モンパルナスの灯

<Montparnasse 19>  (58年仏)

<スタッフ>
製作
 監督・脚本
原作

 撮影
美術
音楽
編集

<キャスト>
モジリアニ
ジャンヌ
ベアトリス
ロザリイ
画商モレル

ラルフ・ボーム
ジャック・ベッケル
ミシェル・ジョルジュ・ミシェル
「モンパルナスの人々」より
クリスチャン・マトラ
ジャン・ドーボンヌ
ポール・ミスラキ
マルグリット・ルノワール


ジェラール・フィリップ
アヌーク・エーメ
リリー・パルマー
レア・パドヴァーニ
リノ・ヴァンチュラ
 貧困、病苦、絶望……。押しよ せるありとあらゆる苦難とたたかいながら、最後まで自分の芸術をまもりつづけ、ついに1920年 モンパルナスに36歳の生涯をとじた呪われた画家″モジリアニは、近代の画家のうちでも 最も劇的な人物として名高いが、この映画はその彼を主人公としたミシェル・ジョルジュ・ミシェルの小説 モンパルナスの人々″をもとに、彼をめぐるさまざまの愛とその悲劇的な死とを描いたものである。
 この映画は最初、マックス・オフェルスによって計画され(タイトルに「マックス ・オフェルスに捧ぐ」と明記されている)、有名なシナリオ・ライター、アンリ・ジャンソンとの協力 によって脚本が書かれたが、 オフェルスの急死によって、ジャック・べッケルにバトンが受けつがれ、 その意志によって、大幅に脚本の改変が行われたため、同監督と脚本家のアンリ・ジャンソンの間に 激しい論戦がたたかわされ、結局、ジャンソンが自分の名をタイトルから削ることになったといういわくつきの作品で ある。
 それだけに、この映画に対するベッケル監督の意気ごみははげしく、スタッフの選定から、キャス ティング、台詞、演技の隅々にいたるまで、神経を用い、いわば一画家の伝記小説から、生々とした 人間像を描き出し、その愛と死の物語を感動的にもり上げることに成功している。
 主役のモジリアニには「夜の騎士道」「男の世界」以来、久々のジェラール・フィリップが扮し、 この悲劇の主人公にふさわしい、みごとな演技を示している。また彼をめぐる3人の女性をそれぞれ 「火の接吻」「恋ざんげ」のアヌーク・エーメ、プリュッセル国際映画祭で女優演技賞を得た ドイツ出身の国際スター、リリー・パルマー、「限には限を」のレア・パトヴァニが演じ、 三人三様の美しい愛情をくりひろげている他、、「スパイ」のジュラール・セティ、 「殺人鬼に罠をかけろ」のリノ・ヴァンチュラ、シャンソン歌手としても有名なマリアンヌ・オスワルドなど、 異色ある演技者が好演を示している。また、このところ、
新進女優としてめきめき売り出して来た ヨリ・ベルタンが可憐な好演を見せ、シャンソン歌手として売出しのロベール・リパが好三枚目ぶりを発揮している。

 <物語>  モジリアニが死んで約40年、天才画家としての彼の名は誰知らぬ者はなく、その絵は驚くべき高値を呼んでいる。 だが、死後のこうした名声とは正反対に彼の生涯は苦難の連続だった。貧窮、世間の無理解、 そしてそれらをまぎらすためのアルコールの洪水……。既に胸を冒されていた彼の身体はそうした生活に だんだんとむしばまれていった。
 しかし、その中で彼を助け、その芸術を支えたものはいくつかの温かい愛情だった。 英国生れのベアトリスもその一人だった。彼女は実生活では全く無能力なこのイタリアの画家を心から愛していた。 打たれることもあった。発作的に首を絞められそうになることすらあった。だが、彼女は、 すさみ果てた毎日の生活にも少しもそこたわれない天使のように純粋な魂を彼の中に見ていたのである。
 モジリアニのかつての恋人、ロザリイも、昔の愛情を失っていなかった。 モソパルナスの一隅に小さなバーを営んでいる彼女は時おり描いた画をたずさえて訪れるモジリアニに、 酒をつつしみ健康に留意するよう説きつけては、食事を与えるのだった。いわば、ロザリイは彼に 母親のような愛情を抱いていたのである。
 モジリアニの画才を認める唯一の画商、スポロウスキイも、画商と画家という関係を越えて なにくれとなく彼の面倒を見るのだった。スボロウスキイもまた、この子供のようた大人モジ" を愛していたのだ。
 そうしたモジリアニに或る日、新しい恋が生れた。相手の女性はジャンヌ・エビュテルヌという画塾の生徒だった。 モジリアニは街で彼女を一眼見た瞬間、その清純な美しさに打たれしまったのである。 ・・・
    (108分)

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