両面の鏡

<Le Miroir a Deux Faces>   (58年伊)

<スタッフ>
製作
監督
脚本

撮影
音楽

<キャスト>
マリージョゼ
ピェール
ジェラール
ポスク博士
アリアーヌ

アラン・ポワレ
アンドレ・カイヤット
アンドレ・カイヤット
ジェラール・ウーリ
クリスチアン・マトラ
ルーイギイ


ミシェル・モルガン
プールヴィル
イヴァン・デニ
ジエラール・ウーリ
サンドラ・ミーロ
 「裁きは終りぬ」(50年ヴェニス映画祭グラン・プリ受賞)、「洪水の前」(54年カンヌ映画祭国際大賞受賞)、 「眼には限を」など、いつも問題作を発表するアンドレ・カイヤット監督の新作で、 今度は、整形美容による手術が、それを受けた女性の心理や性格に非常に大きな影響を与えるという、 はなはだ興味ある題材をとらえている。
 主演者は、名実ともにフランス一の大女優で、依然として人気女優のトップに立つミシェル・モルガン。 彼女はこの映画の前半で、当代随一の美人女優としてはまさに劃期的ともいうべき醜女の役を 演じるが、そのメークアップは実に難事であった。その道の専門家が招集され、プラスチックを使って、 モルガンの顔を徐徐に醜くしていったのである。そのため、モルガンが醜女を演じる部分の撮影中は、 ステージにジャーナリストをはじめ部外者一切の入場が厳禁された。
 またモルガン自身も、撮影期間中はいつもベールで顔を覆ってステージに出入りし、 決してその顔を見せないようにしたので、これがまた非常な評判を呼んだ。劇中、整形手術による醜から 美への転換が実に鮮かに生かされているのも、この映画の大きな話題の一つである。
 モルガンの相手役には、有名なシャンソン歌手でありボードビリアンで、56年ヴェニス映画祭で 演技賞(パリ横断)を受けたプールヴィルが、「レ・ミゼラブル」「学生たちの道」に続いて 我が国の銀幕に登場し、その真価を見せてくれる。
 共演者には、「OSSと呼ばれる男」「女の一生」の二枚目イヴァン・デニ、「エロデ大王」「ロベレ将軍」の イタリア肉体女優サンドラ・ミーロ、「男の世界」「絶対絶命」の性格俳優ジェラール・ウーリほか、 ジュリアン・カレット、ジャーヌ・マルカン、シルヴィ等の名脇役陣が顔をそろえている。
 シナリオはアンドレ・カイヤットと、この映画にも出演する俳優ジェラール・ウーリの合作になる オリジナル脚本で、撮影は「大いなる幻影」「格子なき牢獄」「眼には眼を」「スパイ」などの 老練なクリスチアン・マトラ、装置は「裁きは終りぬ」「洪水の前」のジャック・コロンピエ、 音楽は有名なシャンソン作曲家で「フルフル」「眼には眼を」のルーイギイ、 その他いずれも一流中の一流スタッフが参加している。
 <梗概>  1958年1月29日、パリの警察署では、有名な整形外科医ポスタ博士を射殺し、自首した男の取調べが行われていた。 その男の自供につれて、次のような事実が明るみに出ていった。――
 物語は10年前にさかのほる。ピエール・タルディヴェは中学校の数学教師で、30才になるがまだ独身だった。 性格が弱く、ぶおとこで、無趣味な彼も、最近ようやく結婚する気になり、新聞に妻を求む″の広告を出した。 ただし、配偶者の容貌には何も条件をつけないと書き加えて。そして応募してきた女性たちの写真を見くらペながら、 なかでも一番不器量な、自分にふさわしい女性を選ばうとしている様子であった。
 それから間もなく、ある夫妻が学校に彼をたづねてきた。夫妻には2人の娘がいるが、 長女のマリージョゼは知的で、感情のゆたかな、美しい心をもった25才の女性である。しかし不幸なことに、 みにくい容貌が彼女の婚期をおくらせ、彼女を万事ひっこみ思案な、おずおずとした女にさせていた。 それを気に病んだ両親が、マリージョゼには知らせないで、ピエールの新開広告に応募したわけである。 さっそくピエールは、マリージョゼが勤めているレコード店に出かけ、客になりすまして彼女に近づき、 彼女を音楽会に誘った。彼女もピエールを、妹の婚約披露パーティに招待した。
 妹のヴェロニクは、姉のマリージョゼと違って美人で、派手な性格で、姉が勤めるレコード店の 若い経営者ジュラールと恋仲だった。しかし、実はマリージョゼは心のうちで狂おしいほどに ジェラールを愛していたのだが、彼女の劣等感が彼にそれを打明けることをさえぎり、 彼の方も彼女の秘めた愛情に気づかなかったのである。
 やがて、マリージョゼとピエールは結婚し、水の都ヴェニスへ新婚旅行に出かけた。 だが、ウェニスについたとたん、彼女は夫のケチくさい性格に女の夢を破られ、大きな幻滅を感じた。 一生に一度のロマンチックな新婚旅行だというのに。
 年月がたっていった。彼らは2人の子供をもうけ、上の子は7才になった。マリージョゼは、 自分に与えられた境遇に甘んじ、平凡きわまる家庭生活を受けいれていた。夫のピエールは、 自分の目的を達したことに満足しきって、幸福そのものだった。 ・・・  (96分)

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