目撃者

<Mefiez-vous Fillettes>   (57年仏)

<スタッフ>
監督
原作
脚色
台詞

撮影
音楽

<キャスト>
ダニー
ラヴァン
ファン
コラ
パルマー
ちびのジョー

イヴ・アレグレ
ジェイムス・ハドレイ・チェイス
ルネ・ウェレル
ルネ・ウェレル
ジャン・メッケル
ロベール・ジュイヤール
ポール・ミスラキ


アントネラ・ルアルディ
ロベール・オッセイン
ミシェル・コルドゥ
ジャクリーヌ・ボレル
ジェラール・ウーリー
ジャン・ガヴァン
 5年の間臭い飯せ喰べて来たギャングが出獄してパリに出て、その足で密告したボスを、 有無も言わせずに殺害する発端から、新しいボスの座についた彼が、はからずも殺害して逃げて行く 彼を目撃した仲間の妻をめぐって、フランス人すらあまりよく知らぬ特殊地帯の内幕がさらけ出される 異色ギャング映画である。
 原作はイギリスの探偵作家だが、フランスでひどく人気があり、 この1年ばかりの間に「殺人狂想曲」など数作が映画化されるという売れ子のジェイムズ・ハドレイ・チェイスの 「キャラハン嬢とんだ御災難」の映画化である。ただ原作の舞台となっているアメリカの一小都市を パリに移しかえ、したがって役名もー部分変っている。
 監督のイヴ・アレグレは暗黒映画の数作の他、「奇蹟は一度しか起らない」「男の世界」でも知られており、 「狂熱の孤独」によって1953年度ヴェニス国際映画祭の最優秀監督賞を獲得したフランス映画きっての鬼才。 脚色・台辞のルネ・ウェレルは「バラ色の人生」の他「悪者は地獄へ行け」「男の争い」などのギャング映画で 手腕を発揮する。撮影は「禁じられた遊び」「居酒屋」「夜の騎士道」「ハッピー・ロード」などの名作に 流麗な画調を見せたロベール・ジュイヤール、音楽のポール・ミスラキ(首輪のない犬、素直な悪女)は シャンソンを編曲した素晴らしいメロディーを聞かせてくれる。
 空いばりをする冷酷な若いギャング、ラヴァンを演じるロベール・オッセンは、 「罪と罰」のラスコルニコフ役以来ギャング映画にはなくてはならぬ存在になり、 往年のジャン・ギャバンの地位に肉薄している。ラヴァンと仲が悪いが意気地がないバーの主人パルマーを演じる ジュラール・ウーリー(男の世界)も、この種の役にはうってつけの存在。 「街の仁義」の事実上の主役を演じ新しい二枚目となったジャン・ガヴァン(他に「空と海の間に」)、 現代フランス映画の古老で久々その姿に接するアンドレ・リュゲ(「6人の最後の者、裸の女神)、 同じく古顔のジョルジュ・フラマン (裏切者)、新人アラン・ソーリー、それに「われら巴里ッ子」 「泥棒成金」「罪と罰」「街の仁義」で端役ながらいずれも印象的な演技を示したローラン・ルザッフル (谷洋子の夫君で先年来日、東宝映画にも出演)、「ヘッドライト」のビエール・モンディなど、 いずれ劣らぬ曲者揃いの男優陣に、女優陣は「愛は惜しみなく」「赤と黒」の清楚可傑な アントネラ・ルアルディ(伊)をはじめ、「男の世界」の主演女優ミシェル・コルドゥ(イヴ・アレグ夫人)、 舞台の名女優で戦前から映画に出ているジャクリーヌ・ボレル(筋金を入れろ!)、 「悪の決算」で印象的な好演技を示したエリザベート・マネ、1933年パリ生れの新人でドミニック・パージュ等。    
 <梗概>  密告されて5年の刑に服したラヴァンは、復讐の念に燃えてパリへ帰って来た。 リヨンの駅には部下であり、親友でもあるちび≠フジョーが迎えに来ていて、2人は再会を喜び合った。 たが、ラヴァンはその足で目指すマンデッタを求めて街へ出た。
 マンデッタは、田舎から出て来た娘を誘惑してはキャバレー「グラン・フリッソン」で働かせ、 巨万の富を築いた青線地帯の顔役であった。
 その夜、ラヴァンはマンデッタのアパートの前で網を張っていた。そこへ車が止り、同じアパートに 住むやくざ仲間のレオ夫妻が帰って来て、妻ダニーは偶然にラヴァンの顔を見てしまった。 やがてマンデッタも情婦ステラを連れて帰って来た。ステラはかつてラヴァンの女だったが、 マンデツタが横取りしてしまったのだ。ラヴァンはステラを巧みに利用してマンデッタの部屋へ入り込んだ。 金もやる、地位もやるというマンデッタの甘言もラヴァンの耳には入らなかった。
 9年の青春を棒に振った激しい憎しみをこめて、ラヴァンはピストルの引金を引いた。ステラの悲鳴。 この騒ぎにダニーは自分の部屋を飛び出し、立ち去って行くラヴァンの姿を見かけた。 こうして、ダニーはこの事件のステラを除く唯1人の目撃者となってしまった。
 青線の顔役マンデッタを葬ったラヴァンは「グラン・フリッソン」に乗り込み、主人パルマーを脅迫して、 これからは自分の手下になるように命じ、新しいボスの座についた。 だが、ラヴァンの出現を快よく思っていないパルマーは、たまたまダニーが目撃者であることを知り、 現場を見に行ったついでにダニーを偽って連れ出し、身内のコラが経営しているいかがわしいホテルに 監禁してしまった。パルマーはいざという時、ラヴァンをおさえつける切札にしようというのだ。 コラのホテルに働く女ファンは、ダニーに同情していろいろ世話を焼いでくれるが、 そのためファンはコラと気まずくなってしまう。
 一方、マンデックの仲間でいかがわしい映画を売物にしているスペードのところに現われたラヴァンは、 ここも自分の組織の中に入るよう要求したが、したたか者のスペードは青二才のラヴァンのいうことを聞き入れなかった。 警察もこの頃になって、若い娘が行方不明になる事件が頻発するので、青線地帯の内偵をはじめた。 このため、スペードはなおさら強気になった。
 パリの青線地帯では、新しく入った娘を店の主人が手をつける慣習があったが、コラの情夫トニオは、 ダニーが何者であるかを知ちないで、仲間のポールを番人にしてコラの眼を忍び、ダニーを犯してしまった。 ダニーは絶望して自殺を図り、大騒ぎとなった。 ・・・  (92分)

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