可愛い悪魔<En Cas de Malheur> (58年仏) |
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<スタッフ> 監督 原作 脚色 撮影 美術 音楽 <キャスト> イヴェット ゴビョ ヴィヴィアヌ |
クロード・オータン・ララ ジョルジュ・シムノン ジャン・オーランシュ ピエール・ボスト ジャック・ナットー マックス・ドゥイ ルネ・クロエレック ブリジット・パルドー ジャン・ギャバン エドウイジュ・フィレール |
古くは「モンパルナスの夜」から近くは「殺人鬼に罠をかけろ」に
いたるまで、ジョルジュ・シムノンの原作による推理映画は少くない
が、一方彼は「港のマリー」「禁断の木の実」など、中年男の小娘との
恋愛を豊かな心理描写で描いたいわば人情噺的な物語にもみごとな腕
をふるうている。
この「可愛い悪魔」も功成り名とげた名弁士と無軌 道な小娘との恋愛を描いた小説「不幸な場合」(映画の原題にもこの タイトルを用いている)を映画化したもの。この原作を「青い麦」「狂 熱の狐独」「赤と黒」「居酒屋」などを共同で手がけた文芸映画の名 コンビ、ジャン・オーランシュとピエール・ポストが映画用に脚色、 台詞を書いた。 監督ほ「肉体の悪魔」「青い麦」「赤と黒」など恋愛 描写には抜群のうまさを見せる名匠クロード・オータン・ララ、現在 フランス映画界の人気を大きく二分している男女のトップ・スター、 ブリジット・パルドー、ジャン・ギャバンの2人を主役に起用し、パ ルドーの魅力、ギャバンの風格と渋い演技を最高度に発揮きせて、味 わい深い人生のドラマをつくり上げている。 これを助ける技術陣は、撮影にジャック・ナットー、美術にマック ス・ドゥイ、音楽にルネ・クロエレックと、いずれも「赤と黒」でオ ータン・ララと組んでいたヴェテランたちである。 演技陣では、パルドー、ギャヤバンの他に、「しのび泣き」「青い麦」 の名女優エドウイジュ・フィエール、大きく成長した「靴みがき」の 少年フランコ・インテルレンギ、 |
及び「青い麦」でデビューをかざっ
たニコール・ベルジュなど豪華なメンバーがずらりと顔をならべている。 <物語> アンドレ・ゴビョ氏はそろそろ髪に白いものがふえてこようという 50がらみの恰服のよい弁護士である。彼の経歴は輝かしい勝訴の 数々に彩どられ、名弁護士としての名声は、つとになりびびいてい る、いわばパリ法曹界の大立物だった。 そうしたゴビョ氏が、こんなお粗末な事件の弁護を引きうける気 になったのは、いわゆる魔がさした" からなのだろうか。それと も依頼人であるイヴェット・モーデと名のるブロンド娘の素朴な誘 惑に心を動かされたからなのだろうか。 ともかく、そのイヴェットは金に因つて子供の遊びのような強盗 を計画し、相棒の女友達と2人でサン・ジル街の宝石商を襲ったあ げく、無罪にしてくれと泣きついてきたのである。 ゴビョ氏は当然のことながらこの虫のよい依頼をすぐにはひき うけようとしなかった。こんな事件を久しく手がけたことがない上 に、無罪にするためには、彼女が犯行直後に行ったバーのバーテン の嘘の証言によるアリバイにたよらねばならないからである。万一 それが発覚したら、彼の経歴に傷がついてしまうのだ。 イヴェットは相手がなかなか首をたてにふろうとしないのを見て とると、いきなり、白い太腿もあらわにスカートをまくり上げて見せた。 お礼の金はないが……というわけである。・・・ (122分) |