モンテカルロ物語

<The Montecarlo>  (57年伊)

<スタッフ>
原案・製作
監督・脚本
撮影
美術
衣裳

<キャスト>
マリア
ディノーディラ伯爵
ジェーン
その父ヒンクリー氏

マルセロ・ギロシ
サミェエル・ティラー
ジュゼッペ・ロッウノ
ガストーヌ・メディン
エリオ・コスマンツイ


マレーネ・デイトリッヒ
ヴィットリオ・デ・シーカ
ナタリー・トランデイ
アーサー・オコンネル
 ヴィットリオ・デ・シーカといえば云わずと知れる「自転車泥棒」「終着駅」「屋根」等数々の名作を放った大監督 だがこれらの作品は何れもマルチェロ・ジローシとの協同企画による製作であつた。
 「モンテカルロ物語」は、スタッフに名こそ出さぬが、デ・シーカが総指揮であり、演出にも大いに協力してい ることが伝えられている。
 オリジナル・ストーリーはマルチェロ・ジローシの執筆であるが、実は、この話のモデルは、デ・シーカご自 身で、数々のエピソードが、盛り込まれたものであると云ううがつた説もある。
 監督のサミュエル・テイラーは、「麗しのサブリナ」でアカデミー脚本賞を受けた人だが、この人の軽快な筆法 に、デ・シーカは早くより着目していた。「演出」にも、充分その味を発揮できるものと見透し、メガフォンをと らせた。彼のけいがんに狂いはなかつた。
 出演者は、往年、イタリア随一の二枚目スタアとLて鳴らし、ことに演技力を高く評価されていた、デ・シーカ が、ロマンス・グレイの小粋な紳士で登場し、「懐かし日日」以来久しぶりの好技をみせる。
 マレーネ・デイトリッヒは、最近では、ハリウッドを外にして、シャンソンやファッションの舞台に引っばり 凧の人気者である。
 この映画で、最も魅力的な存在は、ことし17歳のナタリー・トランデイであろう。ヴロードウエアで将来を 約されている金髪娘で、ういういしい乙女の生地を存分に発揮していて新鮮そのものである。
 この映画の最大の話題は何といっても、世界的な景勝地であり、大歓楽郷でもあるモンテカルロやモナコがシ ネスコ以上の鮮明度をもつテクニラマ方式で、隅々まで拡大描与されることてある。 賭博場の胴元もすべて実人物の登場であり、使用されている諸種の小道具も全
て実物が提供されたし、そこに 登場している紳士淑女はこれも全部ご常連の特別出演で、中には、欧州の上流人も多数いると云う。

 <物語>  ディノ・デラ・フィアバ(ヴィットリオ・デ・シーカ)伯爵と云えば人も知る。40台の、類い稀な魅力を持つ貴公子である。ところが辛か 不幸か生れついての勝負好きなので、今や生れ故郷のナポリを捨てて、彼にとって人生最大の楽しみのメッカ、モンテカルロのカジノの近くに 住んでいる。賭博狂のお蔭でふんだんにあった財産も、何時しか雲霧と消え失せてしまったが美事な衣裳と自慢の動力ヨット "希望号" だけは手 放さないで持っていた。
 財産を失くしたとは云うものの、伯爵は友人には恵まれ、モンテカルロの住人からは誰かれなしに愛され、就中、今は、モナコ公国の一流豪 華ホテルに雇われている元の雇人たちからは、以前と少しも変らずに尊敬されている。5年前に伯爵がルーレットで財産を失ってからずっと、 元の雇人たちが毎晩のように何千フランも立替えて、伯爵をカジノで遊ばせているのだから、彼等の尊敬がどんなものか分ろうと云うものだ。
 しかしラック夫人に捨てられた "暗い夜" 以来、伯爵は決してルーレットのテーブルには近寄ろうとはせず、専らパッカラとレージェ・イン・ノ ワール(共にトランプ勝負)を楽しんでいる。とは云うものの、蔭ではこっそりとルーレットの回転を当てる "必勝法" を研究し、それを友 人たちに教えて彼らの友情に報いると共に、ちゃっかりと可成りの手数料をせしめていたのである。
 不幸なことに、伯爵の借金が積り積って1万弗と云う巨額に達したので、伯爵は "債権者" たちに迷惑をかけないために、何とか手を打たね ばならぬ破目となった。 
   (101分)

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