最後の楽園

<L'Ultimo Paradiso>  (57年伊)

<スタッフ>
製作代表
 監督
シナリオ

撮影監督
美術
作曲・指揮
編集
日本語版解説


ゴルフィエーロ・コロンナ
フォルコ・クイリチ
ゴルフィエーロ・コロンナ
フォルコ・クイリチ
マルコ・スカルペリ
ダリオ・チェッキ
フランチェスコ・ラヴァニーノ
マリオ・セランドレイ
宮田 輝(NHK)


 果てしなくひろがる南太平洋には、かつて天才画家ゴーガンの魂を奪い去つた魅惑の島タヒチを はじめ、わずか30メートル平方の小さなサンゴ島にいたるまで、大小無数の緑の島々が散在している。
 1年中快適な気候とすばらしい大自然の美にめぐまれた奇蹟の楽園、20世紀の現代に残されたこ の地上最後のユートピアには、たくましい現住民たちが勇敢に、そして平和に、青い海とともに生活 している。
 映画『最後の楽園』は、さきに「青い大陸」を贈ったフォルコ・クイリチ監督一行が、 パンエウローパ探検隊を組職して、1956年、9ヵ月間にわたって地球を3周する距離を航行し、 南海の詩情ゆたかな風習、愛の生活、そしてスリルと迫力あふれる海洋冒険の物語を、 はじめて色彩ワイド版でとらえた驚異のスペクタル大作である。
 すなわち探検隊一行は、定期客船および帆船によって、ソシエテ諸島(タヒチ島、モーレア島、 ライアテア島、ボラ・ボラ島、フアヒネ島、マウピティ島)、トゥアモートゥ諸島(ランギロア島、 マニヒ島、アパタキ島、ヒクエル島、アナア島、アヘ島、マカテア島)、サモア諸島、クック諸島 (アイトゥタキ島)、フィージー諸島、ニューヘブリデス諸島(ペンテコースト島、アムブリム島、 マレクラ島、ターナ島)、ニューカレドニア、ロイアルティ諸島などをめぐり、 海路3万3千キロ以上を航海し、また国際航空路50万キロ、ローカル航空路10万キロ以上を飛行して、 この広大な処女海域をくまなく撮影したのである。
 撮影監督マルコ・スカルペリのもとに、カメラマンのナンニ・スカルベリーニや、 「青い大陸」ですぐれた効果を示した水中撮影の大家マジーノ・マヌンツァらが、 前作をしのぐ成果をあげ、豊かな色彩と美観に満ちた南海の大絵巻を次々にくりひろげる。 これには、やはり「青い大陸」の名潜水家ルイジ・トヴィーニの危険をかえ
りみぬ潜水指導や (事実、彼は全長6メートルのどう猛なトラザメのするどい歯によつて腿に全治1ヵ月の重傷を負つた)、 「懐かしの日々」「崖」などの名美術家ダリオ・チェッキの適切な指導があづかってカおおきい。
 『最後の楽園』で重要な役割をしめる音楽は、「失われた大陸」「太陽の帝国」などで この種の映画に豊富な経験を持つ、イタリア映画音楽の第一人者フランチェスコ・ラヴァニーノが、 現地の音楽をもとにすばらしい作曲と指揮をしている(主題曲に南海の歌" "漁夫の祭り" "パペーテの夜明け" ほか12曲がある)。
 編集は「失われた大陸」「太陽の帝国」「白夜」などの名手マリオ・セランドレイ。 解説文は、作家で「道」「カビリアの夜」の名脚本家エンニオ・フラヤーノが書くな ど、現代イタリア映画界の一流スタッフが参加している。
 『最後の楽園』探検隊一行は、白人文化の急激な影響にもかかわらず自分たちの伝統を尊重しつづける原住民 のあいだで、彼らの風俗習慣、感情などを人間的な眼で観察し、彼らの実生活から得た4つのエビソ ードを組立てて、ここに新しい種類の映画を創作した。つまり、現住民の愛情に対する考え方、彼ら の家庭観、彼らの生存競争、彼らの白人文化に対する意見などを学びながら、彼らの "心" をとらえ ようとしたのである。
 だから『最後の楽園』は、「緑の魔境」「青い大陸」「失われた大陸」「太陽の帝国」などの イタリア長編記録映画の伝統を受けつぎながらも、これらよりはるかに劇映画に近い構成および 演出方法をとっているし、現地人が物語の主役として活躍している。
 なお『最後の楽園』は、従来の長編記録映画の最高到達点であるとともに、この種の映画の 新しい出発点に立つ記念すべき作品として、1957年ベルリン国際映画祭で銀熊賞を授与された。
     (87分)

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