家族日誌

<Cronaca Familiare>   (62年伊)

 Family Diary
<スタッフ>
製作
監督
原作
脚色

撮影
美術
音楽

<キャスト>
エンリコ
ロレンツォ
エンドリーナ
サロッキ

ゴッフレード・ロンパルド
バレリオ・ズルリーニ
パスコ・プラトリーニ
バレリオ・ズルリーンイ
マリオ・ミッシローリ
ジュゼッペ・ロトンヌ
フラヴィオ・モジリーニ
ゴッフレード・ベトラッシ


マルチェロ・マストロヤンニ
ジャック・ペラン
バレリア・チャンゴッティーニ
サルボ・ランドーネ
 監督バレリオ・ズルリーニは、この「家族日誌」について「この映画は、 私が私自身に支払わなければならなかった負債である」と云う。「激しい季節」「鞄を持った女」で、 その卓抜した力量を見せたこのイタリアの俊鋭にとって、バスコ・プラトリーニの原作「家族日誌」の映画化は、 まだ彼が記録映画を撮っていた頃からの10年越しの念願であった。
 別々に育てられた2人の兄弟と、彼等の祖母をめぐるぎりぎりの肉親愛と、その相剋を描くこの映画は、 どちらかと云えばクラシックな重厚なスタイルの中に、人間存在とその感情の世界を、 あますところなく凝縮した秀作であり、ズルリーニにとっても文句なしの代表作と云えよう。 原作者プラトリーニにとって、「家族日誌」は、自伝的な代表作だけに、愛着も強く、 これが映画化されることには乗気ではなかったが、完成試写を見終った彼は、 あまりの感動にものを云うことも出来ず、たゞズルリーニの手を熱情的に握りしめるばかりであったという。
 キャストは、主人公エンリコに「私生活」「イタリア式離婚狂想曲」のマルチェロ・マストロヤンニ、 その弟ロレンツォにズルリーニに発見され、「鞄を持った女」に出演、その個性とすぐれた演技力で注目された ジャック・ペラン、その祖母に、名優シルビア・ロレンツォの養父サロッキに、「シシリーの黒い霧」の サルボ・ランドーネ、ロレンツォの恋人に、「甘い生活」で清純な、神秘的な少女に扮して印象深い バレリア・チャンゴッティーニという、いずれも個性的な演技派で固めた顔ぶれであり、 特にマストロヤンニの素晴しい好演が注目される。
 スタッフは、撮影を「掟」「若者のすべて」「山猫」等イ、タリアきっての名手ジュゼッペ・ロトンヌが担当、 色彩撮影にイタリア・アカデミー色彩賞を得た見事な手腕を見せており、音楽はヴェテラン、 ゴッフレード・ペトラッシ、脚色はズルリーニと、マリオ・ミッシローリの共同執筆、 製作はチタヌスの社長ゴツフレード・ロンパルドである。
 <梗概>  1945年のある日、夜あけも間近い冷えきった記者クラブの詰所で、若い新聞記者のエンリコは、 フィレンツェからの電話を待ち続けていた。その電話は短いものだったが、予期していた通りの内容を 彼に伝言して切れた。こうして、彼はたった一人の弟ロレンツォの死を知った。重い足どりで部屋に引きあげ、 椅子に腰を下して身じろぎもしない彼の想いは、いつの間にかロレンツォが自分の記憶に入って来て以来の、 色々な事件のことをたどり始めていた。
 彼とロレンツォの母は、ロレンツォを生むと同時に、その不幸な生を終った。 父は戦傷のため入院していたので、ロレンツォは生まれるとすぐ英国貴族の執事であるサロッキの許に里子としてもらわれていった。 エンリコは、祖母に手を引かれて、そのサロッキの家を訪ねた屈辱の日を、幼い日の記憶として忘れることは出来なかった。 こうして、ロレンツォはサロッキの養子として何不自由なく、エンリコは祖母と一緒に貧しく、 別々に育てられた。
 長い年月が過ぎ去った冬のある日、エンリコはロレンツォに偶然4年ぶりで再会した。 エンリコが、貧しい値字工として暮らしながら、ジャーナリストになるために死にもの狂いの勉強をしていた時である。 その夜、エンリコのガランとした下宿を探しあてて、ロレンツォが訪ねて釆た。 口うるさく厳格な養父に反抗して家出をして来た、というのだ。そんな話をしているうちに、はじめのぎこちなさがとれ、 2人の間には暖かい愛情が流れた。2人は食事に出かけ、家賃を払わないために電燈をとめられた部屋で、 一つのベッドに寝た。エンリコは、無理な生活のために身体をこわしているらしく、しきりに咳込んだ。 ロレンツォは、しかし、自分の知らない本当の母のことを知りたがって、しきりにエンリコに尋ねた。 そして、母の死の様子を話すエンリコの声をききながら、ロレンツォは安らかな眠りに入った。 ・・・  (114分)

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