黒いチューリップ

<La Tulipe Noire>   (63年仏伊西)

<スタッフ>
監督
原作
脚色

撮影
音楽
編集

<キャスト>
ジュリアン・ド・サン=プルー
ギヨーム・ド・サン=ブルー
カロリーヌ
侯爵夫人

クリスチャン・ジャック
アレキサンドル・デューマ
クリスチャン・ジャック
アンリ・ジャンソン
アンリ・ドカエ
ジェラール・カルヴィ
ジャック・デザヌー


アラン・ドロン
アラン・ドロン
ヴィルナ・リージ
ドーン・アダムス
 これは、撮影なかばで中止された「マルコ・ポーロ」にかわって、クリスチャン・ジャック監督が、 同じくアラン・ドロン主演で撮りあげた70ミリ大作。1万2千のエキストラ、4千の騎兵の他、多勢の軽業帥、 スタンドマンを使い、製作費は最終予算の6億5千万フランを越えて、結局10億を突破したという 文字通りフランス映画始まって以来のスケールを持った話題作である。
 物語の背景は、フランス大革命の前夜。民衆の苦しみをよそに贅沢三味にふける多くの貴族達を襲い、 その財宝を奪って神出鬼没の怪盗がいた。人呼んで黒いチューリップ″実は、社交界に入りびたって 貴族の仲間のような顔をしているギヨームという男のこと。彼にはジュリアンという爪二つの弟があり、 ふとしたことで兄の身代りをつとめたことから、ジュリアンは、兄の死後も黒いチューリップ″として革命のために斗う、 というストーリイを、才腕クリスチャシ・ジャックが、徹底した痛快無比のアクションで撮り上げている。
 この映画の話題中の話題と云えば、このギヨームとジュリアンという性格の全く違う二人の兄弟を、人気スター、 アラン・ドロンが、初めて二役で演じ分けていることであり、頬に大きな傷跡のメーキャップをしたり、 危険なアクション・シーンをすべてスタンド・インなしで通したり、ドロンの張切りぶりはを見はらせるものがある。
 黒いチューリップ″をめぐる2人の女、侯爵夫人にドーン・アダムス、革命に対する情熱を燃やす若い娘カロリーヌに、 「エヴァの匂い」以来、人気上昇のイタリア映画のホープ、ヴィルナ・リージ、その他エイキム・タミロフ、 フランシス・ブランシュ等が出演。スタッフは、脚色をクリスチャン・ジャック、アンリ・ジャンソン、 ポール・アンドレオータが共同執筆。文豪アレキサンドル・デューマの原作は、 ここではほとんどオリジナルに近いまでに書き直されている。そして、撮影は「シベールの日曜日」の名手、 アンリ・ドカエ、音楽はジェラール・カルヴィの担当である。
 <梗概>  1789年フランス革命の前夜。民衆の苦しみをよそに貴族達は贅沢三味にふけっていた。そうした彼等を 風を如く襲って財宝を奪う神出鬼没の謎の怪盗がいた。人呼んで黒いチューリップ″。民衆たちの間では、 尊敬と憧れをもってその名が口にされていた。しかし、その正体は誰も知らなかった。
 その頃、ギヨーム及びジュリアン・ド・サン=ブルーという2人の兄弟があった。2人の外観は、爪二つ と云える程似ていたが、その気質、性格は全く反対だった。弟のジュリアンは、やさしく繊細な心の持主であり、 同時に、民衆とともに自由と平等の革命のためにつくす熱情的な気質も持っていた。
 一方、兄のギヨームは、冷酷なエゴイストであり、ルーションという小都市を支配する反動的な ド・ヴィゴーニュ侯爵にとり入って、持ち前の才気で貴族達の信頼を得、浮気な侯爵夫人をもなびかせていた。 しかし、黒いチューリップ″の正体とは、意外にも彼だったのである。ギヨームにとって、 これは単に自分の私腹を肥やす行為であるにすぎなかった。
 かねて侯爵夫人に想いを寄せ、ギヨームの恋がたきとなった警察部長ラ・ムーシュは、 ギヨームを嫉妬していたが、同時に、黒いチューリップ″の正体はギヨームではないか、 と云うことを見抜いていた唯一の人間だった。しかし、誰も彼の云うことを信じようとしなかった。
 なんとかしてその正体をあばいてやろうと、ひそかにチャンスを狙っていたラ・ムーシュは、 ある日まんまと黒いチューリップ″を罠にかけた。思わぬ不覚をとった黒いチューリップ″は、 ラ・ムーシュの部下達を斬りふせ、ようやく包囲を脱することが出来たが、ラ・ムーシュの卑劣な攻撃によって 左の頬を斬られそこには醜い傷跡が残った。
 これは、ギヨームにとっては致命的なことで、彼はもうルーションの貴族社会には顔出し出来ない。 出せば、傷あとによって彼が黒い・・・  (115分)

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