殺人鬼に罠をかけろ

<Maigret tend un piege>  (58年仏)

<スタッフ>
製作
監督
原作
脚色


台詞
撮影
美術
音楽

<キャスト>
メグレ警部
イヴォンヌ・モーラン
マルセル・モーラン
ラグリュム刑事
メグレ夫人
マルセルの母親
バルブロ
モーリセット
総監
ジョジョ
リュカ刑事
トランス刑事

クロード・オースール
ジャン・ドラノワ
ジョルジュ・シムノン ロドルフ・モーリス・アルロー
ミシェル・オーディアール
ジャン・ドラノワ
ミシェル・オーディアール
ルイ・パージュ
ルネ・ルヌー
ポール・ミスラキ


ジャン・ギャバン
アニー・ジラルド
ジャン・ドザイ
オリヴィエ・ユスノ
ジャンヌ・ボワテル
リュシエンヌ・ボガエル
ジャン・ティシェ
ポーレット・デュボー
ジャン・ドビュクール
ジェラール・セティ
アンドレ・ヴァルミー
リノ・ヴァンチュラ
 フランス推理小説界の最高峰としてわが国にも多く紹介され、広 く愛読きれているジョルジュ・シムノンの作品は、いままでに何度 も映画化きれているが、この映画は55年に書かれた新作「メグレ罠を張る」を原作にして作られたもの。
 コナン・ドイルのシャーロック・ホームズとならび称せられる名探偵メグレ警部が、不可解 な連続殺人事件と対決し、彼自身の豊かな人生経験と独特の推理と で、だんだんと犯人の異常性格をあばいて行く、シムノン得意の犯罪心理劇である。
 監督は「愛情の瞬間」「首輪のない犬」「ノートルダムのせむし男」などの名匠 ジャン・ドラノワ。彼としては最初のスリラー作品ながら、得意の心理描写をもって、 彫りの深い独特の犯罪映画をつくり上げた。
 原作の脚色に当ったのは、この監督のドラノワ、ジャーナリスト出身のR・M・アルロオ、及び 「濁流」「非情」などの脚本、台詞を担当していたミシェル・オーディアールの3人。 台詞はミシェル・オーディアールが1人で受けもっている。
 また撮影は「ヘッド・ライト」で黒白の美しい陰影を見せていた名手ルイ・パージュが、 美術は「ナポレオン」「首輪のない犬」「ノートルダムのせむし男」などのベテラン、ルネ・ルヌウが、 音楽は「狂熱の孤独」「首輪のない犬」「素直な悪女」などの名作曲家ポール・ミスラキがそれぞれ担当している。
 このシムノンのメグレものが、わが国で公開されるのは、戦前のデュヴィヴィエの名作 「モンパルナスの夜」についで二度目。「モンパルナスの夜」では名優アリ・ポールがメグレ警部に扮していたが、 この映画ではジャン・ギャバンが扮して貫録を見せている。また、「赤い灯をつけるな」でジャン・ギャバンと コンビを組んでいたコメ
ディ・フランセーズ出身のアニー・ジラルドが新人女優らしからぬ落ちついた演技を 見せている他、「夜の騎士道」のジャン・ドザイ、「愛の迷路」のオリヴィエ・ユスノオなど いずれも演劇堺の名優が出演している。

 <物語>  パリ第4区の一帯は恐怖のどん底につきおとされていた。5月初めから 4人の女が何者かの手によつて惨殺きれていたのである。兇行ほ決って、まだ人通りのある夜の9時頃、 手口は鋭利な刃物の一刺しだった。それに何よりも人々を恐れさせたのは動機がないことだった。 犯人は金品を盗むでも、暴行を働くでもなく、ただ服を引き裂き、警察の厳重な警戒をあざ笑うように、 文字通り夜の闇の中に姿を消してしまうのである。
  地区担当の刑事ラグリュムは第四の犯行に使用きれた肉切庖丁を 現場附近から発見、それを手がかりに捜査を開始し、容疑者を次々に連行した。
 一方、メグレ警部は、犯人が、自分の犯行を誇示する性格の者であることを見ぬき、 独特の推理をもって、犯人に対決する決心を定めた。
 彼ほこうした犯人の性格を利用して犯人に罠をかけようと計画をたてた。 すなわち、偽の犯人による現場検証を行い、同時におとりの婦人警官を十数名、現場附近に放つのである。 犯人はメグレの見当ちがいを嘲笑するために検証の最中に更に新しい犯行を犯そうとするに相違ないという メグレの推理だった。
 果せるかなメグレの推理は的中した。犯人は検証の最中におとりに襲いかかったのである。 しかし、十重二十重ととりまいた警官の包囲をくぐりぬけた犯人は、 婦警の手に上衣のボタンを一つ残したまま、チュレンヌ街の一角に忽然として消え失せてしまった。 ・・・
     (119分)

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