飾り窓の女

<La Fille dans la vitrine>   (61年仏伊)

<スタッフ>
監督
原作
原案

脚本



撮影
美術
音楽

<キャスト>
エルス
コリー
フレデリック
バンサン

ルチアノ・エンメル
エマヌエレ・カスート
ルチアノ・エンメル
ロドルフォ・ソネゴ
ルチアノ・エンメル
ビエル・パオロ・パソリーニ
ビニチオ・マリヌッチ
ルチアーノ・マルティーノ
オテロ・マルテリ
アレキサンドル・ヒンキス
ロマン・ブラド


マリナ・ブラディ
マガリ・ノエル
リノ・パンチュラ
ベルナール・フレッソン
 オランダの首都アムステルダムには、今なお、飾り窓の中で客を待つ夜の女の街が存在している。 夜ともなればひとときの歓楽を求めて集い寄る男たちで賑わうこの街の一隅にもささやかなドラマがくりひろげられる。 この映画はベルギーの炭坑に働く二人の男とこの街で春を売る二人の女との数日間をドラマティックに 描き上げたもの。実際にアムステルダムの街でロケ撮影を行なっただけあって、この飾り窓≠フ街の実態が 生々しい迫力をもって描き出されているのも、この映画の見どころの一つであろう。
 監督は記録映画的手法で知られたイタリア映画界の中堅ルチアノ・エンメル。有名な新進小説家 ピエル・パオロ・パソリーニなどとともに自ら脚本も書いている。台詞はフランスの有名な作家ジョゼ・ジョバンニ。
 撮影を担当したオテロ・マルテリはイタリアのネオ・レアリズムの名作をいくつか手がけている名手。 美術は新鋭のアレクサンドル・ヒンキス。音楽は「女の一生」のロマン・ブラドである。
 "飾り窓の女たち" に扮するのは最近ますます成熟した女の美しさを見せているマリナ・ブラディ、 マガリ・ノエルの二人。その相手役をフランス・ハード・ボイルドのリノ・バンチェラ、 および新人のベルナール・フレッソンが演じ、ブラディ=フレッソン、ノエル=バンチェラの組合わせに対照の妙を見せている。

 <梗概>  バンサンがオランダのバンデブルクにやって来たのは、そこの炭鉱で働くためである。 故国のイタリアで貧しく暮らす母親と義妹たちのために、彼は、柄にもない炭鉱夫を志し、 国へ帰る前にひとかせぎ……と考えたのだ。
 だが、炭鉱は、彼にとってやはり働きよいところではなかった。各国から流れてきた荒くれ男たも、 洒と女だけ
が楽しみという男たちの中で、彼は孤独だった。そして、さらに不運なことには、彼が初めて入坑し、 最前線≠ニよばれる地下の坑道で、石炭にいどんだその日、落盤が起ってしまったのである。 彼は幸い落盤の下敷きになることはまぬがれたものの、もう5年もここに働いているというフランス人フレデリックとともに、坑道にとじこめられた。
 生き埋め二十数時間。それは恐怖と不安との戦いだった。新鮮な空気を坑内に送りこむパイプは働いていたが、 それもいつとだえるかわからない。岩に足をはさまれた仲間一人を眼の前にしながら、暗闇の中にただ待つだけの時間を、 バンサンとフレデリックは地上に思いをはせながら語り合ったた。
 地上……それは女を意味した。アムステルダムに行けば、つかの間の"恋" が買える。 現実的な快楽主義者フレデリックにとって、それは、この労働の報酬そのものだった。
 「土曜に出られたらアムステルダムへ行って、すげえグラマーを掘り出そうぜ」
 彼等は望み通り、土曜日の午後やっと救い出された。フレデリックは持ち前の性格からすぐに快活さをとりもどしたが、 バンサンは思いがけぬこの事故のショックも手伝って、もう二度とこの坑道には入らない決心をしていた。 すぐにも故国イタリアへ帰るつもりである。
 だが、その前に、フレデリックとの約束があった。身のまわりのものをつめた鞄を手にした彼は、 フレデリックとともにアムステルダムへ向かった。
 アムステルダムのワルメーストラートといえば、世界にも珍らしい公娼の街として知られている。 女たちは広い飾り窓のある部屋で男たちの視線をまともに受けながら、買い手を待つ。 客がついた時は窓にカーテンを引き、次め間へ、という段どりである。・・・   (102分)

inserted by FC2 system