野ばら

エドゥアルト・ヘーシュ
マックス・ノイフェルト
マックス・ノイフェルト
カール・ライター
ヴァクラフ・ヴィッヒ
ワルター・シュミドール
ハインツ・ノイブラント

ミハエル・アンデ
パウル・ヘルビガー
エリノア・イェンセン
パウル・ベジガー
ヨゼフ・エッガー
ウィーン少年合唱団員

　1956年のハンガリー動乱の際、オーストリアに逃れた避難民の孤児を主人公とし、世界に名高いウィーン少年合唱団の生活を美しいオーストリアの風景を背景に描いた清純な音楽映画である。
　ウィーン少年合唱団は、映画にもたびたび声だけの出演をしているが、実際に画面に現われで演技を見せるのは戦争直後の「歌う天使」についで２度目で、わが国にはもちろんはじめての登場であり、その意味でも注目に値する作品である。
　監督に当ったのほ、オーストリアで戦前から活躍、手堅い作風を見せていたマックス・ノイフェルト。わが国で彼の作品が公開されるのは34年の「青い木の実」以来、２本目である。脚本は、そのマックス・ノイフェルトと、カール・ライターが協力して書き下したもの。撮影は、戦前デュヴィヴィエの「巨人ゴーレム」やトゥルヤソスキイの「咆えろヴォルガ」などで美しい画調を見せたチェコ映画界の名手ヴァクラフ・ヴィッヒが担当、アグファ・カラーによって、オーストリアの美しい風景をおさめている。
　また、ウィーン少年合唱団を中心としたものだけに、劇中、我々の耳に親しいシューベルトやモツァアルトの数々の名曲や、美しいウィーン調の歌が数多く織込まれているが、音楽を担当しているのは新鋭のハインツ・ノイプラント。特にこの映画のため「陽の輝く日」「歌声ひびけば」の２曲を新しく作曲している。作詞はフェリックス・ホルスト。
　出演俳優の中、主役を演ずる子役ミハエル・アンデは、最近の「菩提樹」にも出演しているが、デュヴィヴィエ監督のフランス映画「わが青春のマリアソヌ」撮影の際、見出された少年で同映画以来８本の映画に出演している名子役である。
　団長に扮するパウル・ヘルビガーは「会議は踊る」「ワルツ合戦」「維納物語」の昔から我々に最も馴染み深く、ウィーン情緒の映画には欠くことのできない人で老来ますます円熟の度を加え、戦後も「第三の男」など多くの作品に出演している。
　紅一点のエリノア・イェンセンほ映画より多く舞台で活躍している人で、清純な感じの娘役として人気が高い。その他、舞台出の老練ジョゼフ・エッガー、売出しの二枚目パウル・ページガー、パウル・ヘルビガーの息子、

トーマス・ヘルビガー、典型的なドイツ流の三枚目として古くから活躍しているリヒアルト・アイブナーなどが主役をたすけてみごとな演技を見せている。
なお、この作品のロケは東チロルのヒンターピッヘルで行われた。

　<物語> 　両親のないひとりぽっちのトーニ少年は、動乱のハンガリーから大ぜいの避難民と一しょにオーストリアにたどりついたが、みよりのない彼は収容所行きのパスにも乗り遅れ、途方にくれていた。
　そんな彼に救いの手をさしのべたのは、たまたまそこを通りかかったプリュメル老人だった。トーニほ幸いにも大好きな犬のフロッキとともに、かつてドナウ河の汽船の船長だったという親切な老人にひきとられたのである。こうして老人と少年の楽しい毎日が始った。
　或る日曜日の朝、プリュメル老人はトーニを教会のミサにつれて行った。教会ではウィーン少年合唱団の歌うミサ曲が奏せられていた。まるで天使の声のように大きなドーム一ぱいに響く美しいメロディーはたちまち少年の心をとらえてしまった。魅せられたように合唱団の少年たちの姿に見入るトーニの瞳は憧れに満ちていた。「こん「こんな美しい歌を毎日歌ってすごせたらどんなに楽しいだろう」音楽好きのトーニはひそかに合唱団に入ることを夢見るのだった。
　自分も音楽が好きなプリュメル老人はトーニの歌を聞いて音楽の天分があることをすぐに見ぬき、彼を合唱団に入団させる決心をした。いまほ、本当の子供のように愛しているトーニを手離す事は老人には辛いが、トーニの幸福のためにはその方がよいことを老人は悟ったのである。
　老人に伴われてウィーンの少年合唱団を訪れたトーニは、親切な団長のはからいで、みごとに入団試験もパスした。
　やがて、合唱団での生活がはじまった。トーニは団員の誰からも愛された。しかし、彼にとってただ一つ、淋しいことは、週一度の家族との面会日に、たくさんの贈物を持ってやって来てくれる母親がいないことだった。そうしたトーニを寮母のマリアはやさしく慰めてくれ、トーニも彼女を本当の母親のように慕うのだった。・・・
　　　(94分)

野ばら

＜Der Schonste Tag meines Lebens＞ （57年独）

＜Der Schonste Tag meines Lebens＞　（57年独）