<Il Bidone>  (55年伊)

<スタッフ>
製作
 監督
脚色


撮影
音楽

<キャスト>
オーギュスト
ピカソ
イリス
ロベルト

ティタニュス(ローマ)S.G.C(パリ)
フェデリーコ・フェリーニ
フェデリーコ・フェリーニ
エンニオ・フラヤーノ
トゥリオ・ピネリ
オテロ・マルテリ
ニーノ・ロータ


ブローデリック・クロウフォード
リチャード・ベイスハート
ジュリエッタ・マシーナ
フランコ・ファブリッツイ
 監督フェデリーコ・フェリーニの名は、「道」ただ1本であまりにも有名になってしまったが、 「道」は彼の第3作である。「道」に見られた無惨な人生行路と、その行路をつつむ限りなく哀しい詩情とは、 つづく彼の第4作「崖」にもさらに深く掘り下げられて流れている。
 3人のペテン師がぐるになっていろいろなかたりを働く過程が挿話風に物語られているが、フェリ ーニは親分格の老ペテン師やそのまわりに集った人間の弱点を掘下げた作品である。 映画と云う形式が表面的で安価な芸術に終るのをフェリーニは文学に対抗して、映画で人間の姿を描こうとしている。
 老ペテン師は大悪人ではない。ちっぽけな悪い男だ。だから、ペテンにかかった人間がうんと純粋で 彼に善意しか寄せない種類のものだと、ペテン師が動揺するのである。
 シナリオは、フェリーニ自身とすべての作品で彼に協力している名脚本家トゥリオ・ピネリと、 著名作家エンニオ・フラヤーノとの合作である。
 撮影は「戦火のかなた」「にがい米」「恋愛時代」「河の女」そして「道」に至る幾多の名作を手がけている 名手、オテロ・マルテリ、音楽は「平和に生きる」「大いなる希望」「戦争と平和」、そして「道」の 大ヒット・メロディを生んだニーノ・ロータである。
 主演者は、「道」であの忘れえぬジェルソミーナーの面影を世界の人々の胸に刻んだジュリエッタ・マシーナが、 「崖」では、夫がペテン師であるとは露知らず、心から夫を愛しているいじらしい女心を演じており、同じく 「道」に出演してアメリカ人としては珍しく西欧的で繊細な感覚を見せたリチャード・ベイスハート、それから、 「必殺の一弾」「ならず者部隊」等で性格的重厚な演技を買われるブローデリック・クロウフォードが、 特に招かれて背徳的人間の辿る悲劇を深刻に演じている。
 <物語>  ロ−マ郊外のマレンマ街道で、1台の自動草が停り、3人の男が降りた。外套の下に僧服 を着込んだ2人の男と運転手の3人である。彼等は車のナンバーをはずして、ヴァチカン国の 偽ナンバーとかけかえると、再び車に乗り込んだ。
 やがて、その自動車ほ一軒の農家の入口で停った。おづおづと扉のすき間から顔を出した主 婦に向って、3人のうちで一番年配の、司教に化けたオーギュストが、重々しい口ぶりで話し かけた。その話によると、数年前にある男が殺人を犯し、死体と盗んだ財宝とをこのあたりの 土地に埋めた、そしていまわの際に生前の恐ろしい罪をオーギュスト司教に告白して死んだ、 というのである。
 農婦は驚いて3人を畑に案内し、偽司教がさし示す場所を掘ってみると、果せるかな、骸骨が出て来 た。(勿論、彼等があらかじめ用意しておいた筋書だ。)そして、なおも掘りつづけると、骸 骨の傍から箱が現れ、中から宝石類がざくざく出てきた。オーギュストは農婦に、これらの財 宝は死体を埋めた土地の所有者のものとなろうが、その代り、死者の魂の冥福のために5百遍 ミサを唱えて貰わなければならぬ、と云った。宝石がまがい物とは夢にも思わぬ農婦は、村中 をかけ廻って5百回分のミサの代金50万リラを工面して来た。3人は金を受取ると、早々にその場を立去った。
 オーギュストはペテン師仲間の古顔である。間もなく50に手の届こうというこの年まで世間の裏を かきつづけてきた男である。仲間はピカソとあだ名される絵描きくずれの気弱な男と、 運転手のロベルトである。稼ぎは3人で分配し、ピカソは自分の分け前をもらうと、いそ いそと妻のイリスと子供の待つわが家へ帰って行く。イリスは夫がペテン師であるとほ露知らず、 心から夫を愛している。・・・     (115分)

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