死の船

<Das Totenschiff>   (59年独)

<スタッフ>
監督
原作
脚色

撮影
音楽
編集

<キャスト>
フィリップ
ラウスキー
マルティン
ミレーヌ

ゲオルク・トレスラー
B・トレブン
ハンス・ヤコービ
ゲオルク・トレスラー
ハインツ・ペールケ
ローランド・コヴァック
リーゼ・フォイクト


ホルスト・プーフホルツ
マリオ・アドルフ
ヘルムート・シュミット
エルケ・ゾンマー
 この映画は、一通の身分証明書をなくしたばかりに想像もつかぬ数奇な連命を辿るアメリカ生れのある 若い船員の半生を描いたもので「出口なき犯行」「半大人」(未輸人)でけれん味のない劇的センスと、 その視覚的な構成に卓越した手腕を見せたゲオルク・トレスラー監督の最近作である。
 名手ハインツ・ベールケの キャメラは、主人公が自己の存在を求めて港を遍歴する前半に溢れるばかりの詩情を撮し出し、 後半一転し、凄惨な死の船を背景に欲望の葛藤に狂う人間群像を捉えながら、 そのはかなさ、醜くさを冷徹にえぐり出した迫力は異常な感銘を与える。
 また世界の誰もが その正体を掴むことの出来ないメキシコの作家 B・トレヴン(「黄金」「激怒」)の原作の映画化であることも、 この映画に対する興味を一層深めている。
 音楽はローランド・コヴァックが担当し、憂愁に満ちた運命的な旋律を随所に印象づけている。
 出演者は「わたしの可愛い人」「カチューシャ物語」で一躍ドイツ映画界のトップスターとなった、 ホルスト・プーフホルツ、貴重な性格俳優マリオ・アドルフ、ドイツきってのタフガイ、ヘルムート・シュミット、 我が国では初顔ながら素晴らしい天分で将来を楽しませる可憐エルケ・ゾンマ一等である。
 <梗概>  酒と女を紫煙が包むべルギーの港町アントワープ。碇泊中のボルゲーゼ号の船員であるアメリカ生れの フィリップ・ゲイルは帰港を明日に控えた夜、怪しげ女と或るホテルに泊った。 翌朝、フィリップが起きる前に女は彼の上着のポケットから財布を抜き取り、財布にはさんである身分証明書を 無造作に破り捨てた。朝6時、目を覚ましたフィリップは傍に寝ている女を残して、波止場に急いだが、 7時出航のはずであるポルゲーゼ号の姿は見当らなかった。フィリップの上陸中に彼の代りに新しい船員が雇われ、 彼はお払い箱になったのだ。
 置き去りを喰ったフィリップは、すぐ船員相談所に、新しい船員の口を探しに行き、 そこでやっと財布と身分証明書を盗まれているのに気がついた。彼はあわてて探しに戻ったが、 女はおろか、酔っぱらって泊ったホテルすら見つけることが出来なかった。身分証明書を失い、 正規の手続きを経て船員の職を探せなくなったフィリップは、もぐりの船員として乗せてもらうように、 碇泊中の外国船を片っ端から頼み廻ったが、どの船でも断わられ、その挙句、彼の身分証明書紛失を嘆ぎつけた 警察に捕まってしまった。ベルギーの警察は、こうしたケースにほ手慣れたもので、法律上の面倒な処置を避け、 闇に乗じて、フィリップを無理矢理にオランダ国境へ連れ出した。 ・・・  (93分)

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