ブラック・タイツ

<Un Deux Trois Quatre!>   (60年仏)

<スタッフ>
監督:
撮影:
美術:
音楽:

(解説者:


テレンス・ヤング
アンリ・アルカン
ジョルジュ・ヴァケヴィッチ
マリウス・コンスタン指揮
     コンセール・ラムルウ
モーリス・シュヴァリエ)
 フランスの70ミリ映画第一作で四部からなるバレエ映画。
 監督が「熱砂の舞」のテレンス・ヤング、撮影が「忘れえぬ慕情」のアンリ・アルカン、 美術総監督がジョルジュ・ヴァケヴィッチ、音楽演奏はマリウス・コンスタン指揮の コンセール・ラムルウ。
 このほか各部ごとのスタッフとキャストは、以下の通りで、 各部分をつなぐ解説者としてモーリス・シュヴァリエが特別出演している。  (140分)

ダイヤモンドを食べる女 La Croqueuse des Diamants

<スタッフ>
 原案: ローラン・プチ
      アルフレ・アダン
 音楽: ジャン・ミシェル・ダマズ
 装置・衣裳: ジョルジョ・ワケビッチ
<キャスト>
 ダイヤモンドを食べる女: ジジ・ジャンメール
 配達夫: ディルク・サンダース

 ローラン・プチ、アルフレ・アダンが協力して作ったオリジナル作品で、振付けはもちろん、 ローラン・プチ。
 プチの愛妻ジジ・ジャンメール扮する主人公はダイヤモンドが大好き。 それも身につけるのではなく、食べてしまうのだ。彼女はパリの中央市場に巣くうスリ団の親分、 部下のかせぎのダイヤモンドを食べるのが日課のようになっている。
 ある日、一人の配達夫が新開店のカフェに腰掛けをはこびこんだが、大きくて入りきれない。 仕方なく壁に孔をあけたところが、そこがスリ団のかくれ家。はじめて出会った配達夫と女親分は やがて愛し会うようになる。
 配達夫はその愛情を通して、人間の幸福はダイヤモンドではなくキャベツの中にこそあることを さとらせる。若い2人が自動車で旅立つフィナーレ車に満載したキャベツがダイヤのように きらきら輝いているようだ。
 ローラン・プチが戦後、独立して苦労した頃からの協力者で心進作曲家の J・M・ダマズが作曲を担当。ジャンメールが歌を一曲歌っているのも、バレエとしては 型破りのおもしろさである。この曲の作詞はレーモン・クノー。ジャンメールの吹込んだ レコードは51年にディスク大賞を受けたヒット盤。

陽気な未亡人 Deuil en 24Heures

<スタッフ>
 制作: ローラン・プチ
 音楽: モーリス・ティリエ
 装置・衣裳: アントニ・タラーべ
<キャスト>
 未亡人: シド・シャリース
 若い男: ローラン・プチ
 夫: ハンス・ファン・マネン

 フランスの著名な作曲家で、映画音楽家としても「嘆きのテレーズ」「罪と罰」などを 担当していたモーリス・ティリエの美しい音楽をプチの振付で視覚化した楽しいバレエ。 常にバレエを楽しく面白くと念願しているプチの意図がよくうかがえる作品といえよう。
 馬車に乗った一組の夫婦。女は黒い服を夫にねだって買わせる。その箱を持ったまま カフェのテラスに降り立つと、そこにいた若い男が女に近づき、なれなれしく話じかける。 怒こる夫。たちまち口論から喧嘩となって、あげくのはてはお定りの決斗。 翌朝の決斗で夫はあっけなく倒され、前日買った黒い服が役に立つことになってしまった。
 その夜、女は夫を殺した若い男に招待される。悲しむのはもう一日でたくさん。 夫はまた見つければよい、と黒い喪服をぬぎすてて踊り出す。
 この主役を踊るのが、珍しくも、アメリカのシド・シャリース。若い男に扮する ローラン・プチとは初めての顔合わせ。なお、オランダ出身の男性舞踊手ハンス・ファン・マネンが 殺される夫の役を踊っている。
 モダンな舞台美術、衣装はスペインの画家アントニ・クラーベの手になるもの。 いま世界の美術界でも最も高く評価されている画家クラーベのデザインは、パリでの上演の 際も絶賛をあびた。

