遙かなる国から來た男

<Le Pays d'ou je viens>   (56年仏)

<スタッフ>
監督
原作
脚色


撮影
美術
音楽

<キャスト>
ジュリアン・バレール
ペルスヴァル
マリネット
ローラン

マルセル・カルネ
ジャック・エマニュエル
マルセル・アシャール
ジャック・エマニュエル
マルセル・カルネ
フィリップ・アゴスティニ
ジャン・ドゥアリヌウ
ジルべエル・ベコー


ジルペエル・ベコー
ジルペエル・ベコー
フランソワーズ・アルヌール
クロオド・ブラッスール
 クリスマス・イブの宵に、遙かなる遠い国からアルプスに程近い小都会にやって来た男が、 町のビヤホールの楽団のピアニストとその恋人の仲をめでたく結ぶなど、 幾多の幸福のプレゼソトを残してまたいづこともなく遥かなる国へ帰って行くまでに、 とんだ人違いが生みだす数々の微笑ましい出来事を、色彩も鮮かにユウモラスな雰囲気のうちに 描きだす巨匠マルセル・カルネ監督初の色彩作品。
 第一回作品の「ジェニイの家」から「嘆きのテレーズ」を経て「われら巴里ッ子」にいたるまで、 リアリスティックな、どちらかといえばノワール(暗黒)な作風を本領としていたカルネ監督にとっては、 この作品は全く毛色を異にした軽快なタッチを持ち、「おかしなドラマ」(未輸入)の 系列に属するものと見られる異色作。
 「ドン・ジュアン」(未輸入)などの脚本を執筆している新進ジャック・エマニュエルの アイディアになるオリジナル・ストーリイを、カルネ監督を中心にエマニュエルと、 劇作家として知られ映画界でも「たそがれの女心」など数々の作品の脚色を手がけている マルセル・アシャールの3人が共同で脚色、更にアシャールが劇作で洗練された台詞の筆を加えている。
 「過去をもつ愛情」「幸福への招待」とヴェルヌイユ監督の作品にたて続けに出演していたが、 今度珍らしくカルネ監督と始めて顔を合せるフランソワーズ・アルヌウルに、 今フランス・シャンソソ界にあっては、イヴ・モンタンやアンドレ・クラヴォらを遥かにしのいで ナンバー・ワンの人気を誇るジルべエル・ベコーの2人が主人公に扮する。 ベコーはこれが映画への初出演にも拘らず、一人二役という大役を見事に演じわけ、 デビュウ作とは思えない達者なところを見せている。
 この2人をめぐって「パリはいつも唄う」(未輸入)のマドレエヌ・ルボオ、 「悪の塔」のガブリエロ、名優ピエール・ブラッスールの御曹子で最近スクリーンにデビュウしたばかりの クロオド・ブラッスール、「一六勝負」(未輸入)のガビイ・パッセ、「血の仮面」の ジャン・トウルウに「居
酒屋」で少女時代のナナに扮して名子役ぶりを発揮したシャンタル・ゴッジと ジャン=ピエール・プレメェの2人の子役が出演している。
 なお、ベコオはこの映画で唄う四つのシャンソソを始め、映画全篇の音楽をも自ら作曲するという 多才ぶりをみせ、撮影は「幸福への招待」のフィリップ・アゴスティニが、美術は 「怪僧ラスプウチソ」のジャン・ドゥアリヌウが夫々担当している。

 <梗概>  見わたすかぎりの銀世界、そのなかをただ一筋地肌のあらわれている山道を一人の男が急ぎ足に 歩いている。男のふりかえる後の万から一台の豪華なキャディラックが見る見る近ずいて来ると、 追われているらしいその男は、たまたま道端に停車していたトラックの中に姿を消してしまった。
 いつしか動き出したトラックにゆられながら眠りこんでしまったその男がふと気づいたところは サンパルフェの町中だった。折しもクリスマス・イヴのこととて、町は賑わっていたが 何よりも彼を驚かせたのはそのトラックの運転手をはじめ、街で行き会う人たちが、 彼をよく識っているかのように親しげに話しかけて来ることだった。 しかし、街をしばらく歩くうちに、町一番のビヤホール〃ユニヴェルセル〃の前を通りかかり、 硝子戸ごしに中をのぞいて見て、やっとその理由がのみこめた。そこの小さなオーケストラの ピアニスト、ジュリアン・バレールが彼に生写しなのである。町の人たちは彼をてっきり ジュリアンと思いこんでいたのだ。
 ピアニストのジュリアンは時には教会のコーラスの指揮もするほどの腕達者で、 好んで彼のピアノを聞きに来るファンも町には少なくなかったが、こと恋愛に関しては全く不器用で、 前から思いを寄せているそこの給仕女マリネットにも、自分の思いをうちあけることができずに、 ただ一輪のエーデルワイスの花に思慕を託して、それを毎夜、彼女の窓の雪にさして空しく帰って来るのだった。 ・・・  (98分)

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