 |
太陽の誘惑＜I Delfini＞ （60年伊） |
|
|
＜スタッフ＞ 製作 監督 シナリオ 撮影 音楽 ＜キャスト＞ フェドーラ アンセルモ エルサ マリーナ マリオ アルベルト ケレ |
フランコ・クリスタルディ フランチェスコ・マゼリ エンニオ・デ・コンチーニ フランチェスコ・マゼリ アジェオ・サヴィオーリ アルベルト・モラヴィア ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ ジョブァンニ・フスコ クラウディア・カルディナーレ ジェラール・プラン アントネラ・ルアルディ アンナ・マリア・フェレーロ セルジョ・ファントーニ トマス・ミリアン ベッツイ・ブレア |
|
|
現在のイタリア映画界で最も売れっ子女優のクラウディア・カルディナーレ（「刑事」「若者のすべて」
「鞄を持った女」）、アントネラ・ルアルディ（「二重の鍵」「歌え！太陽」）、アンナ・マリア・フェレーロ
（「狂った夜」「汚れた英雄」）、仏映画界の新進男優セルジョ・ファントーニ（「ペルシャ大王」「ローマで夜だった」）、
キューバ生れで最近伊映画界でめきめき売り出した二枚目のトマス・ミリアン（「狂った夜」）、
それにアメリカ女優のベッツイ・ブレア（「マーティ」「さすらい」）等の豪華スター陣が競演する話題の新作である。
それに監督のフランチェスコ・マゼリはわずか３０歳の新鋭で、イタリア映画界の "恐るべき子供" として 数年前から注目されッていた天才児である。これまで「解放された兵士たち」（55年）、「時の女」（60年）があり、 この「太陽の誘惑」が長編映画の第３作である。 物語は文学青年のスピーカーで進行するが、シナリオにイタリア文壇の第一人者 アルベルト・モラヴィアが特に加わっているのも、この映画をさらに格諷の高いものにしている。 撮影監督は 「さすらい」「挑戦」などシャープな撮影で知られる名手ジャンニ・デイ・ヴェナンツォ。 音楽は「さすらい」「くち紅」のジョヴアンニ・フスコの作曲で、〝太陽の誘惑″ （男性人気歌手ニコ・フィデンコの唄）のメランコリックで甘美なヒット主題歌が効果的に使用されている。 なお、原名の〝イ・デルフィーニ〟とは、この映画の初めの方でフェドーラ（タラウディア・カルディナーレ）が 説明しているように、もとの意味は昔のフランス王位の推定相続人に与えられた称号であるが、 街の人びとがこの映画の主人公たち、つまり華族や大金物ちの〝二代目たち〟のことを、 フランス王位の継承者になぞらえてそう呼んだからである。 <梗概> 街路にも広場にも、そして街全休に伝統と過去が色濃く染みこんだ街、それがぼくらの街だ。 こうした古都は、中部イタリアではよく見うけられるが、街中がおもおもしい雰囲気に包まれ、 伝統の重圧のもとで、人びとはいまにも窒息するかのように見える。 そこでは、古きものへの反抗の試みも、未来をめざす若者たちの県命な努力も、すべて空しく、 たちまち泡沫のように消 |
え去り、ふたたびもとどおりの退屈と沈滞と無気力の生活に戻ってゆくのだ。
それは去年の冬のことだった。ばくたち上流家庭の子女、つまり街の人びとの呼名にしたがえば 〝二代目たち″のグループは、無気力と倦怠をもてあましながら、ばかげたパーティと情事と 酒にくれる毎日を送っていた。 グループのメンバーには、実業家の息子で自称詩人のぼく、つまりアンセルのほかに、 美貌で放縦なぼくの妹エルサ、侯爵の息子で高級車フェラーリを乗りまわして女の尻ばかり追う アルベルト、莫大な遺産をかかえて酒びたりの生活からアルコール中毒になったぼくの恋人のマリーナ、 グループ最年長の伯爵令嬢ケレ、それにエルサの婚約者で製紙工場主の息子のシシーノがいた。 １１月のある晩、ぼくたちが例によってケレの家にたむろしていたとき、 突然マリーナが発作を起した。急いで医者が呼ばれたが、現われたのは、最近この街に赴任してきた マリオだった。かなり病状の悪化していたマリーナは、早速マリオの診断にしたがって スイスへ転地療養に出かけることになった。 こうして医者のマリオはぼくらのグループに近づき、伯爵令嬢ケレと親しくなった。 医者のマリオは、フェドーラという美しい娘の家に下宿していたが、彼はフェドーラから、 ぼくたちのグループが街中の若者から羨望の眼をもって眺められていることを聞いた。フェドーラもその例にもれず、 自分とぼくたち金持の〝二代目たち″の間にそびえる、眼に見えない高い〝壁″の向うから、 ぼくたちをあこがれの眼で見ていたのだ。 或る晩、街を訪れた劇団の一行を招待して、アルベルトの両親の豪壮な邸宅で、盛大なパーティが開かれた。 もちろんぼくたち〝二代目たち″も出席したが、ケレの招待でマリオがフェドーラを伴って姿を見せた。 パーティは、例のごとく下らないお喋りと空虚な笑い声に満たされていた。とくに、 愛するマリーナのいないぼくはひどく退屈だった。やがて〝暗殺ごっこ″というばかげた遊戯がはじまり、 サロンの灯が消された。たちまちフェドーラに眼をつけたアルベルトは、時間に乗じて彼女をおかしてしまった。 ・・・ (110分) |