい演技を展開する。おそらく彼女の最高の演技と云えよう。
 彼女をめぐって、「二重の鍵」「勝手にしやがれ」のジャン・ポール・ベルモンド、「にがい米」 「オリーヴの下に平和はない」などのラフ・バローネ、「若者のすべて」「ローマで夜だった」の レナート・サルバトーリのほか、カルロ・ニンキやアンドレア・ケッキなどのベテランが好演しているが、 彼等にまじって、デ・シーカ監督のおめがねにかなって500人中から選ばれた14才の新人エレオノラ・ブラウンが 清楚な雰囲気をかもし出している。
 製作は、「河の女」以来ソフィア・ローレンの今日を作り上げたと云われている彼女の夫君カルロ・ポンティ。
 <梗概>  第二次大戦中のイタリー。その頃ローマは連日空襲にさらされていた。チェシラが食料品店を出している裏街にも サイレンが鳴り渡って爆発音があちこちに起こった。その一発は至近弾だったらしく、家はガタガタと揺れて 棚にならべられたとぼしい食料品がバラバラと落ちて来る中で何かの破片に打たれたのか、 ようやく13才になろうとするチェシラの娘ロゼッタが真青になって倒れてしまった。驚いて駈け寄り、 わが子をひしと抱き締めた母親は、天井の爆音に向って狂気のように罵りわめいた。
 幸い大事なく空襲は終ったが、今日という今日、チェシラは山村の生れ故郷へ避難しょうと決心した。 日頃心臓の弱い娘にもう二度とこんな思いをさせたくなかったのだ。まるで親子ほども違う年上の夫が 2年ほど前に死んだ後を、女手一つで店を続けながら、かよわい娘を大切に大切に育てて来たが、 物価がぐんぐんはね上って行く中で、親子2人が食うに困らないだけの貯えはあった。
 彼女は夫の友人で近所に石炭屋をしているジョバンニのところへ、家の管理を頼みに出かけた。 妻も子もあるこの男は、こころよく彼女の頼みを引受けてくれたが、日頃彼女を愛していたと告白し、 その逞しい体で、いきなり彼女を石炭袋の上へ押倒した。
 チェシラは、私たち何もなかったのよと男に念をおして表に出たが、もし娘に知れでもしたらと思うと 頭に血が上って来るのだった。
 翌日、母と娘はジョバンニに見送られて汽車に乗り込んだが、鉄道も麻卑状態で、 途中から歩かなければならなかった。空からの機銃掃射や、好色な男たちから純な娘をかばいながら、 ようやく丘陵にある故郷の村にたどり着いた。
 だが一見平和なこの村にも戦争はひしひしと押し寄せていた。昼も夜も爆音は絶えなかったし、 夜間の軍の移動を捉えるための照明弾が遥かな空を彩るのだった。戦争の終了をひたすら願う者、 ムッソリーニを信じている人、英国を待っている者たち、それぞれの思いは違っていたが、沈み勝ちな暗い顔で、 ともすると口論になった。物資の豊かなこの土地で、 チェシラは早速食料の買いあさりに頭を悩まさねばならなかった。 ・・・(102分)

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