<Le Trou>   (60年仏)

<スタッフ>
監督
原作
脚色・台詞


撮影
美術

<キャスト>
ロラン
ジョー
マヌ
"和尚"
ガスパル

ジャック・べッケル
ジョゼ・ジョバンニ
ジャック・べッケル
ジョゼ・ジョバンニ
ジャン・オーレル
ギスラン・クロッケ
リノ・モンデリニ


ジャン・ケロディ
ミシェル・コンスタンタン
フィリップ・ルロワ
レーモン・ムーニエ
マルク・ミシェル
 「偽われる装い」「幸福の設計」「七月のランデブー」(未輸入)「肉体の冠」 「現金に手を出すな」「モンパルナスの灯」など、いくたの優れた作品を生み、 現代フランス映画界でも最も大きな存在の1人だったジャッグ・べッケル監督は、 1960年2月、惜しまれつつ世を去ったが、その直前まで、 演出に精根をかたむけていた遺作がこの「穴」である。
 この映画の原作は異色作家ジョゼ・ジョバンニの同名の小説で、1947年、 実際に、サンテ監獄でおこった脱獄事件を、ドキュメンタリー風に描いたもの。 この小説を読んだベッケル監督が映画化を決意、きまざまの悪条件をこえて完成した 文字通り畢生の大作である。
 脱獄をはかる5人の囚人に扮する出演者たちがいずれも既成の映画俳優でないことも この映画の大きな特色といえよう。
 とくに、主役ともいうべきロラン・ダルパンを演じるジャン・ケロディは、 実際にサンテ監獄の脱獄事件に参加したという経験の持ち主。 その他の出演者たちも、ルロワがサラリーマン、コンスタンタンがスポーツ選手、 ムーニエがテレビ演出家、ミシェルだけが演劇俳優という多彩な顔ぶれ。
 べッケルはこれらの出演者を使って、既成俳優ではとても表現できないような 迫力をもり上げるのに成功している。
 撮影のギスラン・クロッケは「嵐の女」「怪盗ルパン」「夜と霧」(短篇)などの名手。 美術のリノ・モンデリニも「怪盗ルパン」でべッケル監督と組んだベテラン装置家である。 また、いわゆる映画音楽を用いず、自然音だけで効果を上げているのも成功の一因ということができよう。
 <梗概>  サンテ監獄の中でも、特に重要犯罪人だけを収容する獄房の一つに、 4人の男がとじこめられていた。占領時代に食糧の配給切符を盗んで投獄され、 何度もの脱獄計画の失敗で刑期を延ばされる一方のロラン。脱走兵として刑に服している ジョー。乱闘の最中に誤って3人の男を殺してしまったマヌ。 獄中生活では一番の先輩で和尚というあだなのボスランの4人である。
 狭い獄房の中で、ボール箱を組立てるだけの単調な毎日のくりかえしの中で、 彼らは、自分たちが、やがて重罪裁判所に出廷しなければならないのを知っていた。 そして、それが決して、自分たちに有利に展開しないことも心得ていた。 待つことにたえかねた4人の男たちは脱走を決意した。 智謀と実行力にとんだロランをリーダー格に、大胆にして細心な計画がたてられた。
 そのとき、第5の男が彼らの部屋に入ってきた。まだ年若い自動車のセールスマン、 ガスパルである。彼は年上の妻と美しい義妹との三角関係から妻とあらそい、 誤って妻を傷けたのだった。
 脱獄をはかる4人は一瞬緊張した。この若い男を仲間に入れてよいものか。 1人でも団結を乱すものがいたら、絶対成功しないことは明らかである。 が、彼らは結局ガスパルを信頼することになった。仲間がふえることは危険でもあるが、 計画実行にはその方が都合がよい。ガスパルを加えた仲間5人は、 いよいよ実行にとりかかった。
 まず、獄房の片隅の床板をあげ、コンクリートの床に穴をあける。 穴をあけるといっても道具がそろっているわけではない。ベッドの金具をとりはずし、 巡視の眼をくぐって、音を立てぬように一寸二寸と掘ってゆくのである。  ・・・    (123分)

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