絶対絶命<Le Dos au Mur> (58年仏) |
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<スタッフ> 製作 監督 原作 脚色 撮影 音楽 <キャスト> グロリア ジャック イヴ・ノルマン モーヴァン ジスレーヌ |
フランソワ・シヤヴアヌ エドウァール・モリナロ フレデリック・ダール フレデリック・ダール ジャン・ルドン ロベール・ル・フェブル リシャール・コルニュ ジャンヌ・モロオ ジェラール・ウリ フィリップ・ニコオ ジャン・レフェーブル クレール・モリエ |
無名の20代のシネアストが、さっそうと現れて、スクリーンに全く独創的な新風を吹き込んで行
く。それが最近のフランス映画界である。エドゥアール・モリナロも、この新しいジェネレーション
を代表する1人だ。
29才の彼は、これまでにいくつかの短篇をつくったことがあるきりだが、若 々しい意欲的な試みと同時に、これが処女作かとおどろくほどの演出技術を早くも身につけている。 この映画は、フレデリック・ダール作の「私たちを禍から救ってくれ」(1957年フランス探偵 小説大賞受賞)というサスペンス・ドラマから取材したものであるが、非情な感覚、メカニックな画 面処理に、モリナロの特異な近代性がうかがわれ、従来のサスペンスものとはちがった冷い現実の肌 ざわりを感じさせる。 深夜のパリの街…………部屋の中に横たわる若い男の死体それを運び去る1台の自動車 ………… 無気味な冒頭のシーンである。音楽もなければ、言葉もない。全く無言の、ながいながい このシーンから、深い謎を秘めて物語りは大胆に、そして非情に展していく。謎の脅迫状に おびえる人妻、からくりが更にからくりを生み、謎、々、々、の不気味な日々が、 やがて恐ろしい事件に突き当るまで、モリナロは直截な表現でこのサスペンスを人間心理劇の深さに まで高めている。 撮影は、「青い麦」「埋もれた青春」「夜の騎士道」「リラの門」等の名作を 手がける名手ロベール・ルフェブル。音楽ほ、主に短篇映画の作曲に専念していたシヤ ール・コルニュで、この映画のシャープな感覚とよくマッチした味を出している。 出演は、我国に紹介された作品の数こそ少いが、フラ |
ンスでは舞台と映画に確固たる人気を築いた
ジャンヌ・モロオと、ジュラール・ウリ、それに新人フィリップ・ニコオの3人にジャン・ルフェー
ブル、クレール・モリエ等、独特の個性をもった人々が登場して、
新しい傾向のサスペンスものにふさわしい雰囲気をかもし出している。 <物語> 深夜のバリの街。1台の自動車が停り、屈強な男が建物の中に姿を消す。誰にも見られなかった。 2階の一室。若い男の死体が横たわっている。屈強な男は身廻晶を手早くカバンに詰め込み、死体を 絨たんにくるんだ。 包んだ死体をかついだ男はそれを自動車に積み込むとそのまま一目散に串を飛ばし、 ある工場の建築場の前で停まる。誰にも見られなかった。 死体を処置するのに、男はちゃんと計画をたてた。先ず死体をいれたコンクリートのブロックをつ くる。そして、ブロックを積重ねてコンクリート塀をこしらえるのだ。厚い塀が出来上ると、もう誰 にもわからない。 深夜の不気味な作業は首尾よく終る。 さて、話はここで、3ヵ月前のある夜のことにさかのぼる。少壮実業家の妻グロリアに脅迫 状が舞込んだ。夫にかくれて恋愛していたノルマンとの仲が誰かにさとられたのだ。・・・ 脅迫状は、10万フラン送れ、さもなくば夫にばらすぞ、という。 はじめ、グロリアは誰かのいたずらだろうとこれを黙殺した。ところが、第2、第3、と脅迫 状はつづいて舞こみ、要求する金額も次第にその額がかさんで、遂に50万フランという莫大な ゆすりとなる。・・・ (97分) |