地上最笑の作戦

<Il Giorno piu Corto>   (62年伊)

<スタッフ>
製作
監督
脚色


撮影
音楽

<キャスト>
フランコ・フランキ
チッチョ・イングラシア
アヌーク・エーメ
ジャン・ポール・ベルモント
スチュアート・グレンジャー
アントネラ・ルアルディ

ゴッフレード・ロンバルド
セルジオ・コルブッチ
ジョヨルジョ・アルロリオ
ブルーノ・コルブッチ
ジョバンニ・グリマルディ
エンツォ・バルボーニ
ピエロ・ピッチオーニ


ジャック・セルナス
ウォルター・ピジョン
レナート・サルバトーリ
モニカ・ヴィッティ
サンドラ・ミーロ
・・・等、88大スター
 アカデミー賞のほうは、「アラビアのロレンス」にさらわれ、黒白撮影賞と特別効果賞の3部門で受賞するにとどまったが、 ハリウッドの大プロデューサー、グリル・F・ザナックが、全精力を傾けて完成した「史上最大の作戦」は、 うたい文句の44大スター(完成後は48大スター)競演にもうかがえる通り、 そのスケールの大きさではハリウッド大作中でも稀に見るもので、世界中で今もヒットを続けている。 云うまでもなく、これは連合軍のノルマンジー上陸作戦を豊富な金と物量を使って描いたものだが、 このいかにもハリウッド流の大作を徹底的にパロディ化して作られた喜劇が本編 地上最笑の作戦」である。
 原題も THE LONGEST DAY(一番長い日)をもじって、IL GIORNO PIU CORTO (一番短い日)。 「史上最大の作戦」の44大スターに対してこちらは88大スターを売り物にしている。アルファベッド順にアヌーク・エイメ以下 ずらり百人のスターの顔を並べたポスターもそっくりなら、鉄カブトが一つ浜にころがっている「史上最大――」のもう一つのポスターに対しては、 鉄カブトを二つという徹底振りである。
 この映画は、ハリウッドのもう一つの大作「クレオパトラ」の向うを張って、「妖姫クレオパトラ」や、 「トトとクレオパトラ」を作ったイタリア映画人が、 ヨーロッパを舞台にした映画でアメリカ人にばかりかせがれてはヨーロッパ映画人の名折れじゃないか、 とばかりいきおい込んだところから生れたものである。
 それだけに、同じ戦争という素材をあつかいながら、ハリウッド流スペクタクルに対する陽性の喜劇スタイルのなかに、 戦争や英雄を頭から毛嫌いし、そんなものがもたらす感動や壮大さはまっぴら御免という、 いかにもイタリア人らしい健全な庶民性を謳歌している。
 そうした意味で、かつて、アルベルト・ソルディ、ヴィットリオ・ガスマンが主演した「戦争」という映画に似ており、 多彩なスターを配しながらも、イタリア人らしい笑いとバイタリティに満ちた庶民性を代表する主人公2人を設定している。 この2人の主人公に扮するのは、フランコ・フランキ、チッチョ・イングラシアという、いずれもシシリア人のコメディアン。 これに加えて、「エヴァの匂い」で日本に初登場した美貌の新人女優ヴィルナ・リージが、女スパイの役で活躍している。
 なかなかそろわないスター達のごきげんをとりながら、短い時間にできるだけフィルムを回わし、涙ぐましい努
力の末、 これを撮り上げた監督は、新人のセルジオ・コルブッチ。 脚本はジョルジョ・アルロリオ、ブルーノ・コルブッチ、ジョバンニ・グリマルディの3人が書き、 撮影をエンツオ・パルポーニ、音楽をピエロ・ピッチオーニが担当した。


 <梗概>  第一次世界大戦のときのイタリアの物語。当時、イタリアは連合軍がわの一員として、 ドイツがわと戦い、オーストリア・ハンガリーの侵攻を受けて、血みどろの戦闘をつづけていた。 大戦は連合軍がわの勝利に終り、イタリア国民待望の平和が訪れた。
 そのころ、イタリアのある町の軍事法廷で戦争裁判が開かれていた。 被告はコッポラ・チッチョ。フランチェスコと鼻ペシャ" フランコの2人の兵士。 敵前で脱走を企てたという嫌疑で告発されたのだった。
 弁護人は、まず自分が法廷に立つのは本日が始めてである、と前おきして、 被告たちがどのような機会から互いに結ばれたかということから弁論をはじめた。
 コッポラ・フランチェスコはシチリアの生れで、ナベやサラを車に載んで売り歩いている貧しい行商人だったが、 ある日、遠縁のおじのミケーレが死にそうだという知らせを聞いて、おじの家をたずねた。 遺産の分配にあづかろうと考えたのだった。
 おじの家にたどりつくと、余命いくばくもないミケーレが、集った親族たちに遺産を分配しているところだった。 やがて、コッポラの番がきたが、与えられたのは土地でも、家でも、品物でもなく、 おじが拾って育てたフランコという鼻ペシャの男だった。
 フランコはミケーレに死なれて途方にくれていたところだったので、新しい父親ができたことを喜んだが、 コッポラは腹の虫がおさまらなかった。一人でも食えないのに、一人前のおとなのフランコを 息子として引きとりたくなかった。世話役として呪みをきかしていたトーワが秘密結社マフィアの党員でなかったなら、 フランコをおいて逃げ出しているところだった。
 こうして、奇妙な親子ができあがった。フランコは少々頭が足りなくて、コッポラの商売道具の車をひっくり返し、 品物をめちゃめちゃにこわした。コッポラは追いすがるフランコをまいて、ずらかろうとしたが、どこかちともなく トーワがあらわれて、フランコを押しつけた。マフィアの目はどこかに光っているのだった。 ・・・  (91分)

inserted by FC2 system