誰が祖国を売ったか!

<Canaris>   (55年独)

<スタッフ>
監督
 原作
脚本
 撮影
音楽
 装置


<キャスト>
カナリス提督
  アルトフ大尉
  ハイトリッヒ
  ホル大佐
 

アルフレット・ワイデンマン
エーリッヒ・エベルマイヤー
ヘルベルト・ライネッカー
フランツ・ワイマイヤー
ジークフリート・フランツ
ルドルフ・ツェヘトバウワー



O・E・ハッセ
アドリアン・ホーフェン
マルチン・ヘルト
ヴォルフガング・ブライス
 嘗ての名門ドイツ映画は、戦後久しく鳴りを秘そめていたが、先頃公開きれて 大好評を拍した「08/15」とこれに続く「戦線の08/15」のあたりから、 ようやくドイツ映画の真価を発揮した作品に接することが出来るようになった。
 「08/15」正・続篇はドイツ軍隊の内幕を暴露した風刺劇であったが、 この映画はそれと趣きを異にした、全篇、緊張感の連続するサスペンス・ドラマとなっている。
 即ち、第二次世界大戦のドイツにあって防諜機関の長官であったカナリス提督が、 が、ナチ・ドイツ独裁政権の強制下にあって、 終始、戦争防止の信念を抱きつつ、祖国を救うために、 独裁者ヒットラー暗殺計画事件に参加して、刑場の落と消えた苦悩の半生を凄惨な迫力で 実話風に描き上げたものである。
 篇中、数多く往時の戦争記録映画を巧みに挿入し、戦争映画らしい迫真力と 風格も兼ね備えて、この映画を大きなスケールを持った戦争映画としている。
 原作は、エーリッヒ・エベルマイヤーのベスト・セラーズ、 これを現在ドイツ映画界の第一線の脚本家ヘルベルト・ライネッカーが脚色し、 次代のドイツ映画を背負う新鋭監督アルフレット・ワイデンマンが演出を担当している。
 以下、撮影フランツ・ワイマイヤー、音楽ジークフリート・フランツ、 装置ルドルフ・ツェヘトバウワーという一流のスタッフで構成されている。
 主演のカナリス提督には、「ベルリン物語」や「戦線の08/15」の他に アメリカ映画「暁前の決断」「大空輪」や更にヒチコックの「私は告白する」などで、 特異な個性と重厚な性格演技を既に知られている、ドイツの代表的な性格俳優 0・E・ハッセが扮し、 内面的な渋い演技で、菰独な悲劇の将軍を好演している。
 その他に、「スイスの嵐」「大罪人」「サルツブルグの季節」の好漢 アドリアン・ホーフェン、女間諜イレーネに扮する「最後の橋」「ドミノ」の新星 パルバラ・リュチンク、「08/15」のマルチン・ヘルト、ヴォルフガング・ブライス、 ベーター・モスバッヘル等々、多彩な演技者か適役を得て好演している。
 <物語>  ドイツの防諜機関からスペインに特派されていた特務員フェルナンデスはロンドンの軍事省に赴き、 英国にいた特務員から重要書類を入れた革カバンを受取った。それは、最近ドイツで盗まれた ドイツの艦隊造船計画の重要書類であった。 書類は直ちにアルトフ特務員を通じて、ベルリンにいる防諜機関長カナリス提督に手渡された。
 或る日、カナリスが自宅で、特務員フェルナンデス・アルトフと会食しているところへ 旧友である新聞の編集長ハルベックが救いを求めに来た。彼はカナリスを仇敵とする親衛隊長 ハイトリッヒによって罷免され、更に逮捕される怖れがあったからだ。
 カナリスは、この旧友に偽旅券とスペインの査証を与えることを約束した。 やがてハルベックはスペインに逃れようとしたが、国境で逮捕され、ハイトリッヒの手で人質となり、 収容所に拘禁されてしまった。ハイトリッヒは直ちに部下に命じてハルベックの部屋を 家宅捜査させ、令嬢のイレーネを連れて来させた。そしてハイトリッヒはイレーネに カナリス機関にとり入って、機関内のことを逐次親衛隊に密告すれば、 父親のために便宜を図ってやると脅迫した。
 窮地に立ったイレーネは仕方なくこの申し出を承諾した。早速ハイトリッヒの副官 ペックマンはイレーネをカナリスと協力しているトレンチ男爵の経営する トランスコンチネンタル会社に連行した。偶然これを見ていたアルトフはカナリスに知らせたが、 カナリスは平気で何もきかずにイレーネを傭い、首席秘書に命じて、 ハイトリッヒに知らせてやりたい資料だけを知らぬ顔してイレーネにつかませてやれと命じた。
 一方、アルトフはイレーネの立場に同情していたが、やがてそれがいつしか 恋に変化してゆくのを自覚した。間もなく、アルトフは新式銃の設計図を入手するため パリに特派され、問題の設計図の写真を撮影することに成功した。
 しかし敬礼の手違いから発見されて逮捕されたが、設計図の写真は無事救い出すことが出来た。 ・・・
    (112分)
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