セクシーガール

<Die Halbzarte>   (59年独)

<スタッフ>
製作
監督 脚色
撮影
美術
音楽

<キャスト>
エコーレ・ダサウ
ドット氏
ニコーレの母
ニコーレの父
ナリギッテ
トーマス

カール・エールリヒ
ロルフ・ティーレ
ハンス・ヤコービー
クラウス・フォン・ラウテンフェルト
ハンス・マルティーン・マエウスキー


ロミーー・シュナイダー
カルロス・トンプソン
マグダ・シュナイダー
ヨーゼフ・マインラート
ケルトラウト・エッセラー
アルフレート・コスタス
 この一、二年、喜劇、ミュージカル専科の感を抱かせる、名門ドイツ映画界にあって、 今や代表選手として世界中のスクリーン・フアンをチャームしているのは云わずもがなに 「わたしの可愛いい人」「制服の処女」のロミー・シュナイダーであろう。
 「セクシーガール」はそのロミーの14本目の作品で家族ぐるみ芸術づいたダサウ家の長女ニコーレ―― 根は純情なのにも拘らず、旧来の道徳に真向から対立した告白記を偽作したばかりに、 海千山千のアメリカ人興行師を相手に、心にもないアプレぷりを演じなくてはならない難しい役を、 軽妙且つコミックに演じている。相手役の興行師には、「憂愁」「大人になりたい」で我が国でも 人気のある、アルゼンチン・スター、カルロス・トンプソンが扮し、5本目のドイル映画主演を ロミーとの共演で飾っている。
 その他の出演者では、ロミーの実母で、オーストリアの生んだ音楽映画の傑作「今宵こそは(1931年)」の 主役で知られるマグダ・シュナイダーが、母娘で、しかもロミーの母親役で共演している。 ロミーの妹ブリギッテ役に8百人の応募者の中から発見された14才のニューフェイス、 ゲルトラウト・エッセラーが配役され、可憐なマスクと映画デビューとは思えない達者な演技で将来を楽しませてくれる。
 監督は若手のロルフ・ティーレが担当、ハンス・ヤコービーのシナリオから、 従来のドイツ映画の概念を一掃する斬新、スピーディな演出を見せている。 撮影は「枯葉」で実力を見せたヴェテラン、クラウス・フォン・ラウテンフェルトが責任を負い、 色彩学の権威として「枯葉」「朝な夕な」「わたしの可愛いい人」の色彩指導をしたアルフォルト・アイゼマンと、 美術顧問に迎えたアブストラクト系の意欲的な女流画家ベレ・バッハムとの協力を得、 アグファカラーによる画期的な色彩効果をあげている。
 明るい、超近代的なコメディとしての仕上げには、二度のドイツ映画音楽賞に輝く ハンス・マルティーン・マイエウスキーもその一翼を担い、 ライト・タッチのモダン・ジャズでムードを歌い上げている。
 撮影はウィーンの市内・外で行われ、ウルトラ・モダーンな美術と美しい古都のたたずまいの対象美は、 観る人の眼を大いに楽しませよう。
 <梗概>  ウィーンのダサウ家――と云っでも誰も知らないだろう。先祖に偉い将軍がいたわけでもないし、 フレデリック大王の血筋と云うことでもないのだから。しかしアパート暮しのダサウ家が これから有名にならないとは、誰にも断言は出来ない。何故なら、ダサウ家は夢多く野心的な 芸術一家なのだから。
 父のダサウ氏は郵便局の副局長をしているが、毎夜夕食が済むと、スリラーを書いている。 それどころか、仕事中にお客を窓口に立たせたまま、拡大鏡片手に得体の知れぬ代物の研究推理に熱中することも珍らしいことではない。 母のダサウ夫人は音楽が道楽だ。暇さえあればソナタ風の美しいピアノ曲の作曲に夢中だ。 末娘ブリギッテの批評では、シューベルトより美しい旋律に喜んでいるそうだ。 14才のブリギッテは画家志望だ。彼女の描く画は空想と情熱に満ち、ヴァン・ゴッホそっくりだと 両親は絶讃するのだが、本人にしてみればゴッホと較べられては大いに不満だ。 男の子のトーマスは、軽業が得意だ。今に国立サーカスの団長ぐらいにはなるだろう。 尤もオーストリアには国立サーカスはないから保証は出来ないが。
 さて、長女ニコーレのことを忘れてはいけない。年は20才、花ならば咲きそめたところだが、 本屋の売子をやりながら美しい詩を書きまくっている。そよ風に木の葉が揺れて、 乙女心が悲しくむせぷのだ。年頃の彼女には、いろいろとほかにも夢があるのだろうが、 羞みやの二コーレからは聞くすべもない。
 ある日、父のスリラーも、母のラヴソングも、そして二コーレの詩までも、出版社から 丁寧な断り状をつけて送り返されて来た。ダサウ家にとっては暗い一日だ。 だが、こんなことは初めてではない。しかし、と皆は考える。こんなことを続けていたのでは 一家の芸術意欲は消沈するばかりだ。
 二コーレには思い当ることがあった。天才か才女かは知らないが、16才の小娘が書いた 「赤裸々な恋の記録」と云うのが大当りし、エコーレの店でも毎日何ダースと売れているではないか。 セックス、それこそが現代支配者なのだ。思い切ってお下劣な芝居を書いてやろう―― 何年も大入りが続くようなのを、と二コーレは決心した。但し、著者の体験と云うことになるのだから 匿名にしなければならない。・・・   (91分)

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