女の一生

<Une Vie>  (58年仏)

<スタッフ>
監督
原作
 脚色

撮影
美術
音楽

<キャスト>
ジャンヌ
ジュリアン
フルシュヴィル
ジルベルト
ロザリー

アレクサンドル・アストリュック
ギィ・ド・モーパッサン
ローラソ・ローダンバック
アレクサンドル・アストリュック
クロード・ルノワール
ポール・ベルトラン
ロマン・ヴラド


マリア・シェル
クリスチャン・マルカン
イヴァン・デニー
アントネラ・ルアルディ
パスカル・プティ
 19世紀自然主義文学の名作として余りにも有名なモーパッサンの「女の一生」を映画化したもの。 この大作を映画用に脚色したのは監督のアレクサンドル・アストリュックと 「愛の迷路」などきめこまかい心理描写に優れた腕を示しているローラソ・ローダンバックの2人。 長い原作の前半だけをとり上げ、夫の死までを女主人公の回想という形で描いている。
 監督のアストリュックは当年35才の新鋭ながら、有名な文芸作品の映画化という難かしい仕事にとりくみ、 マリア・シェルの好演を得て、文学とはまた違った生々とした人間像を描き出すことに成功している。
 なお、この作品は、わが国で公開された彼の作品としては、 52年にルィ・デリュック賞をはじめ7つの賞を獲得した異色作「恋ざんげ」についで2本目である。
 撮影はジャン・ルノワールの甥で名カメラマンとして名高いクロード・ ルノアール。北フランス、ノルマンディ地方の美しい風光をみごとに色彩のカメラにおさめる一方、 こうした文芸作品には珍らしく、カメラ・アングルに特徴ある動きを見せている。また、美術は「嘆きのテレーズ」 「居酒屋」「罪と罰」など文芸ものを手がけて来たベテラン、ポール・ベルトラン、音楽は「ロミオとジュリエット」 「しのび逢い」のロマン・ヴラドがそれぞれ担当している。
 主役の女性ジャンヌには「居酒屋」以来、こうした女を演じさせては絶妙の演技を見せるマリア・シェル、 その夫ジュリアンには「チャタレイ夫人の恋人」「素直な悪女」などこのところめきめき売り出して来た新し い型の二枚目クリスチャン・マルカンが抜擢されている。また、その2人をたすけて「乙女の館」「追想」のベテラン、 イヴァン・デニー、「赤と黒」のアントネラ・ルアルディ、「サレムの魔女」の新進女優パスカル・ プティなどの豪華メンバーがずらりと顔をそろえて名演を競っている。
 <物語>  ジャンヌ・ダンディュウは、北フランス、ノルマンデーの海辺にほど近いプープリ工の邸 に、優しい父母と、幼いときからの友達でもある女中のロザリーにかこまれ、何不自由ない 生活を続けていた。彼女はしあわせに育ったどの娘もがそうであるように、世間知らずの夢 見がちな乙女だった。いわば自分の将来に漠然とした幸福を期待していたのである。その幸福の 鍵をにぎるもの…それは夫だった。彼女はいつか自分の生涯をゆだねるべき甥の出現を 心ひそかに待ちうけていたのである。
 そうした或る日のこと、ふとした偶然が、一人の青年を彼女と結びつけた。いつものよう に舟遊びに出て、思いがけなく突風に会い、危うく溺れそうになって漁師に助けられた、ず ぶぬれの彼女を、たまたま居合わせた青年が、わざわざ馬車で家まで送ってきてくれたのである。
 ジュリアン・ド・ラ・マールと名のるその青年はその地方の名家の出で、3ヵ月ほど前に パリから帰ったばかりということだった。そして、その言葉にいとも似つかわしい彼の容姿 動作と親切な態度は若いジャンヌの心をひきつけるに十分だった。
 このことがあってから、父親同志が知り合いという気安さも手伝って、ジュリアンはしげ しげと、ジャンヌの家を訪ねるようになった。愛されている‥・という思いがいつしか彼女を夢 見心地にしていた。いつか、ジュリアンは結婚を申込むに違いない…。彼女の漠然とした期 待はだんだんとはっきりした形となって行った。 <BR> やがて、その日がやって来た。ジュリアンが父親に結婚したいと申し出たのである。2人 の結婚式が行われたのは美しく晴れた日、参列した人々の祝福を受けながら教会を出 たジャンヌの心はそよ風を受けて美しくなびく白いヴェールのように幸福にふくらんでいた。 ・・・ (88分)

inserted by FC2 system