審 判

<The Trial>   (62年仏)

  
<スタッフ>
製作
監督
原作
脚本

撮影
音楽

<キャスト>
ジョゼフ・K
パーストナー
レニ
弁護士
ヒルダ
グルバック夫人
ビットル
主任書記
ブロック
検察官

アレクサンドル・サルカン
オーソン・ウェルズ
フランツ・カフカ
オーソン・ウェルズ
アントワーヌ・チェダル
エドモン・リシャール
ジャン・ルドリュ


アンソニー・パーキンス
ジャンヌ・モロー
ロミー・シュナイター
オーソン・ウェルズ
エルザ・マルチネリ
マドレーヌ・ロバンソン
シュザンヌ・フロン
フェルナン・ルドゥ
アキム・タミロフ
アルノルド・フォー
 1883年プラハに生まれ、当時、まったく認められなかったいくつかの小説を書いて、 1924年、ウィーンで死んだ小説家フランツ・カフカは、死後、40年を軽た今日、 爆発的なブームをまきおこし、その評価は高まるばかり。 彼ののこした作品群は、二十世紀文学に大きな影を投げかけている。
 この映画はカフカが20年に完成した代表的長篇小説「審判」を、「市民ケーン」「マクベス」の 鬼才オーソン・ウェルズが映画化したものである。ウェルズはかねてから、カフカに興味を抱き、 とくに「審判」の映画化を考えていたが、61年末、プロデューサー、アレクサンドル・サルカンとの間に意見の一致をみて、 62年初めから、撮影にとりかかった。
 ウェルズとカフカという2人の鬼才の出会いは、映画化が発表されたときから、 世界中の注目を集めていたが、完成された作品は期待にたがわず、みごとを完成度の中に、 カフカの世界をえがき上げた名作となった。ウェルズ自身も「市民ケーン」を上まわる会心の作と語っているが、 映画化不可能といわれたこの原作を完全に視覚化し、その中に恐るべき現代の戦慄をもりこんだこの映画は、 まさに映画芸術の一項点を示すものといってよいだろう。
 物語の主人公はジョゼフ・Kなる平凡なサラリーマン。ある朝、突然、身におぼえのない罪によって 逮捕状態にあると宣告される。彼は弁護士をたのみ、法廷であらそおうとするが、彼を裁く最高審判者は、 ついに姿を現わさず、Kはその巨大な力にほんろうされるばかり。そして、ついに、あるたそかれ、 彼は無惨に殺されてしまう。
 悪夢のようなこの物語こそ、実は現代そのものの表象であり、 したがってその現実性をさらにスクリーンの上に表現したこのウェルズ作品は、 そのまゝ現代人の感性に訴える鋭さをもっている。
 出演者たちは、いずれもアメリカ、ヨーロッパの一流演技者たち。まず、主人公のジョゼフ・Kには アメリカ出身の人気スター、アンソニー・パーキンス、彼をめぐる女性たちを、フランスの名女優ジャンヌ・モロー、 ドイツのトップスター、ロミー・ミュナイダー、イタリア出身の国際女優
エルザ・マルチネリなどが、 それぞれ演じ、はからずもヨーロッパ一流女優競演の形となった。
 また、弁護士を演じるのはオーソン・ウェルズ自身。ほ かにマドレーヌ・ロバンソン、 シュザンヌ・フロンなどのフランス中堅女優、名優フェエルナン・ルドゥ、 国際的な演技男優アキム・タミロフ、イタリアの中堅アルノルド・フォアなど、助演陣は空前の豪華さを誇っている。

 <梗概>  「法」という城門がある。田舎から出てきた男がそこに入ろうとして門番にとめられた。 彼は死ぬまでそこに入れなかった。しかも、彼のほかには、だれもそこへは来なかった。 そこは彼のための「法」の城門だったからである。男は自分の証明書をついに手に入れることができなかった。
 ジョゼフ・Kは平凡な男である。会社では副部長の職にある。その彼のアパートに、 ある朝早く検察官が2人の刑事とともにやってきた。 意外にもKは罪に問われた。だが、何の罪かは検察官も知らない。それから以後、 彼の不用意な言葉はすべて彼らにノートされた。たどえば、Kの女友だちバーストナーのことなど――。 彼女はナイトクラブにつとめる女性だが、Kがなんでもわびるくせには腹を立てた。 アパートの女主人グルバックはオロオロ、Kについてまわる。会社の人間まで彼を監視しにやってきている。
 Kの会社はまるでロボットが働く大工場である。Kを訪ねて従妹のアーミーがきた。もう、 伯父にまで彼のことは伝わっていた。Kは上役から女に気をつけろといわれる。たった16の娘ではないか!
 Kはアパートに帰るとちゅうの広っぱで、バーストナーの女友達で足の悪いピットル嬢が バーストナーのトランクを運ぶのに難渋しているのに出会った。Kの事件でおじけづいたグルバック夫人が、 彼女を追い出したのである。しかし、Kは気の毒なピットル嬢の荷物運びを、ホンのちょっと手伝うことしかできなかった。
 夜、Kは劇場から検察官に呼び出されて、大群衆のつめかけた裁判所の法廷に出向いた。 予審判事が開口一番、「君はペンキ屋だな―」といった。 ・・・  (119分)

inserted by FC2 system