地下室のメロディー

<Melodie en Sous-sol>   (63年仏)

<スタッフ>
監督
原作
脚色


撮影
音楽

<キャスト>
シャルル
フランシス
ジネット
ルイ
プリジット

アンリ・ヴェルヌイユ
ジョン・トリニアン
アンリ・ヴェルヌイユ
アルベール・シモナン
ミシェル・オーディアール
ルイ・パージュ
ミシェル・マーニュ


ジャン・ギャパン
アラン・ドロン
ヴィヴィアンヌ・ロマンス
モーリス・ビロー
カルラ・マルリエ
 ジャン・ギャバンとアラン・ドロンというまさに映画ファン待望の顔合せを実現させたのは、 先頃ギャバン、ベルモンドを組ませた「冬の猿」を発表して話題を呼んだアンリ・ヴェルヌイユ。 「ヘッド・ライト」「過去を持つ愛情」等印象深い秀作で知られた巨匠だが、この作品は彼にとって、 「女は一回勝負する」の線を押し進めた、そして一まわりも、二まわりもそのスケールを大きくした 犯罪映画であり、冒頭ギャバン、ロマンスのからみでしんみりとした味をただよわせた後、 カジノの金庫を狙っての完全犯罪に乗り出してからは加速度的にサスペンスを盛り上げ、 ぎりぎりのラストまで完全に観客を巻き込んで離さないその手腕は、まさしく巨匠の名に恥じない冴えかたである。
 4月に行われたフランス映画祭に代表団の一員として来日したアラン・ドロンは、 「ギャバンと共演出来たことでこの作品は私にとって一生忘れることが出来ないものになるだろう」と語ったが、 彼の張切り振りは作品の中の好演技のみならず、通風管にもぐったりケーブルを伝ってエレベーターの屋根に とびうつったりする危険な撮影を、自ら希望してスタンド・インなしでやってのけ、 ギャバンの気をもませたというエピソードにもうかがえる。この2人の主演者達についてはあらためて言うまでもない。 只、ギャバンが、「赤い灯をつけるな」以来久びさのきわめつけのギャング役でその堂々たる貫禄と 枯れた演技の魅力を横溢させていることをつけ加えたい。
 その他のキャストでは、ギャバンの古女房にヴィヴィアンヌ・ロマンス、カジノの踊り子にカルラ・マルリエ、 ドロンの義兄ルイにモーリス・ビローが扮している。
 スタッフは、撮影に「鉄格子の彼方」「ヘッド・ライト」の名手ルイ・パージユ、 ファンキイなモダンジャズのフィーリングをきかせた音楽は「戦士の休息」のミシェル・マーニュ、 そしてシナリオは、「濁流」「殺人鬼に罠をかけろ」
のミシェル・オーディアール、これにヴュルヌイユと 「現金に手を出すな」の原作者で、暗黒街のスラングの権威アルベール・シモナンが参加している。

 <梗概>  55年の刑を終ってシャバに出て来た老ギャング、シャルルは、まっすぐ古女房ジネットの待つゴーチェ街の 我が家に足を向けたが、昔なじみの街はすっかり面影を失って、やたらに近代的な高層建築が乱立している。 やっと我が家にたどりついたシャルルは、ジネットのあたたかい微笑に迎えられた。昔と変らぬ家具、 ブランディー、それにジネットは彼が捕まる前に残しておいた金や、家の移転のさいもらった補償金などをそっくり貯金していた。 この金を元手に、南仏に小さなホテルを買って2人で静かに余生を送ろうというのが彼女の計画だった。
 しかし、シャルルにはケチな安ホテルの亭主でおさまる気はなかった。
 「おれにゃ、安月給とりからゼニをしぼり取る趣味はねえ」
シャルルはあっさりそう云った。彼は豪州のキャンベラあたりに出かけて悠々自適の生括を送るために、 最後の大仕事を目企んでいたのだ。もうこのあたりで足を洗って、というジネットの願いを振りすてると、 翌日さっそく彼は昔の仲間マリオを訪ねた。マリオは高血圧で赤血球がへり、足の自由もきかぬ病人となって、 かっての情婦に経営させるトルコ風呂で隠居暮らしをしていた。
 「せっかくだが、俺は今度の仕事は下りるぜ」
病気がすっかりマリオを弱気にしていた。
 そんあ彼にシャルルはむかっ腹をたてたが、マリオの出した1枚の賭博場の図面を見て、その周到んさ手口にうなった。 カンヌのバルム・ビーチにあるカジノの儲け金をそっくりいただこうという大仕事だ。 ・・・  (121分)

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