リラの門

<Porte Des Lilas> (57年仏)

<スタッフ>
製作
監督
脚色・台詞

原作
撮影
音楽
指揮

<キャスト>
ジュジュ
芸術家
ピエール・バルビエ
マリア
アルフォンス
ポーロ
ネネット
ジュジュの母

アンドレ・ダヴァン
ルネ・クレール
ルネ・クレール
ジャン・オーレル
ルネ・ファレ
ロベール・ル・フェーヴル
ジョルジュ・ブラッサンス
マルク・ランジャン


ピエール・ブラッスール
ジョルジュ・ブラッサンス
アンリ・ヴィダル
ダニー・カレル
レイモン・ビュシェール
アメデ
アネット・ポワーブル
ガブリエル・フォンタン
 巨匠ルネ・クレールが、前作「夜の騎士道」についで放った最新作。久しぶりにパリの裏街に かえったクレールがみずみずしい感覚を以て黒白映画でなければ表現できない彼独特の情緒を つくり上げている。ただ登場する人物がいずれも人間的な性格を持ち、 この作品が裏街を舞台とした一つの人生ドラマをなしていることは戦前の裏街もの″に見られなかった大きな特色といえよう。
 原作は1950年にポピュリスト賞を受けた中堅作家ルネ・ファレの「ラ・グランド・サンチュール」である。 これはパリの外郭をめぐる一帯を意味したものでパリの郊外のとある町に住む人々と そこに逃げこんだ殺人犯の物語を描いた小説である。クレールはその物語の人物をそのまま映画に生かしながら、 舞台をパリの東北部に、実在する労働者街ポルト・デ・リラ(リラの門)に移している。
 このグレール監督を助けるスタッフは撮影が「愛情の瞬間」「夜の騎士道」の名手 ロベール・ル・フェーヴル、美術が「夜ごとの美女」「夜の騎士道」など同監督作品の美術を担当して来た 老巧レオン・バルサックなどで、その他、下町の雰囲気をそこなわぬために女流衣裳家として有名な ロジーヌ・ドラマール女史を起用したのもクレールらしい神経の細かきを示すものといえよう。
 主演者はピエール・プラッスウル、アンリ・ヴィダル、ダニイ・カレルの他、 常に自作自演でシャンソン界に異彩を放っているジョルジュ・ブラッサンスが、 特にクレールに乞われて出演、スクリーンに初登場しているのが注目される。 彼はこの映画の中でも自作の歌を自らギターを手にして歌う一方、なかなかの役者ぶりを発揮している。
 助演陣は「幸福への招待」の名傍役レーモン・ビュシェール、「居酒屋」のアメデ、 「裁きは終りぬ」のアネット・ポワーヴル、「殺意の瞬間」などで顔なじみの名優、ガプリエル・フォンタンなど ヴュテランぞろいの顔ぶれである。 また街の子供たちに数人の子役が扮して捨てがたい演技を見せている。
 なおこの映画は最も権威があるとされているフランス・シネマ大賞の57年度の受賞作である。
 <物語>  パリの場末、リラの門の界隈に夜が更けた。街かどのバーでは2人の男がいつかな動こうともしない 碌でなしで通っているジュジュとその相棒の通称 "芸術家" である。 酒飲みでなまけもののジュジュはいい年をしながら働こうとはしないのだ。 腰の曲がった老婆が街の市に営むささやかな古書の露店と妹ネネットの手内職とでささえている 一家の家計にジュジュの酒代の余裕があろう筈もなく、彼は何とか避けにありつこうと 毎日のようにバーにいりびたっているいるのだった。
 そんなジュジュのただ一人の親友が芸術家だった。猫を相手にひっそりと暮している彼のただ一つの取りえ、 それは自分で弾くギターの音に合わせて歌を歌うことだった。芸は身を助けるの諺通り、 そんな彼の歌ともつかぬ歌もなにがしにはなった。 バーの常連にその芸を披露して得た貴重な酒を彼はジュジュに分けてやるのだった。 この孤独な芸人は、酒飲みの碌でなしに何がなしの愛情を抱いていたのである。 またジュジュもこの世智辛い世の中のたった一人 "利己主義″でない男、芸術家に親しみを覚えていた。
 その夜もバーの主人に追い立てられた2人は深夜の街をつれ立って芸術家の家へ向った。 ジュジュはそこでいつものようにやっと一杯の酒にありつくのだ。
 ところが、或る日のこと、こうした彼らの貧しいながら平和な生活が一変するような事が起った。 この街に一人のお尋ね者が逃げこんで来たのである。一隊の警官隊がそれを追っで来たどさくさに、 ジュジュはいつも芸術家の食べたがっていたレバーの缶詰を盗み出して日頃の好意の恩がえしをすることができたものの、 そのあとに2人の友情にとってもっと重大な事件が控えていた。 その間題のお尋ね者が所もあろうに芸術家の家にしのびこんだのである。
 こうした街では警官は歓迎されない。この街に逃げこんだ事はお尋ね者ピエール・パルビエにとって幸いだった。 その上、彼は追手の警官を2人まで射殺したいわば英雄である。芸術家とジュジュの 2人は警察に知らせるどころか、憔悴しきったパルビエを遂に床下の穴倉にかくまってやるのだった。・・・
   (98分)

 
ジョルジュ・ブラッサンスが歌う自作の主題歌
  • わが心の森には(Au Bois De Mon Coeur)
  • 巴旦杏(ハダンキョウ=スモモ)(L'amandier)

  • 酒(Le Vin)

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