太陽がいっぱい<Plein Soleil> (60年仏伊) |
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<スタッフ> 製作 監督 原作 脚本・台詞 撮影 音楽 <キャスト> トム・リプレイ フィリップ マルジュ |
ロベール・アキム レイモン・アキラ ルネ・クレマン パトリシア・ハイスミス 「才人トマス・リブレイ」より ルネ・クレマン ボール・ジェゴフ アンリ・ドカエ ニーノ・ロータ アラン・ドロン モーリス・ロネ マリ・ラフオレ |
フランス随一の人気俳優アラン・ドロンが超ドライな悪徳の美青年を演じる。
しかも、そのメガフォンをとるのが、「禁じられた遊び」「居酒屋」「海の壁」の大監督
ルネ・クレマンという顔合せ、これだけでもすでにわれわれの期待と想像をかき立てるに充分な最高の魅力を、
たたえた競合せである。
原作は、イギリスの女流作家パトリシア・ハイスミスの、探偵文学賞受賞作品「才人リプレイ君」で、 アランが演じるのは言うまでもなくその主人公トム・リプレイ。美青年で、小器用な才能なら 何でもめぐまれているが悪のコンプレックスを内に秘めた恐るべきドライな若者である。 ナポリに近い一漁村、真夏の陽光がさんさんと降りそそぐ海上で、その親友を一突きに刺し殺し、 一片の悔恨すらなく、悪徳の命ずるままに更に恐ろしい罪に突進してゆく美青年アラン・ドロン。 複雑な現代悪に生きるこの青年像は、アラン・ドロンにとって全く新しい、本格的にドラマチックな 役柄であったが、アランはトム・リプレイの人間像に生き生きとした新しい息吹きを吹きこむことに成功した。 クレマンの演出はダイナミックなボリュームにみち、圧倒的なシーンの連続のうちに、 登場人物を浮彫にしながらサスペンスにみちた物語を展開させて行く。 脚本は小説家で、ヌヴェール・ヴァーグの人々の間で新進脚本家として最も高く評価されている 「二重の鍵」のポール・ジェゴフとルネ・クレマン。 音楽は、イタリヤ映画「道」「カビリアの夜」などで名曲を残すニーノ・ロータ。 撮影は「恋人たち」「いとこ同志」の美しくさえたカメラによって今や第一人者の名高いアンリ・ドカエといった 最高のスタッフで、殊にドカエのカメラは一層のさえを見せて、ダイナミックに躍動する 真夏の太陽につつまれたイタリーの海岸風景を素晴らしい迫力で捉えている。 配役は、ドロンの他に、彼の親友で彼に裏切られる金持青年の役に、「死刑台のエレベーター」の二枚目 モーリス・ロネが扮して、巾のある演技を見せている。しかし、一番の注目は、 何といつても新人マリ・ラフオレの出現である。彼女はルイ・マル監督が発見した秘蔵の新人で、 その作品「かかし」に主演する予定だったが、マルと同時に彼女にほれこんでしまったクレマンが 一足先に |
彼女をこの大作にデビューさせたもの。フランス的な智的さのなかに、
情熱的なスペインの血の流れをひく今年19才の個性ゆたかな美貌の持主で、最もその将来を期待されている。
<梗概> トム・リブレイは全くおだやかな感じの青年だった。年は24だが少年のように純真な顔、 長いまつげにおおわれた美しく澄んだ瞳。一見気弱そうに見えながら、どことなく自信にみちた、 見るからに良家の子弟らしい上品さ。その上、単に美青年というだけでなく、 仲間が集まれば必ず彼等の人気をさらうことも知っていたし、彼のうちにはありとあらゆる才能が ゆたかに具わっているようだつた。 要するに、トムという男は、その美貌と才能とが誰からも愛される若者だったのである。 ただ一つ欠点と云えばなぜか一定の職業に落付けず、時折ブラプラしていることがあったが…… ある日、その彼に思いがけないチャンスが降って来た。中学時代の友だちだった フィリップという男の父親に会い、絵の修業にイタリーに行ったきり帰ってこない息子を 連れ戻しに行ってくれないかと頼まれたのである。人の財布でぜい沢な旅行が楽しめる上に、 まだ見たことのないイタリー見物が出来るというので、トムは二つ返事でこの依頼に応じた。 こうしてトムは、ナポリに近いモンジベロの漁村で、フィリップに会った。 フイリップは、大ぜいの仲間に取りまかれて自由で楽しい生活を送っていた。 その中には、彼の恋人で、マルジュという美しい女もいた。 トムはフィリップともすぐ親密になった。真夏の太陽がさんさんと降りそそぐモンジベロの村には、 トムの憧れであった無為で享楽的な生活があった。 幾日もたたぬうちに、彼はどうしてもこの生活から離れたくないと考えるようになった。 しかし、マルジュだけは、始めからトムを嫌い、警戒した。トムの存在はフィリップと自分の将来に 暗い影を投げていることを、彼女は女の勘で感じていた。 一方、フィリップの父は、トムから何の返事もないのにしびれをきらし、これ以上、 面倒を見ることは出来ないと言って来た。トムは考えた。これ以上、フィリップの父を利用出来ないとしたら…… そのときは…… ・・・ (118分) |