奥様ご用心<Pot-Bouille> (57年仏伊) |
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<スタッフ> 監督 原作 脚色 撮影 音楽 <キャスト> オクターヴ・ムーレ エドゥアン夫人 ベルト・ジョスラン オーギュスト・ヴァブル マリイ・ピション |
ジュリアン・デュヴィヴィエ エミール・ゾラの原作より ジュリアン・デュヴィヴィエ レオ・ジョアノン アンリ・ジャンソン ミシェル・ケルベ ジャン・ウイーネ ジェラール・フィリップ ダニエル・ダリュウ ダニイ・カレル ジャック・デュビイ アヌーク・エーメ |
巨匠ジュリアン・デュヴィヴィエが、「赤と黒」の名コンビ、ジェラール・フィリップ及びダニエル・ダリユウと
初めて組んだ上に、「リラの門」のダニイ・カレル、「モンパルナスの灯」のアヌーク・エーメ等の
豪華キャストを配して監督に当った最新の大作である。
物語は、性的に腐敗堕落したパリの中産階級を鋭くえぐり、痛烈に諷刺したエニール・ゾラの 1882年の原作をもとに、知的で機転のきく美青年、つまり「赤と黒」の主人公ジュリアン・ソレルに似た 野心家のパリ征服行状を、いきいきと興味深く描き出したもので、台辞は「望郷」「愛情の瞬間」 などの第一人者アンリ・ジャンソンが各登場人物をみごとに性格づけて書いている。 撮影は「赤と黒」「ノートルダムのせむし男」のミシェル・ケルベ、音楽は「パリの空の下セーヌ は流れる」「現金に手を出すな」のジャン・ウィーネ(彼はこの映画のためにワルツの主題曲を作曲 している)、装置は「天井桟敷の人々」「リラの門」のレオン・バルザック、衣装は「オルフェ」「夏の嵐」の 名デザイナー、マルセル・エスコフィエが担当するなど、一流中の一流が揃って参加している。 主演者は、久しく映画界を遠ざかっていたジエラール・フィリップが再出発の意気に燃え、 「モンパルナスの灯」に引続いて我が国の銀幕に登場する。この映画のフィリップこそまさに当り役の二枚 目なので、スクリーン一杯に、自由自在に好漢ぶりを発揮して活躍する。 フィリップの相手役には、この映画によって58年度の最優秀フランス女優にえらばれ、仏映画界 のオスカーともいうべきヴィクトワル賞" を獲得したダニエル・ダリユウの比類ない優雅さと大女 優の風格が見ものであるし、また「リラの門」以来めきめき人気の上ったダニイ・カ |
レルの可憐さと
お色気の味がすばらしい。
その他の共演者には、「火の接吻」で清楚な美しさを示し「モンパルナスの灯」ではフィリヅブと 共演して神秘的な香気を画面にただよわせたアヌーク・エーメ、「嘆きのテレーズ」で弱々しい夫を演 じたジャック・デュビイ等が好演技を見せるほか、傍役端役に至るまでフランス映画界の名優たちを 網羅して、この映画を明るく楽しく、そして絢爛たる話題作にしている。 <物語> 19世紀の末期、文化の爛熟しきった平和なパリである。 貪欲で横暴なジョスラソ夫人ほ、婚期を迎えた2人の娘を持参金なしで片づけるために、毎日の ようにサロンからサロンヘと駈けずり廻っていた。当時のフランスでは、持参金のない娘は、殆んど 良家に嫁ぐ資格がなかったのである。 ある晩、1人の魅力あふれる好青年が、ジョスラン家と同じアパルトマンの、知合いのカンパルド ン家に寄宿してきた。その名はオクターヴ・ムーレで、彼は2年ばかり地方の生地屋で修業した後、青雲の 志を抱いてパリに上京してきたのである。彼は知的で教養もあり、才気煥発な上に、女性を魅了する 天性の武器を元手に、女性の力によって立身出世を考えている野心家であった。 オクターヴは、カンバルドン氏の助力によって、エドゥアン夫人の経営する著名な服地店 "婦人の幸福" に番頭として勤めることができた。エドゥアン夫人は、近づきがたいほど冷静な 美貌の持主で、自分より25も年上で病身の夫がいた。・・・ (116分) |