軽 蔑

<Le Mepris>   (63年仏伊)

<スタッフ>
製作
監督
原作
脚本・台詞
撮影
音楽

<キャスト>
カミーユ
ポール
プロコシュ
F・ラング監督
フランチェスカ

カルロ・ポンティ
ジャン・リュック・ゴダール
アルベルト・モラビア
ジャン・リュック・ゴダール
ラウール・クタール
ジョルジュ・ドルリュー


ブリジット・パルドー
ミシェル・ピッコリ
ジャック・パランス
‥本人
ジョルジア・モル
 美しく貞淑な妻が、突然ある日、夫に対して激しい軽蔑を感じた。 夫は、妻の気持が刻々と自分から離れてゆくのを感じながら、全くその理由をつかむことが出来ない。 彼が、失われたきずなを取りもどそうとしてあがけばあがく程、2人の人間の距離は、 底しれぬまでに深まってゆく。
 さり気ない日常のふとした瞬間に、不意にその姿を見せる人間関係のむき出しの断絶、 恐怖にも似た違和感、その決定的瞬間を真正面から見すえながら、愛の断層に鋭く斬り込んで、 そら恐しいまでの強烈な印象を与える秀作である。
 監督は、ジャン・リュック・ゴダール。云わずと知れた仏映画きっての鬼才であり、 イタリア文壇の第一人者アルベルト・モラビアの原作を自ら脚色し、 ローマとカプリ島でのオール・ロケーションで撮り上げた初めてのシネスコ・カラー作品。
 この映画の話題は、なんと云っても主演に人気絶頂のブリジット・パルドーを起用したことであり、 ゴダール=B・Bの顔合せの魅力に加えて、舞台俳優のミシェル・ピッコリ、 「シェーン」の毅し屋で印象深いアメリカの性格俳優ジャッグ・パランス、 そして往年の名監督フリッツ・ラングの同名出演と、異色のキャスティングも見ものである。
 原色を多用して、目もくらむような鮮やかな色彩画面を作り出しているキャメラは、 ゴダールとは「勝手にしやがれ」以来のコンビである名手ラウール・グタール。 音楽は、「突然炎のごとく」「かくも長き不在」のジョルジュ・ドルリューの担当。
 なお、この「軽蔑」は、62年度の「女と男のいる舗道」に続いて、 63年度のカイエ・デュ・シネマのベスト・ワンに選ばれており、フランス新人批評家賞も合せて凌っている。
 <梗概>  ――寝室。
 静かな安らいだ雰囲気のなかで、素裸になってベッドの上に横たわったカミーユは夫のポールに 問いかける。
 「私の脚は好き?」
 「好きファよ」
 「腿は?」
 「うん。好きだ」
 カミーユは、次々と自分の身体の部分をあげて、ポールに問いかける。 膝は? お尻は? 髪の毛は? 乳房は? わたしの乳房と乳首とどちらが好き?……
 カミーユがそんなことを聞くのは、不安のせいではない。充実した満足感がはかせる、それは、 ため息のようなひとり言なのだ。
 ――撮影スタジオ。
 翌朝、ポールは、アメリカ人のプロデューサー、ジュレミー・プロコシュと会った。 倣慢で、したたかで、鋭い眼つきをした鋼鉄のような男だった。フリッツ・ラング監督で、 目下撮影中の「オデュッセイ」の脚本を書き直してくれ、というのが、プロコシュの依額だった。 ポールは、映写室でラッシュ・フィルムを見せられた。 フリッツ・ラング監督とジュレミーの意見は、正面から対立し、かんしゃくを起したジュレミーは、 ラング監督の目の前で小切手を書き、ポールのポケットに押し込んだ。額面は1万ドル。ポールは、 この仕事を引き受けた。
 昼になって、カミーユが撮影所にポールを訪ねて来た。プロコシュは、 ポールとカミーユを自分の家に誘った。スポーツ・カーの隣席にカミーユをせきたてて乗せたプロコシュは、 後の席に乗ろうとしたポールを、冷やかにはねつけた。
 「後の席は窮屈だ、タクシーで来給え」うむを云わせぬ威圧的な語調だった。・・・   (102分)

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