シラノ・ド・ベルジュラック Cyrano de Bergerac

<スタッフ>
 原作: エドモン・ロスタン
 音楽: マリウス・コンスタン
 装置: バ サ ル テ
 衣装: イブ・サン・ローラン
<キャスト>
 シラノ: ローラン・プチ
 ロクサーヌ: モイラ・シアラー
 クリスチャン: ジョルジュ・レーク

 エドモン・ロスタンの余りにも有名な戯曲をローラン・プチの振付でバレエ化したもの。 例の鼻で知られるシラノは美しい従妹ロクサーヌに恋をしているが、同僚のクリスチャンが 同じく彼女に心を寄せているのを知り、その恋文の代筆をしてやる。 真情のあふれたその恋文にうたれた彼女がクリスチャンを愛するようになったのを、 じっと見ているシラノの苦しみ…
 やがて戦いがはじまり、出陣したクリスチャンは戦死してしまう。悲しみの余り、 ロクサーヌはシラノのなぐさめをもふりきって、修道院へ。15年後、戦いに重傷を負ったシラノは、 苦しい息の下から、ロクサーヌにはじめて恋を打ちあける。
 もちろん、シラノを寅じるのはプチ自身。ロクサーヌには、かつて、 プチと共演したこともあるイギリスのモイラ・シアラーが扮して、難かしい文芸作品のバレエ化を みごとに成功させた。なおクリスチャンを踊るのは、アメリカ出身で53年以来プチの協力者として 活躍しているジョルジュ・レーク。
 音楽はフランス第一といわれる管絃楽団コンセール・ラムルウをひきいて名演を見せている、 指揮者マリウス・コンスタンの作曲。またスペインの美術家バサルテの装置、 ディオールなきあとのフランス・モード界の代表的デザイナー、イブ・サン・ローランの衣裳が、 抽象化された美しさで、観る人々を魅了する。

カルメン Carmen

<スタッフ>
(オペラ "カルメン"より)
 音楽: ジョルジュ・ビゼー
 装置・衣装: アントニ・クラーぺ
<キャスト>
 カルメン: ジジ・ジャンメール
 ドン・ホセ: ローラン・プチ
 エスカミリオ: へニング・クロンスタム
 密輸団の女: ジョゼット・クラビエ

 美しい旋律とドラマティックな構成でよく知られているビゼーのオペラ 「カルメン」をプチの手でバレエ化した作品。戦後プチの振付けた作品の中で 最も大当りを記録したもの。いままでのバレエには見られない大胆な振付けで話題をよぴ、 49年6月パリでの初公演のときは賛否両論でパリ中が大わきにわいた。
 翌年のニューヨークでの公演でも大きな反響をまきおこしたと伝えられている。
 物語はほとんどオペラそのまま。煙草女工のカルメンが喧嘩をして、ドンホセが カルメンの誘惑に負けて密輸団の仲間入り、さらにカルメンが闘牛帥エスカミリオに血道を 上げたことから、ホセが嫉妬のあまり、彼女を殺すラストまで「カルメン」のハイライト集とも いえる楽しいバレエ。音楽もビゼーの原曲をそのまま用い、よく知られているメロディーを 全部聞かせてくれる。
 カルメンがジャンメール、ホセがプチというコンビも、最も好評だったキャスト。 この他にエスカミリオをデンマーク生まれの男性舞踊手へニング・クロンスタムが、 密輸団の娘を、これまた一流のバレリーナ、ジョゼット・クラビエがそれぞれ踊っている。
 美術、衣裳はこれもクラーベの手になるもので彼の傑作の一つといわれている。

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